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アルジ往戦記  作者: roak
129/300

第129話 消灯

ギンタロウは声を上げる。


ギンタロウ「なぜだ!」

アルジ「もめるだろ」

ギンタロウ「もめる?どういう意味だ?」

アルジ「オレたちが仲間になったら

 あんたはタキマイに話をするだろ。

 オレたちを4班に引き上げるために」

ギンタロウ「ああ」

アルジ「タキマイはそれをゼナクに言うだろ」

ギンタロウ「そうかもな」

アルジ「そうなると、お前は何者だって話になる。

 ゼナクは多分オレたちに聞いてくる」

ギンタロウ「そうだろうよ」

アルジ「それは困るんだ。

 オレが名乗れば、捕まるかもしれない。

 悪い取引をした男だと疑われて」

ギンタロウ「何を心配してやがる!

 適当にごまかせばいいんだ!そんなもんは」


アルジは首を横に振る。


アルジ「オレはどんな事情があっても、

 自分を偽りたくはない」

エミカ「………」

ギンタロウ「お前…!

 この非常事態に何をこだわってやがる…!」


エミカはアルジに向かって言う。


エミカ「昨日も大前隊ともめたしな」

アルジ「そうだったな」

ギンタロウ「もめた…?何かあったのか?」

アルジ「殺人容疑で逮捕されそうになった。

 マスタスが死んだ現場にいたから」

ギンタロウ「マスタス。深淵の闇魔術師か」

アルジ「そうだ」

エミカ「………」

アルジ「あのとき、大前隊のやつらは言った。

 『止まれ、質問に答えろ』と。

 でも、拒んでオレたちはこの町に来た」

ワカオ「…おいおい、待て!拒んだだと?

 事実ならただじゃ済まんぞ!」

アルジ&エミカ「………」

ワカオ「もしも相手が一隊なら…

 即刻理由書で処分されるような案件だ!」

アルジ「あいつらは一隊だった」

ワカオ「何!?」


ギンタロウはニヤリと笑う。


ギンタロウ「一隊は選びに選び抜かれた精鋭。

 そいつらから逃げてくるなんざ…

 やっぱお前ら興味深いわ…!」

アルジ「逃げたわけじゃないぜ。

 斬るか、斬られるか。

 そんな感じになった。

 しばらくにらみ合っていた。

 そしたら、ガシマが通してくれた。

 行ってもいいと言って」

ワカオ「なんだと…!!」

ギンタロウ「ガシマ…聞いたことがあるな」

ワカオ「三頭だ!当代最強の3人のうちの1人!

 斧使いのガシマ…

 その戦闘能力は、鬼のごとしと聞く!!

 冷徹な考えで仕事には一切の妥協がない!!

 そう聞いている!

 そいつが…通っていいだと…!?

 バカな…そんなことが…あるのか…?」

ギンタロウ「ほう…」

アルジ「オレたちは大前隊に顔も知られているし

 今、適当にごまかしても、いつかバレる。

 だから、ここであんたたちとは組めない」


しばらく黙って考えるギンタロウ。


ギンタロウ「ふむ…」

アルジ「悪いけどそういうことだ」

ギンタロウ「そうかい、そうかい。

 事情は分かった。…だが、1つ解せない」

アルジ「なんだ?」

ギンタロウ「なぜオレたちに教えた?

 魔真体のことを。なんの利もないだろうが。

 仲間にならねえのなら。

 それも『偽りたくない』って気持ちからか?」

アルジ「………」


アルジは少し笑って答えた。


アルジ「壇上のあんたを見てて思った。

 『地図の赤い場所へ乗り込もう』と

 猟師たちに言ってる姿を見て思ったんだ」

ギンタロウ「何を思った?」

アルジ「あまりうまく言えないけど、

 あんたたちはこの先もオレたちと

 同じ方向を見て、戦い続けてくれる…

 そんなふうに思った。

 戦う場所が違っても、戦う相手が違っても。

 そう思ったんだ」

ギンタロウ「………」

アルジ「だから、伝えたいと思った。

 魔真体のことを伝えなきゃと思ったんだ。

 理由はただそれだけだ」


ギンタロウも笑って言う。


ギンタロウ「オレたちの仲間になれよ」

アルジ「………」

ギンタロウ「今、ここじゃなくていい。

 またどこかで会ったときは…ともに戦おう」

アルジ「いいぜ!!」

ギンタロウ「…よし!」

アルジ「そのときはよろしく頼むぜ。

 南国首位猟師」

ギンタロウ「おう!だが、そんときは…

 南国首位猟師じゃなく…

 大陸首位猟師になってるかもしれねえがな!」

アルジ「だといいな」

ギンタロウ「楽しみにしとけ!」


エミカはスッと指差す。

その先には、イサグモ。


エミカ「精神操作すればいい」

イサグモ「…!!!」

エミカ「私たちが仲間にならないなら、

 精神操作して操ればいい。

 今そう思っただろ」

ギンタロウ「………」


エミカは不敵な笑みを浮かべて言う。


エミカ「魔波は雄弁に語る。

 言葉より、態度より。

 ほとんど無意識に近いものだったと思う。

 一瞬で…微かな魔波。

 でも、私にはちゃんと伝わった」

イサグモ(こいつ…!!

 オレの魔波の揺らぎを見抜いたのか…?)

スミレノ(全然分からなかったけど…)


エミカは強く言う。


エミカ「へたな真似をしてみろ。

 私がただじゃおかない。

 変な魔波を向けたらすぐに炎で焼いてやる」

イサグモ「…く…」

スミレノ(なんて恐ろしい人…。

 イサグモは…魔術院の上級術師と

 比べても負けない実力なのに…)

ギンタロウ「はっはっは!」


ギンタロウはイサグモの肩に手を置く。


ギンタロウ「まだまだ修行不足みてえだな!」

イサグモ「どうやら…そのようだ…はは…」


ギンタロウはアルジとエミカに言う。


ギンタロウ「安心しろ!下衆な真似はしねえ!

 明日に備えてしっかり休みな!

 それと、アルジ」

アルジ「なんだ?」

ギンタロウ「早く秘宝を取り返せるといいな」

アルジ「ああ。今はロニもラグアも…

 どこにいるのかまったく分からない。

 でも、こうやって魔獣を倒していけば…」

ギンタロウ「そうだな。

 手がかりは必ず見つかるさ」

アルジ「ああ」

ギンタロウ「…1つ忠告しておくぜ」

アルジ「なんだ?」


声をひそめるギンタロウ。


ギンタロウ「さっき班の話し合いのとき、

 チラッと聞こえてきた。

 8班の連中には気をつけろ」

アルジ「8班…」

ギンタロウ「コニモ狩猟団から3人来てる。

 やつらは汚い手を使うことで有名だ」

アルジ「汚い手…」

ギンタロウ「猟師たちはいろいろ派閥があったり、

 あいつとこいつは仲が悪いだとか

 面倒なことが山ほどある。

 だが、そんな中でも

 最低限こういうことはやめようぜって、

 みんなで取り決めてることがある」

アルジ「取り決めてる…」

ギンタロウ「そうだ。

 すべての猟師が守らなければならない

 最低限の約束事だ。

 だが、やつらはそれを平気で破ってくる。

 あいつら…破産しかけてるって

 噂が流れてから特にひでえ。

 獲物を奪うためなら手段を選ばねえ。

 今回の懸賞金もどんな手を使っても

 取りにいこうとしてるんだろう」

アルジ「そうなのか…」

ギンタロウ「ナカモク煙霧は知ってるか?」

アルジ「…?知らない」

ギンタロウ「神経に作用する猛毒の霧だ」

アルジ「知らない…」

エミカ「どんな霧なんだ?吸うとどうなる?」

ギンタロウ「普通の白い霧みたいでよ、

 一見すると毒だなんて分からねえ。

 だが、吸い続けると体の末端から痺れてくる。

 ヤバイと思ったときには意識を失っちまう」

アルジ「そんなものがあるのか」

ギンタロウ「明日の狩りでコニモ狩猟団は

 そいつを使ってくるかもしれねえ。

 そんな話をしてるのがチラッと耳に入った。

 あまりに危険だから禁止されてるんだが、

 あいつらならやりかねねえな…」

アルジ「そうか。気をつける。

 忠告ありがとう」

ギンタロウ「いや、どうってことねえ。

 おかしいと思ったら、それ以上進むな。

 霧が晴れるまで待つことだ!」

アルジ「分かった」

ギンタロウ「それじゃあまたな」

アルジ「またな」

エミカ「…また」

ギンタロウ「オレたちは離れていても仲間だ。

 秘宝の追求者アルジ、火遊び魔術師エミカ。

 お前たちにはこの称号をくれてやろう」

アルジ(秘宝の…追求者…)

エミカ(火遊び術師!?)


ギンタロウたちは受付へ向かっていく。

寝具と食料を受け取るために。

受付台の向こうには小さく区切られた部屋。

中の様子は一切見えない。

そこにタキマイがいた。

ゼナクとタキマイの側近もそこにいる。

密室で入念に話し合いをしていた。

明日の狩りに向けて。


アルジ「オレたちも行こう」

エミカ「ああ、そうしよう」

アルジ「明日も頑張ろうぜ。火遊び術師」

エミカ「やめろ!その呼び方」

アルジ「はは…」


歩き出すアルジとエミカ。


エミカ「アルジ」

アルジ「どうした?」

エミカ「さっきの言葉はよかった」

アルジ「言葉って?」

エミカ「どんな事情があっても自分を偽らない。

 私もそうありたいと思う」

アルジ「そっか」

エミカ「だけど…」

アルジ「どうした?」

エミカ「肩に虫が…って言い訳は最悪だった」

アルジ「あれは…しょうがないだろ…!」

エミカ「ふふ…」


アルジとエミカは受付で寝具と食料をもらう。

基地の片隅に寝具を広げ、寝支度を済ませる。

ほかの猟師たちも続々と眠る準備をする。

そして、消灯。

天井に設置された魔灯火の明かり。

一斉に消える。

基地内は、暗闇に包まれた。

アルジは目を閉じる。

そのとき。

隣の寝具の中から小さな声。

エミカの声だった。


エミカ「明日は獲物に近づくこともできないかも」

アルジ「オレたち9班と10班だもんな。

 おまけに8班には危ないやつがいるらしいし」

エミカ「ああ。

 でも、こうやって狩りに参加し続ければ…」

アルジ「そうだな。

 そのうち力が認められるかもしれない」

エミカ「そうだ」

アルジ「まずは…明日だな」

エミカ「うん。おやすみ」

アルジ「おやすみ」


そして、狩りの日を迎える。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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