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アルジ往戦記  作者: roak
127/300

第127話 壁際

いくつもの声が基地内に響く。

猟師たちは班ごとに集まっていく。


猟師の声「7班の人!7班の人、いますかー?」


リンスケは声のする方を向く。

見れば、3人、4人と集まっていた。


リンスケ「じゃあな。アルジ、エミカ。

 お互いの健闘を祈ろう!」

アルジ「リンスケ」

リンスケ「なんだ?」

アルジ「オレはやってない」

リンスケ「………」

アルジ「取引なんてしてないんだ」

リンスケ「…ああ」

アルジ「あれはわけがあって…」

リンスケ「…分かってる。

 君が無実なのは分かる」

アルジ「………」

リンスケ「おかしなことをおかしいと思える。

 おかしいと思ったことについて、

 おかしいと言える。

 それができる人間が、

 そんな取引をするとは思えない。

 だから…君がやっていないことは…分かる」

アルジ「リンスケ」

リンスケ「…安心しろ。

 君がアルジだということは誰にも言わない。

 じゃあな。明日、また狩場で会おう!!」

アルジ「ああ。

 今日はいろいろ教えてくれてありがとう。

 猟師のことがなんとなくだが分かった」

リンスケ「なんてことない。それじゃな!」


背を向けて去っていくリンスケ。

◇ リンスケは仲間から外れた。


エミカ「よかったな」

アルジ「ああ、いいやつだな」


声が聞こえてくる。


猟師の声「9班の人はいないかー」


エミカは声のする方を向く。

9班も人が集まり始めていた。


エミカ「行ってくるよ」

アルジ「ああ」

エミカ「オオトノラコア…

 かなり手強いようだけど

 私たちならきっとやれるよ。頑張ろう」

アルジ「おう。そうだな」


エミカも班の集まりに向かう。

アルジは基地内を見回す。

各班、集まって話し合いを始めている。

班員が自己紹介をしているところもある。

4班は早くも作戦を立て始めていた。

ギンタロウたちが中心になって。


アルジ(…10班は?)


一向に呼ぶ声は上がらない。


アルジ「10班!!10班!!誰かいるか!!!」


自分から声を上げる。

しかし、近づいてくる者はいない。


アルジ(まさかオレ1人じゃないだろうな…)


ふと後ろを見ると、壁際に猟師たちの姿。

彼らは力なく壁に寄りかかって立っていた。

床に座り込んでいる者もいる。

アルジはそんな彼らの方へ歩いていく。


アルジ「…10班か?」


アルジは腕輪を見る。

全員が青の腕輪。

刻まれた数字は、10。

壁際の16人。

全員が10班の班員だった。


アルジ(この猟師たちが10班か…)


弓矢、槍、剣。

どの猟師も装備は整えられている。


アルジ(狩りをする準備はしてるようだが…

 なんだ?このやる気のない感じは…)


座っていた1人がアルジに声をかける。


猟師A「なんだ、ニイちゃん」

アルジ「………」

猟師A「ニイちゃん、今日から参加だろ?」

アルジ「そうだ」

猟師A「なぁんか気合い入ってんなぁ…」


笑う壁際の猟師たち。


アルジ「…何がおかしい?」

猟師A「どうせ持ってかれるんだよ。

 タキマイさんに」

アルジ「そんなの分からないだろ」

猟師A「ニイちゃん、倒せると思うのか?

 魔獣の親玉を…」

アルジ「ああ」


再び笑いが起こる。


アルジ(…なんだ?こいつら…!)


大きな声でアルジは問いかけた。


アルジ「お前ら一体何しにきたんだ?

 狩りをする気はないのか?

 自分の装備を自慢しにきただけなのか?」


その言葉に数人の猟師が顔をしかめた。

座り込んでいた猟師は薄笑いして言った。


猟師A「この装備は自衛のためだ。

 オレたちは…見にきたのさ」

アルジ「見にきた?」

猟師A「3代目タキマイが勝てるかどうか…

 楽しみにしてきたのさ」

アルジ「どういうことだ?お前たちは一体…」


立っていた猟師たちがアルジに言う。


猟師B「あんた、10班送りとはひでえもんだ」

猟師C「どんなに実力がなかろうが、

 受付で真面目に受け答えすりゃ

 9班に配属されるもんだ」

猟師D「よほど悪態をついたと見えるよ!」


そして、座り込んでいた猟師が言う。


猟師A「受付がトラシマだったんじゃねえのか。

 あいつやたら気が短いしよ…」

猟師B「ああ、あいつならやるかもなぁ」

アルジ「お前たちは…」

猟師A「…気づいたか?

 オレたちは…タキマイ狩猟会の猟師だ」

アルジ「なんで10班にいるんだ?」

猟師A「志願した」

猟師C「オレたちは、いち早く知りてえだけ

 タキマイがやられるかどうかをな」

猟師A「危険なのはごめんだからなぁ」

猟師B「だから10班だ」

アルジ「タキマイはお前たちの代表だろ。

 あいつを…応援しないのか?」

猟師A「バカ言うんじゃねえよ!!

 誰が応援するんだよ!!あんなの!!」

猟師B「おい!!声がでけえぞ」

猟師A「はっはっは

 聞いてたって別に構いやしねえや!!」

アルジ(…どういうことだ?)


座っていた猟師は立ち上がる。

アルジの方に近づく。

そして、薄気味悪くささやいた。


猟師A「派閥があるんだよぉ。

 タキマイ狩猟会の中にも」

アルジ「…何?」

猟師A「動きがあるんだよ。

 4代目を誰にするか」

アルジ「…なんだと?」

猟師A「3代目は…もうおしまいだぁ。

 今回の1件でお役御免さぁ」

アルジ「やめるのか…?3代目は」

猟師A「責任取らされるだろうなぁ。

 こんなことになっちゃったんだから…」

アルジ「………」

猟師A「でも、その前に…

 魔獣の親玉にやられるかもなぁ。

 オレは殺されちまう方に賭けてるんだぁ。

 後ろの4人もそうだぜ…へへへ…!

 あんたもやるか?賭けを。

 タキマイが死ぬかどうか。

 なぁ、どっちに賭ける?」

アルジ「…やらねえ!!」

猟師A「へっ、正義ぶるんじゃねえよ!!」

アルジ「……!」


その猟師は壁の方を向く。

ほかの猟師たちに声を張る。


猟師A「終わりだ、終わり!!

 10班の作戦会議はこれで終わり!!」


猟師たちは基地の外へ出ていった。


アルジ「なんなんだ…。あいつら…」


壁際に1人。

立ったままの猟師がいる。

女の猟師。

じっとアルジの方を見ている。

彼女も10と書かれた青い腕輪をつけていた。


女「あなた…本当に倒すつもり?」

アルジ「ああ。あんたも…」

女「いいえ。倒そうだなんて思ってない」

アルジ「思ってないって…。

 さっき出ていった連中とは違うんだよな?」

女「もちろん。一緒にしないで。私はコイナミ。

 大陸猟進会たいりくりょうしんかいの猟師。タキマイ派ではない」

アルジ「そうか。別な会の猟師なのか。

 でも、なんで10班に…」

コイナミ「大陸猟進会の会員だから」

アルジ「会員だからってどういうことだ?」

コイナミ「仲が悪いんだ。

 タキマイ派と。私たちの会。

 もうすぐ最大派閥になろうとしてるから。

 うちの会。だから余計にね」

アルジ「そうなのか」

コイナミ「そうだよ。いつなるか。

 それはもう時間の問題。

 今、とんでもないことが起きてる。

 今回の狩りが成功しようが失敗しようが

 タキマイ派はもうダメになるでしょ」

アルジ「…そうなのか?」

コイナミ「だから目の敵にされてるんだよね。

 今回も…憎い商売敵は後ろにやっとけ。

 そんな感じでしょ。ま、いいんだけど!」

アルジ「明日は頑張ろう」

コイナミ「行かないから」

アルジ「行かない?」

コイナミ「もうこれで帰るつもり」

アルジ「戦わないのか?」

コイナミ「うん。偵察だけ。

 本部に報告しなくちゃ。

 さっき聞いたことを全部ね。

 大した情報はなかったけど…」

アルジ「………」

コイナミ「新鮮な情報は大事。

 情報収集の遅れは実績に大きく響く。

 特にこんなご時世でしょ。魔獣大量発生。

 こんな機会はまたとない」


コイナミは笑う。


アルジ「………」

コイナミ「これから大きく変わる。

 狩猟界の勢力図が。今回の件で

 大陸猟進会は一気に抜き去ることでしょう。

 金に物言わせて頂点気取ってる

 タキマイ一派をね…」

アルジ「………」

コイナミ「なんか…信じてない顔だね」

アルジ「勢力争いとか…何が起きてるのか

 オレにはよく分からない」

コイナミ「1つ教えてあげよう」

アルジ「なんだ?」

コイナミ「私たち大陸猟進会は…

 今日の夕刻、古代獣の1体を討伐した」

アルジ「!!?」

コイナミ「さっきゼナクって人が言ってた

 覇獣級の古代獣。そのうち1体を倒した。

 もたついてたタキマイ派から

 ぶんどってやったらしい。いい気味だ」


コイナミは基地の出口に向かう。

振り向いて言う。


コイナミ「それじゃあ、頑張って。

 ナキ村のアルジ」

アルジ「…!!」

コイナミ「その顔、当たりみたいね」

アルジ「なんで…!」

コイナミ「さっきゼナクって人に

 名前を言われたら、

 でっかい声出して驚いてたじゃない」

アルジ「………」

コイナミ「それに私の狩りの先生が言っていた」

アルジ「先生」

コイナミ「故郷の宝剣を手に、

 旅をしてる男がいると…」

アルジ「!」

コイナミ「その剣を見て、もしかしたら…

 と思ったんだけど、やっぱりそうだった」

アルジ「!!」

コイナミ「大事な剣なんでしょ?

 奪われないように気をつけてね」

アルジ「………」


そして、コイナミは基地から出ていった。


アルジ「大陸猟進会か。また新たな強者が…」


後ろからエミカに声をかけられる。


エミカ「誰だ?あの人は」

アルジ「!…いたのか」

エミカ「いた。悪いか?」

アルジ「別に悪くはない…。

 あの人は大陸猟進会の猟師らしい」

エミカ「大陸猟進会。また別の団体か」

アルジ「そうみたいだ。

 ガヒノの森で会った人たちの仲間…みたいだ」

エミカ「ああ…あの人たちか」

アルジ「9班の話し合いは終わったのか?」

エミカ「ああ。さっき終わった。

 大した話はなかったな。

 作戦とか役割分担もない。

 大変だねって言い合って、それで終わった」

アルジ「…そうか」

エミカ「魔獣を倒そうっていうよりは、

 見物しに来たような人がほとんどだった」

アルジ「10班もそんな感じだ」


アルジの不服そうな顔を見るエミカ。


エミカ「何かあったのか?」

アルジ「あいつら…

 タキマイがやられるか賭けてやがった」

エミカ「本当か。

 ろくでもないことをするな…」


そのとき、エミカが気づく。

強い魔力の持ち主が近づいていることに。

2人の前に現れたのはギンタロウたち。


ギンタロウ「よう!」

アルジ&エミカ「………」


アルジを指差すギンタロウ。


ギンタロウ「ナキ村の…アルジ…!」


そして、彼はニヤリと笑う。


アルジ「………」

ギンタロウ「…この狩りに参加するのは、

 せめてもの罪滅ぼしってところか?」


各班、話し合いを終えて散っていく。

そんな中、アルジとエミカは対峙する。

ギンタロウとその仲間たちと。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ ギンタロウ(南国首位猟師) ◇

◇ レベル 26

◇ HP   1600

◇ 攻撃  

 20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 

  20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 11★★★★★★★★★★★

◇ 装備

 草緑槍、青天弓、狩猟王の短剣、南国式手斧、

  硬毛武術衣

◇ 技

  猛襲連撃、潜行探知、竜頭槍撃、蛇尾斧撃

◇ 魔術  岩弾、岩砲


◇ ワカオ(剛腕剣士) ◇

◇ レベル 23

◇ HP   1338

◇ 攻撃

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  4★★★★

◇ 装備  長刃猟剣、獣甲戦闘着

◇ 技   巨獣両断撃、甲殻破壊剣、狼牙連撃剣、返身天心斬

◇ 魔術  火弾


◇ ムエナ(罠の達人) ◇

◇ レベル 25

◇ HP   625

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  精巧弓、裏装小刃、暗空猟衣

◇ 技   隠し刃のにわか雨

◇ 魔術  氷弾


◇ スミレノ(光の援護者) ◇

◇ レベル 23

◇ HP   544

◇ 攻撃  3★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 

 17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  

 23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 装備  古世木の杖、心躍魔術衣

◇ 魔術  氷弾、氷刃、氷壁

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ イサグモ(闇の策士) ◇

◇ レベル 28

◇ HP   883

◇ 攻撃  7★★★★★★★

◇ 防御  14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  黒水晶の杖、影想魔術衣

◇ 魔術  暗球、精神操作、五感鈍化、猛威減衰術


◇ スギヤ(歩く獣図鑑) ◇

◇ レベル 21

◇ HP   390

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  11★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  怪牙の小剣、硬鱗狩猟衣

◇ 魔術  岩弾、岩砲

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