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アルジ往戦記  作者: roak
113/300

第113話 仲間

◆ テノハ ◆

昼を過ぎた頃。

アルジとエミカは茶屋を訪れる。

老年の店主が迎える。


店主「いらっしゃ…って、あんたらは…!」

アルジ「金を払わず出てしまった。

 …すまなかった」

店主「いや…」


店主は金額をアルジに告げる。

アルジは金を出す。

受け取る店主。

ほかに客はいなかった。

店の中は静かだった。


店主「あんたら、随分疲れてるようだ」

アルジ「…分かるか」

店主「少し休んでいきなさい。

 1杯、飲んでいくといい。

 温かいお茶を出そう」

アルジ「…頼む」

エミカ「………」


店の奥の席にアルジたちは座った。


店主「それにしても…朝来たときと同じ人か?」

アルジ「は…?」

店主「あんたら…感じが変わった気がする。

 顔を見れば、朝の客だと分かるんだが…」

アルジ「そうか…?」

店主「ああ」

アルジ「…そうか」

店主「ほかのお連れさんは?

 あと2人…女の方が…」

アルジ「…別れた」

店主「…そうか。旅の別れ…か」

アルジ「…そんなところだ」

店主「寂しかろう」

アルジ&エミカ「………」


2人の目に涙が浮かぶ。


店主「いや、失礼した。聞いてしまって。

 町の外から来る人はあまりいないものだから。

 来るのは常連ばかりで。つい気になってな…」

アルジ&エミカ「………」

店主「…さあ…どうぞ」

アルジ「…ありがとう」


熱い茶が出される。

アルジとエミカは湯飲みに口をつけた。

それから、店主の話を聞いた。

彼の話はほとんどが昔話。

かつてテノハの町はどうだったのか。

いつこの店を開いたのか。

妻と出会い、死別したこと。

離れて暮らす娘たちのこと。

店主は語った。

アルジたちは茶を飲みながら黙って聞いた。

新たな客はない。

時間は穏やかに流れていた。


店主「ところで、あんたら…

 昨日はカキタナ屋に泊まったのかい?」

アルジ「カキタナ屋…」

店主「ここからずっと歩いて行ったところの…

 ちょっとおんぼろの古い宿だ」

アルジ「町の外れにある…」

店主「そうだ」

アルジ「ああ…泊まったぜ。

 オレたちは昨日、そこに泊まった」

店主「そうか!」

アルジ「どうしたんだ?そこの宿が」

店主「なんでも…忘れ物があったらしい」

アルジ「忘れ物?」

店主「部屋の隅に…立派な衣装があったそうだ。

 魔術師さんが着るような…」

アルジ「魔術師が着るような…」

店主「泊まっていったお客が今どこにいるのか。

 若旦那があちこち聞いて探してるようだ。

 忘れ物を届けたいんだろう。

 その若旦那…うちの店にも来たもんでな。

 もしかしたら…と思ったのさ」


アルジはエミカを見る。

エミカは小さく首を傾げた。


アルジ「…行ってみるか?」

エミカ「…うん。ごちそうさまでした」

アルジ「…いくらだ?」

店主「いいんだ。お代はいいから」

アルジ「…いいのか?」

店主「昔話を聞いてくれたお礼だ」

エミカ「…ありがとう」


店を出る。

町を歩く。

宿屋が見えてきた。

入っていくアルジとエミカ。


若旦那「いらっしゃい。あ…!!」

アルジ「忘れ物があったって聞いたんだけど…」

若旦那「ちょっと待っててくれ!」


若旦那は慌てた様子で奥へ消えていった。

しばらくして戻ってくる。

手には、1着の魔術衣。


若旦那「あなた方が泊まった部屋に…これが」

エミカ「え…?」


その服はアルジもエミカも見たことがない。


エミカ(綺麗だ…すごく綺麗に作られてる…。

 少し見ただけで分かる…。

 これは…魔術師のために作られた服…!)

若旦那「さあ…お返しします」

エミカ「え!?」


手渡される。

受け取り、戸惑うエミカ。


エミカ(すごい…!これ…すごい!!

 触れてるだけで魔力が高まるのを感じる…!)

アルジ「着てみたらどうだ?」

エミカ「…ああ」

若旦那「お部屋を貸しましょう」


数分後、エミカは着替えて戻ってくる。

新しい魔術衣を着て。


エミカ「どうだ?」

アルジ「綺麗だ」


言ってからアルジは照れてうつむいた。

エミカも顔を赤らめる。


若旦那「お見事…。これは見事なお召し物だ」


興奮する若旦那。


エミカ「だけど…これ…」

アルジ「リネじゃないのか…?」

エミカ「…!」

アルジ「リネがこっそり遺していった…。

 そういうことじゃないか?」

エミカ「リネ…さん…」


エミカは泣いた。

ポロポロと涙を流す。

その涙の1粒1粒が魔術衣を点々と濡らした。


若旦那「何かあったようですね」

アルジ「死んだんだ」

若旦那「…はい?」

アルジ「仲間がさっき…死んだ」

若旦那「それは…どういう…!」

アルジ「言葉のとおりだ。4人で旅してた。

 でもそのうちの2人が死んだ。

 敵と戦って、死んだ…」

若旦那「すまない…!余計なことを…」

アルジ「いいんだ。

 オレたちは…受け入れることにした。

 仲間は死んだ。もう戻ってこない。

 それは悲しいことだけど…まだやることがある。

 オレたちにはやることがあるんだ。

 戦うべき敵がいる。取り返すべき宝がある。

 だから…進む。進んでいこうと思う。

 悲しむのは…ほどほどにして…」

エミカ「…アルジ…」

アルジ「エミカ。そうだよな。それでいいよな?」

エミカ「ああ。進もう。私たちは進んでいこう」

アルジ「おう」


エミカの顔に少し元気が戻る。

若旦那に礼を言って、宿を出る。

そして、そのまま歩いて町を出た。


エミカ「これから…どうする?」

アルジ「遠くまで行かないか?」

エミカ「遠く…どこへ…?」

アルジ「手がかりはない。

 ラグアも…ロニも…

 どこにいるのか分からない」

エミカ「ああ」

アルジ「それはつまり…

 どこへ行ったっていいってことだ。

 オレは…そう思う」

エミカ「………」

アルジ「遠くへ、とにかく遠くへ行ってみよう。

 ここから離れて遠い場所へ。ナキ村じゃない。

 ワノエでもない。北土の魔術研究所でもない。

 どこでもない、遠い場所へ。

 それが…今は一番いい気がする」

エミカ「面白い…」

アルジ「だろ」

エミカ「なら、走ろうか」

アルジ「いいぜ」

エミカ「ヘトヘトになるまで!」

アルジ「それ…いいな!」

エミカ「疲れたら…そこで休む。

 …というのは?」

アルジ「ああ。そうしようぜ」


エミカはほほえむ。

そして、袋からラアムを出した。

取り出すとき、落ちる。

1枚の小さく折られた紙が。


エミカ「…?」

アルジ「なんだ…?」


エミカは拾い上げて、広げる。

彼女の目に飛び込んできたのはリネの字。

リネの字で、たった1行。

したためられていた。


リネの手紙「宿屋にとっておきの魔術衣、

 『濃色魔術衣』を置いてきた」


エミカは涙を流しながら小さく笑った。


エミカ「もう…着ています…!」

アルジ「リネからの…手紙か」


ラアムを巨大化させる。


エミカ「さあ、これで走ろう」

アルジ(そっか。リネから譲り受けたのか。

 そうだよな。さすがに普通に走らないよな)


アルジは笑う。


エミカ「どうした…?何かおかしいか?」

アルジ「いや…

 これなら本当に遠くまで行けると思った」

エミカ「任せろ。私が前に乗る」

アルジ「疲れたらいつでも交替しろよ」

エミカ「大丈夫。どこまでも行ける」

アルジ「頼もしいぜ」

エミカ「…そんな気がしてる」

アルジ「オレもだ。オレもそんな気がする」


ラアムに乗る直前。

エミカは気になって袋の中をのぞき込む。

リネがくれた袋の中を。


エミカ「まだ何か…」


袋の中には、ナアムもいる。

薬もある。

リネが遺してくれた旅銭も。

そして、もう1枚。

もう1枚の紙が彼女の目に入る。

袋の底。

ひっそりとそれは入っていた。


「エミカへ」


紙に書かれたリネの文字。

それは、エミカに宛てられた手紙。


エミカ(私への…手紙?リネさん…。

 何を書いてくれたんだろう…?

 気になるけど…

 今、これを読んでしまったら…)

アルジ「…どうした?」

エミカ「いや、なんでもない。行こう!」

アルジ「ああ」


アルジとエミカはラアムに乗った。

ラアムは歩き出す。

まだ行ったことのない新たな地へ向かって。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 防御

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 42★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

  26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、濃色魔術衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20

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