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アルジ往戦記  作者: roak
122/300

第122話 勇者

アルジたちは見る。

壇上に上がったタキマイを。

タキマイも見る。

基地に集まった大勢の猟師たちを。

壇上から、たった1人で。

頑丈な革の服。

短く切られ、整えられた髪。

まっすぐ伸びた背筋。

涼しげな顔の表情。

強い自信が表れている。

猟師たちの最大派閥。

その頂点としての自信が。


アルジ(あの人がタキマイか。

 何か…雰囲気が違う…。

 大前隊とか警備隊とか

 今まで出会った戦士たちとは…。

 明らかに違う雰囲気だ。

 この感じはなんだ?…冷たい。

 冷たさを感じる。賢さも感じる…。

 冷静に深く細かく考えて、

 何かしようとしているような…。

 そんな雰囲気。

 よく分からないが…冷たくて、賢い。

 とにかくそんな印象だ)


猟師たちの注目を浴びるタキマイ。

ざわめいていた基地内が静かになる。

猟師たちを見渡して彼女はうなずく。

その顔に笑みはない。


タキマイ「皆の者、よくぞ集まってくれた。

 3代目タキマイである」


太く、勇ましい声で話す。


タキマイ「非常事態である。

 類を見ない凶悪魔獣の発生である。

 我らタキマイ狩猟会としては、

 狩猟経験を問わず、ともに戦ってくれる者を

 幅広く募ったところである」


不機嫌な顔のギンタロウ。


ギンタロウ(…今日は一段と集まったもんだ)


タキマイは力強く話し続ける。

基地に集まった者たちを元気づけるように。


タキマイ「諸君は勇者である。

 1人1人が清く尊い意志を持った勇者である。

 ともに戦えることを誇りに思う。

 今日の登録者は379名に及んだ。

 昨日のおよそ倍の人数である。

 本当に感謝する」


周りの猟師たちを見るアルジ。


アルジ(そんなにいるのか…)


さらにタキマイは続ける。


タキマイ「この中には…

 狩りの経験が少ない者もいるだろう。

 戦うことにあまり自信のない者もいるだろう。

 だが、安心してもらいたい。

 我がタキマイ狩猟会の一流猟師たちが

 先陣を切って魔獣と戦う。

 力のない者は無理して前へ出なくてよい。

 援護射撃、後方支援、物資運搬、

 それぞれが果たせる役割がある。

 役割分担は各班で話し合い、決めてほしい。

 班の壁を越えて話し合ってくれてもよい。

 言っておくが、これは強制ではない。

 やってもよいし、やらなくてもよい。

 ただ、当狩猟会としては役割分担を推奨する。

 重大な脅威、強大な獲物を前にしたとき、

 大切なのは、連携と協力だと考えるからだ。

 個人の蛮勇、蛮行などもってのほかである」


そこで一旦タキマイは口を閉じ、間を置いた。


タキマイ「これから私から2つお伝えする。

 1つは、今回討伐する魔獣についてだ。

 我が狩猟会は、総力を上げて魔獣の正体、

 その攻略法について分析してきたところだ」


ギンタロウは腕を組み、顔をしかめる。


ギンタロウ(分析…。よく言ったもんだ。

 恐れて近づこうとしなかっただけじゃねえかよ)


彼は目を細め、タキマイをじっと見続ける。


タキマイ「諸君に渡した地図の中心部、

 そこに魔獣の親玉とでもいうべき獲物がいる。

 その獲物は、活動範囲を広げてきている。

 そして、その力はますます強くなっている。

 特に…昨日のこと。そいつは急激に成長した。

 その力は一層強くなり、格段に大きくなった。

 昨日、何かがあった。間違いなく何かがあった。

 だが、分からない。それがなんなのか。

 分からない。分からないが、

 何かが起きて、魔獣が覚醒した。

 そのことは間違いない。

 そう考えざるを得ない」


タキマイの表情に変化はない。

だが、その声はわずかに震えていた。


アルジ&エミカ「………」


魔獣の親玉について、彼女はさらに話す。


タキマイ「今日は、そんな魔獣の親玉を

 私の知人である獣判別士に見てもらった」

アルジ(獣判別士なんて人がいるのか…)

タキマイ「信頼のおける優秀な判別士である。

 その目には寸分の狂いもない。

 いかに珍しい獣であろうと、

 その正体を見誤ることはない。

 そんな彼女の目で魔獣の正体が判明した。

 だから、今、ここで、諸君にお伝えする。

 忌まわしきその魔獣の名前を!」


基地の中を緊張が走る。


タキマイ「魔獣の名は『オオトノラコア』である」

猟師たち「!!!!!」


ざわめき立つ基地内。

ある者は嘆き、ある者は叫んだ。

頭を抱える者の姿もあった。


アルジ(なんだ…?そんなにやばいのか?)


基地内のざわめきは収まらない。

だが、タキマイは構わず話した。


タキマイ「狩猟の難易度は最上級。

 獣の等級としては、『覇獣級』に相当する」


アルジはリンスケに声をかけようとする。

だが、やめた。

とても声をかけられる様子ではなかったから。

彼の顔は真っ青。

額にはぽつぽつと汗が浮かんでいた。


リンスケ「…ウソだ…ウソだ…」


ウソだ。

その言葉を繰り返す。

まるで悪夢にうなされているかのよう。

南国首位猟師たちも顔色が悪い。


ギンタロウ「本気か?おいおい…」

スミレノ「ねぇ、スギヤ。どれだけ危ないの?」

スギヤ「冗談じゃない…。こいつは…。

 オオトノラコア…!オオトノラコアだと!?

 古い絵巻物で…1度しか見たことがない…!

 おじいちゃんの蔵の…奥の…一番奥の…!

 古い、汚い、臭い、絵巻物で…1度だけ…!

 1度だけ!たった1度だけ見ただけだ!!

 大昔、町や村をいくつも壊滅させたという…。

 そりゃ覇獣級だ!紛れもない覇獣級だ!

 ああ…どうしよう!どうしたらいいんだ!!」

スミレノ(こんなスギヤ…初めて見た…。

 歩く獣図鑑をこんなふうにしてしまうなんて…

 よっぽど危険ってわけだ…)


リンスケは勢いよく語る。

アルジとエミカに。

事態の深刻さを少しでも分かってほしい思いで。


リンスケ「獣の等級は全部で5段階」

アルジ&エミカ「………」

リンスケ「危獣級、剛獣級、恐獣級、超獣級、そして…

 覇獣級。この5段階。

 そして、覇獣級はその最高位。

 危険度は最大。

 一流の猟師でも簡単に手が出せない。

 そんなのがこの近くにいるなんて…。

 本当に…信じられないことだ」

アルジ&エミカ「………」


魔獣の名前が告げられてから数分間。

タキマイは一言も発さない。

ただ壇上で猟師たちが動揺する様子を見届けていた。

微動だにせず。

顔色一つ変えず。

静まり切らない基地の中。

彼女は再び話し始める。

集まった猟師に伝えたい、2つ目のことについて。


タキマイ「もう1つは、懸賞金のことだ」


彼女は再び集める。

猟師たちの注目を。

基地内は静けさを取り戻していく。


タキマイ「諸君の中にも…

 すでに多くの者が知っていることだろう。

 政府は魔獣の親玉…オオトノラコアの首に

 多額の懸賞金をかけた。

 都の一等地に大きな屋敷を建てられる。

 そんな額の懸賞金だ」

アルジ&エミカ「!!」

タキマイ「懸賞金のことは…私から伝えるよりも

 政府関係者の口から直接聞いてもらおうと思う。

 今日は私の懇意にしている者に来ていただいた。

 さあ、説明いただこう!!来てくれ!!」


演壇の横、基地の隅。

そこを覆っていた分厚い黒幕。

それが勢いよく下ろされる。

下ろしたのは、1人の男。

幕の向こう側に彼は立っていた。

隠れて出番をじっと待っていた。

来てくれ。

タキマイのその言葉が合図。

彼は幕をつかみ、下ろした。

どさりと床に落ちる幕。

それを踏みつけて歩き出す。

屈強な体格。

鋭い眼光。

背中には槍。

腰には剣。

見るからに戦士。

彼は走り出す。

そして、勢いよく登壇する。

演壇の中心に立った。

タキマイは後ろへ下がる。

男は叫んだ。

猟師たちに向かって。


現れた男「オレは大前隊だ!!」

猟師たち「!!!」


自身の胸を手で叩き、男はさらに叫ぶ。


現れた男「オレは大前隊だっ!!!」

アルジ&エミカ「…!?」


基地内は再びざわめき出す。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ リンスケ ◇

◇ レベル 14

◇ HP   441/441

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ 9★★★★★★★★★★

◇ 魔力 

◇ 装備  木の長槍、軽量弓、革の猟師服

◇ 技   草木払い、離れ撃ち


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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