表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
130/300

第130話 狩場

日の出前。

外はまだ暗い。

天井の魔灯火が灯される。

一気に明るくなる基地内。


アルジ「う…」

エミカ「おはよう」

アルジ「…おはよう」

エミカ「しばらくしたら出発のようだ」

アルジ「起きてたのか」

エミカ「ちょっと前に。

 裏に小さな川が流れてる。

 顔を洗ってくるといいよ」

アルジ「ああ。行ってくる」


アルジは体を起こして基地内を見回す。


アルジ「…あれ?」

エミカ「気づいたか?」


明らかに減っていた。

猟師たちの数が昨日の集会のときと比べて。


エミカ「逃げ出したんだろう」

アルジ「…そっか」

エミカ「逃げるのも勇気だから」

アルジ「責められないよな」


昨日の集会にきた猟師、379人。

そのうち145人が逃げ出した。

残ったのは、234人。

特に7班、8班、9班は大半が逃げた。


アルジ「ちょっと行ってくる」

エミカ「うん」


アルジは外に出る。

空は白み始めている。

勇気の剣を振ってみる。

ヒュッと音を立てる。


アルジ(体はいい具合だ。

 昨日も今日もよく休んだしな)


小さな川を見つけて顔を洗う。

澄んでいてとても冷たい水だった。


アルジ「おしっ!やるぜ!」


気合が入る。

基地に戻ろうとすると猟師たちが出てきた。

ぞろぞろと連なって出てくる。

先頭はタキマイ。

彼女の両側に側近たち。

すぐ後ろをゼナクが歩く。

1班の猟師たちだった。

アルジに目もくれず目的地へ向かう。

黙々と歩みを進める。

そんな後ろ姿をぼんやりと眺めるアルジ。


アルジ(厳しい表情だ。

 今日で絶対に仕留める…

 そんな覚悟なんだろうな。

 だが、どうしてだろう?

 この感情は…悲しみ。

 そうだ…悲しみの感情…。

 そういうものが漂っているような…)


基地から人が出てこなくなる。

2班の出発まで時間を空けていた。

基地に戻る。

エミカの隣に座る。

彼女は寝具を畳んで隅に置いていた。

アルジの分も。


アルジ「ありがとう」

エミカ「いいよ。

 食事を早く済ませた方がいい」

アルジ「そうだな」


周りの猟師たちも食事をとっている。

アルジは支給された食料の袋を開ける。

潰した芋らしきもの。

根菜の塩漬け。

甘く煮込んだ果実。

その3つが小さな箱に分けられていた。

エミカは煮込んだ果実を食べる。


エミカ「味はまあまあだ」

アルジ「寝具に食料まで…。

 タキマイ狩猟会…太っ腹だな」

エミカ「それだけ協力してほしいんだろ」


2班、3班が出ていく。

赤い腕輪の猟師たちが続々と基地をあとにする。

武器を高々と掲げ、ぶつけ合う者たち。

自らを鼓舞するため、叫び声を上げる者たち。

勇ましく旅立っていく。


アルジ「赤い腕輪…。全員タキマイ派か。

 絶対に仕留めるって感じだな」

エミカ「もともと自分たちの狩場だからな。

 昨日は狩場を解放すると言ってたけど、

 よその猟師には獲物をとられたくないだろう」


アルジもエミカも食事を終える。

満腹ではないが、特に不満はない。

これから狩りをするには適度な量の食事だった。


ギンタロウ「よう、行ってくるぜ!」


アルジとエミカにギンタロウは言った。

4班が基地の出入口に向かって歩いていく。

ギンタロウは班の先頭にいた。


ギンタロウ「オレが討伐したら

 たっぷりみやげ話を聞かせてやる」

アルジ「長い話はごめんだぜ。短くしてくれ」

ギンタロウ「一撃で仕留めたらそうなるな」

アルジ「そうなるように祈っとくぜ」

ギンタロウ「おうよ」


手を振り、出ていく。

後ろに5人の仲間たちを連れて。

4班にはほかにも班員が多数いた。

彼らの姿を見れば分かる。

武器と防具、視線の鋭さ、鍛えられた体。

強者であることが分かる。


エミカ「タキマイ派以外で最強の猟師たち。

 4班の人たちはそんな感じだな」

アルジ「ああ。なんだか今回の魔獣は

 あっさり討伐されちまう気がしてきたぜ」

エミカ「それはそれでいいことじゃないか」

アルジ「まあ、そうだな」


そして、5班。

ほとんどが奥猟会の猟師たち。

カイを先頭にその配下の者たちが続く。

カイの顔の傷は回復していた。

スミレノの治療魔術によって。


アルジ「あれだけ殴られたのに…。

 見事なもんだな」

エミカ「光術師スミレノ…。

 あの人もかなり鍛えられた魔術師だよ」

アルジ「光の援護者…だもんな」

エミカ「いちいち覚えてるのか」


そして、6班、7班と猟師たちが出ていく。

彼らはどこか頼りなく見えた。

狩猟歴の浅い者。

戦闘に自信のない者。

そのような者たちが並ぶ。

だが、彼らは確かに猟師。

狩猟帳と武器とを手に日々狩場に出る者たち。


リンスケ「行ってくる」

アルジ「気をつけてくれ」

リンスケ「…分かってる。

 オレは自分にできることを着実にやる」

アルジ「ああ。オレも後ろから追いかける」

リンスケ「ああ、ともに戦おう」


去っていくリンスケ。

その後ろ姿をアルジとエミカは見送った。


タキマイ狩猟会の猟師「はい!

 では、8班の出発です!!」


タキマイ狩猟会の猟師たちが仕切る。

彼らの働きで出発はほぼ予定どおり。

出ていく8班の猟師たち。


アルジ「コニモ狩猟団…か」

エミカ「あの人たちかな?」

アルジ「いや、あいつらじゃないか?」

エミカ「うーん…」

アルジ「見た目じゃ分からないな」

タキマイ狩猟会の猟師「はい!

 では、9班の出発です!!」


エミカが立ち上がる。

集まる9班の猟師たち。

その人数はエミカも入れて7人。

夜の間に大半が逃げてしまっていた。


エミカ「アルジ、先に行く」

アルジ「ああ。気をつけろよ」

エミカ「うん。アルジも」

アルジ「赤い場所に近づいたら会おう」

エミカ「そうしよう」


出ていく9班。

アルジはエミカを見送った。


タキマイ狩猟会の猟師「はい、10班、出発!」


集まり始める猟師たち。

アルジは彼らに目を向ける。

猟師たちはアルジを見てニタニタ笑っている。


猟師「逃げ出さなかったんだな。偉い、偉い」


昨夜、壁際にいたタキマイ狩猟会の猟師たち。

彼らは誰1人として逃げ出していなかった。


アルジ(あいつらもそれなりの実力者…。

 だから、逃げ出さずここに残ったんだろう…。

 タキマイの生死を確認するために…!)



◆ タキマイ狩猟会の狩場 ◆

10班も基地を出ていく。

空は薄い雲に覆われていた。

狩場の中心部までは遠い。

険しい山を越え、谷を下る。

荒野を進み、深い森に入る。

その深い森の奥。

そこにオオトノラコアの住処がある。

アルジは他の班員から離れて先頭を歩く。

背後から聞こえてくる声。


10班の猟師「そんなに気を張ってたら

 バテちまうぜ!あんた!!」

10班の猟師たち「はっはっはっは!!!」

アルジ「うるせえな…」


アルジは前だけを見て黙々と歩く。

右の林から音がする。

ガサリと大きな音。

視線を動かす。

しかし、獣の姿は見えない。


アルジ(わずかだが魔波を感じる)


それから、ザザザッという音が後方で聞こえた。

振り向くアルジ。

林から、大きな影が飛び出す。

地面を蹴る音、衝突する音。

辺りには叫び声。

10班の猟師たちが襲われる。

巨大な魔獣に。

槍で反撃しようとするが、倒される。

1人、また1人。


アルジ「!!?」

10班の猟師たち「ぐあああ!」

アルジ(でかい!!なんなんだ!?あれは…!)


魔獣の圧倒的な攻撃力。

倒されていく猟師たち。

殴られ、蹴られ、飛んでいく。

かみつかれ、振り回され、ちぎれていく。


アルジ(これが…もしや…!

 創造の杖の力が…生み出した魔獣なのか!?)


関所の近くで遭遇したノイオオカミ。

今回現れた魔獣はその倍ほどの大きさ。

黒く、硬く、太く、とがった体毛。

頭部には鋭い8本の角。

暗い色の眼の奥には一点の光。

捕らえた獲物を撃ち抜くような鋭い光。

獣の名前はヤサハカイヌ。

現代に生きるはずのない古代獣。

アルジは勇気の剣を手に向かっていく。

狩りが始まった。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ ヤサハカイヌ ◇

◇ レベル 21

◇ HP   2991

◇ 攻撃

 24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★

◇ 防御  15★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 技   猛烈牙撃

◇ 魔術  氷弾

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ