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アルジ往戦記  作者: roak
111/300

第111話 到着

リネは天界石の杖を握りしめる。

杖にはめこまれた石がキラリと光る。

それを見つめてリネは言う。


リネ「ミリ、ごめんね…」


◇ リネはミリの魔力を受け継いだ。

リネはマスタスを見る。

アルジの雷術に捕われた彼の姿を。


リネ(まだ…時間はある…!)

エミカ「先生!!」


呼びかけられてリネは振り返る。

そこにはミリのそばに立つエミカ。


リネ「先生じゃない。リネさんでしょ」

エミカ「リネさん…!ミリは…!もう…!」

リネ「…ええ。ミリはもう…ここにいない。

 蘇生は…無理だから…。…分かるでしょ?

 あなたもその姿を見たら、分かるでしょう」

エミカ「うう…!そんな…!

 そんなことって…!!」

リネ「…エミカ」

エミカ「うう…」

リネ「…エミカ!!」

エミカ「…!!」

リネ「よく聞いて」

エミカ「………」


真剣な顔。

エミカは黙る。

リネはほほえむ。


リネ「あなたは…

 あなたはね、最後まで旅を続けるの」

エミカ「最後まで…?」

リネ「アルジさんと一緒に」

エミカ「リネさんは?

 リネさんも行きましょう!」

リネ「私もここでお別れ」

エミカ「どうして!!」

リネ「やっぱり私は責任を取らなきゃならない」

エミカ「責任ってなんですか!!」

リネ「いろんな…いろんな責任…。

 変態魔術だけじゃない…暗黒獄焼術も…

 あいつは…おそらく…」

エミカ「…え?なんですか?

 どういうことですか!?」

リネ「あとで調べて、ゆっくり考えてよ。

 きっと分かると思うから。あなたなら。

 今まで…本当にありがとう…!」

エミカ「待ってください!!!」

リネ「待てない。もう時間がない。分かって…」


リネの頬を涙が伝う。

それを見てエミカは黙る。

リネはそっと差し出した。

天界石の杖を。

エミカは両手でそれを受け取る。


エミカ「…リネさん?」

リネ「その杖、あなたに上げる」

エミカ「これは…リネさんの…大切な…!」

リネ「私の魔力を受け継いで。

 それで、あなたは旅を続けるの」

エミカ「受け継ぐって…私が…?そんな…!

 そんなこと…!私が…!」

リネ「大丈夫。あなたなら、きっとできる」

エミカ「で…できません…!」

リネ「いいえ、できる。…これも上げる」


袋を差し出す。

エミカは受け取る。

薬とラアムとナアムの入った袋だった。


エミカ「先生…何を…!何をするんですか!!

 待ってください!!行かないでください!!」

リネ「また会いましょう。機会があれば…」

エミカ「どういうことですか!!嫌です!!

 先生には!!まだ教えてもらいたいことが!

 たくさん…!たくさん!あるんですから!!」

リネ「大丈夫。あなたはもう大丈夫だから。

 あなたも…ミリも…大好き。

 あなたたち2人に出会えて本当によかった。

 あなたたち2人が…私の弟子になってくれて…

 あなたたちは…私の…最高の弟子だから…。

 だから…だから…ね…」


涙声に変わる。

リネはエミカに背を向ける。

そして、アルジとマスタスの方を見る。


リネ「もう…時間はないみたいね…」


歩き出すリネ。

マスタスの方へ。

1歩、また1歩。

歩みを速めながら。


エミカ「先生!!」


リネは振り返らない。


リネ「エミカ!!アルジさんに伝えておいて!!

 最後の最後で…魔術師リネは正気に戻ったと!

 本当の心を取り戻したと!!」

エミカ「先生!!!!」


歩きながらリネは思う。


リネ(…アルジさん、ありがとう。

 今まで本当にありがとう。

 これで…お別れです。私たちは…これで…。

 …さっきは…ごめんなさい。

 ひどいことを言いました。

 あなたにも出会えてよかった。

 本当によかった。

 あなたはいつも…誰かのために…

 一生懸命で…)


すぐ近くでリネは見つめる。

五感を失っても戦おうとするアルジの姿を。

歯を食いしばり、肩を震わせるその姿を。

剣を振り上げ続ける彼の姿を。

視線を移して、見つめる。

恐怖に怯えるマスタスを。

アルジの雷術で動けないマスタスを。

それでも魔術を繰り出そうとする彼の姿を。

再びリネはアルジを見つめる。


マスタス「リネ…!!!おい!!」

リネ(アルジさん。…素晴らしい雷術です。

 昨夜、あなたに魔術を教えてよかった。

 ああして最後にエミカと話すこともできた。

 あなたが私たちにくれた時間、感謝します。

 あなたもきっと大丈夫。

 もっと、もっと強くなる。

 どこまで強くなってくれるのか。

 見てみたい気持ちもあるけれど…。

 私たちはここでお別れです。

 エミカのことを…よろしくお願いします。

 そして、宝子を…魔真体を…あなたの手で…

 止めてやって…。エミカとともに…)


アルジの雷術は切れかけていた。

マスタスの体が自由に動くようになる。

その瞬間、リネがマスタスに背後から抱きついた。


マスタス「リネ!!おい!!

 どういうつもりだ!!」

リネ「この距離なら…できないでしょ。

 暗黒獄焼術…。使えないでしょ。

 あなた自身も焼けちゃうもんね。

 そもそもこの体勢だと精神操作も難しい。

 暗球は、背後には飛ばせないものね」

マスタス「放せ!!放せぇぇぇええ!!!」

リネ「もう放さない…!」

マスタス「…何をする!!何をする気だ!!」

リネ「…分からない?」

マスタス「放せっ!!放せぇぇぇええ!!!」


マスタスは激しく体を揺らす。

それでもリネは離れない。


リネ「…分かってた。私は分かってた!!

 生半可な魔術では…今のあなたは倒せない!

 だからこうする!これしかないと思うから!!

 これから私が何をするか…分かる?」

マスタス「…おい!ふざけるなよ!!」


2人の足元を分厚い岩の壁が覆う。

リネの岩術だった。


リネ「岩術を使えなくても分かるでしょう」

マスタス「リネ!!おい!!ふざけるな!!」


岩壁は2人の体を覆っていく。

腰の高さまで。


マスタス「おい!!!やめろっ!!!!」

リネ「やめない!!!」


岩は一気に2人の全身を覆う。

五感を失ったアルジは剣を振り上げ続けていた。

歯を食いしばり、うめきながら。

岩の塊の前で。

その岩の中。

真っ暗な狭い空間の中。

リネはマスタスを強く抱きしめる。


エミカ「先生…!!先生…!!」


エミカは歩いていく。

リネとマスタスを包んだ岩の塊の方へ。

ふらりふらりと頼りない足取りで。


エミカ「…もう…これは…だめだ…」


岩を前に力なく両膝を床につけた。


エミカ(なんて…堅そうな岩なんだろう…。

 こんなの…もう誰も破れない…。

 何をしても…割れるわけない…。

 先生の…決意が…覚悟が…あの岩に…。

 ああ…もう先生は…もう…先生は…)


エミカの目から涙。

たくさんの熱い涙。

暗闇の中、リネは思う。


リネ(一体、何を悔やんだらいいんだろう?

 あなたに…蘇生魔術を見せたこと?

 あなたに…創造の杖について話したこと?

 それとも…複合魔術の研究をしたこと?

 それとも…それとも…研究所で…初めて…

 あなたに…この人に…声をかけたこと…?

 よく…分からない。

 でも…もう考えるのは終わり。

 これですべてが…終わるから)


岩壁が小さくなっていく。

ギシギシと音を立てて、押し潰していく。

中にいるマスタスとリネの体を。


マスタス「ああ!!痛い!!痛いよ!!!

 嫌だ!!嫌だ!!恐いよ!!助けて!!

 恐いよ!!苦しいよ!!」

リネ「…静かに…して…」


意識が薄れる中、リネは言葉を発する。

突然、炎が上がる。

マスタスの全身から。

岩の中、彼の体は激しく燃える。

その炎はリネの体も焼いていく。

マスタスの火術。

その魔術は反射的なもの。

マスタスは抑えられなかった。

経験したことのない危機的状況の中。

魔力を高め、魔術を繰り出す。

その衝動を。

◇ マスタスに4827のダメージ。

 (HP2553→0)

◇ マスタスは死んだ。

◇ リネに7271のダメージ。(HP1011→0)

◇ リネは死んだ。

◇ アルジたちは戦いに勝利した。

◇ アルジは雷動を習得した。

リネの死とともに岩が消える。

黒く焼け焦げた2人の体が残される。


アルジ「…ラァアア!!!」


アルジは剣を振り下ろす。

その刃はむなしく空を斬った。


アルジ「!!!?……はぁっ!!はぁっ!!!

 はぁっ…!!はぁっ…!!はぁっ…!!!」


かけられていた闇魔術が解除される。

精神操作も。

五感鈍化も。

術者であるマスタスの死によって。

アルジの視覚が、聴覚が、すべての感覚が戻る。


アルジ「はぁっ…!!はぁっ…!!はぁっ…!!

 ……なんだ…!!何が…!!一体…何が!!」


目の前には、焼け焦げて床に横たわる2人の姿。

何が起きたのかアルジには分からない。

視線を移す。

見つける。

へたり込んでむせび泣くエミカの姿を。


アルジ「…エミカ!!」

エミカ「…アル…ジ…」

アルジ「…何が…あった…?」

エミカ「…し…死んだ…みんな…」

アルジ「…!」

エミカ「ミリも…リネさんも…みんな…

 マスタスも…みんな死んだ…」

アルジ「…!!!」


そのとき、アルジは見た。

エミカの手に握られた天界石の杖。

それにはめ込まれた石が光るのを。

◇ エミカはリネの魔力を受け継いだ。


アルジ「そんな…!!ミリも…!!リネも…!!

 うああ…!!うああああああ…!!!」

エミカ「う…うう…ううう!!」

アルジ「うあああああああああああ!!!」


叫ぶアルジ。

勇気の剣は一層強く光る。



◆ テノハ ◆

ガシマとオンダクが到着する。

魔学校マスの前に。

雨はすっかり上がっていた。


ガシマ「ここか。意外と早く着いたな」

オンダク「ああ。アヅミナの魔力のおかげだ」

ガシマ「さっき、中から叫び声が聞こえたが…」

オンダク「何かあったな…」

ガシマ「とにかく行くぜ」

オンダク「おう」


2人は勢いよく戸を開けて中へ入っていく。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 44★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 防御

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  41★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★

◇ 魔力

 29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火

      氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷

      雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁

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