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アルジ往戦記  作者: roak
110/300

第110話 雷術

ミリの魔波に触れてマスタスは思う。


マスタス(見事だ…)


冷気の魔波が王氷の形をなす。


ミリ(いい感じだ!!これなら行ける!!!)

マスタス(一体どれだけいるだろうか?

 その若さでここまで魔力を高められる者が。

 リネの指導の産物か。…いや。

 これはむしろ…この女自身の素質か)


王氷がマスタスに襲いかかる。


マスタス(魔術師を志す者100人集めたとして

 これほどの素質を持つ者は何人いるだろうか。

 3人。いや、おそらく…1人いるかどうか。

 優れた素質の持ち主であることは認めよう。

 だが、まだまだ。まだまだ甘い)


一気に魔力を高めるマスタス。

勢いよく放たれる魔波。

さっきエミカが触れたものより数段強い。


ミリ「…うっ!!!!」

マスタス(強く激しく魔力を高めること…。

 静かに速く魔波を解き放つこと…。

 放った魔波を思うままに操ること…。

 これら一連の動きがまるでできていない。

 まるで形になっちゃいない。

 なんと粗く、洗練されていないことか。

 その素質、惜しまれるがここまでだ)


マスタスは左手を小さく振る。


ミリ「!!!」


暗球が放たれた。

圧倒的速度で。

飛び出し、大きくなり、襲いかかる。

ミリに。

彼女の王氷がマスタスの体に届く前に。


ミリ(!!!?そんな!!速い!!!)

マスタス「さよなら」


暗球がミリの体を包む。

頭からつま先まで、すっぽりと。

そして、暗黒獄焼術が決まる。


ミリ「わっ……!!!」


巻き起こっていた冷気はたちまち消えた。

荒々しく広がる熱風。

その熱風の中心に暗球。

マスタスの左手から放たれた漆黒の球体。

包み込んだものを焼いて焦がしていく。

ほとんど音を立てず。

一瞬のうちに。

暗球が消える。

そこに残されたのは変わり果てた姿。

もう動くことも話すこともない。

炭人形と化したミリ。

床にへたり込んでいた。

◇ ミリに17996のダメージ。(HP1008→0)

◇ ミリは死んだ。


アルジ「は…?」

エミカ「え…?」

リネ「ミ…リ…?」

マスタス「………」


大きな音がした。

強く、床を蹴る音。

蹴ったのはアルジ。

彼は駆け出していた。

剣を振り上げ、叫びながら突進する。

マスタスに向かって。


アルジ「てめええええ!!!!許さん!!!!」

マスタス「お前も死ね!」


再び繰り出される暗球。


マスタス「!!?」


アルジは避けた。

高速で繰り出されたその球を。

素早く体を回転させて。

放たれた暗球は宙で燃え尽きる。


マスタス(偶然か!?避けただと!?

 今のはオレの最高速度!!

 見切るのはほぼ不可能!!

 一流の感知力を持つ魔術師であっても!!

 なんだ!!一体!!何が起きた!!!)


アルジは振り上げる。

光を放つ勇気の剣を。

マスタスは瞬時に理解する。

今まさに斬られようとしている。

自身の体が。

脅かされている。

生命が。

現実に。

そんな恐怖は久しく味わっていなかった。

2年前の逃走以来。


マスタス(この野郎!!!!)


素早く暗球を放つ。

アルジの頭部に。

今度は命中する。

アルジは剣を振り下ろせない。

彼の全身は固まった。


アルジ「…ぐ…ぐぐ…!!」

マスタス「動くなぁ!!動くんじゃねえ!!」


マスタスの精神操作が決まる。

アルジは強く歯を食いしばる。

一向に動かない体。

その場で震えるのみ。

剣を振り上げたまま。

悔しさのあまり目に涙が浮かび、こぼれた。


アルジ「ぎ…ぎぎ…!!」

マスタス「そうだ!!そこでそうしてろ!!

 動くなよ!!次は五感鈍化だ!!

 お前の視覚を!!聴覚を!!嗅覚を!!

 全部!!!全部だ!!!全部奪ってやる!!

 恐怖しろ!!恐れおののけ!!バカが!!!」


アルジの視界から色彩が、輪郭が消えていく。

音も、匂いも、皮膚感覚も。


アルジ「…ぐっ…ぞぉおお…!!!!」

マスタス「どうだ!!!これが闇の魔術だ!!

 思い知れ!!刃向かったことを後悔しろ!!!

 弱いくせに立ち向かった愚かさを呪え!!!」

アルジ「…クソォォオオオオオオ!!!!」

マスタス「もうじきだ!もう少しで!!!

 お前の五感は完全に失われる!!

 焼いてやる!!それから焼いてやる!!

 お前も炭人形になるがいい!!

 さっきの愚かな女のように!!

 恐れ!!苦しみ!!悲しむがいい!!」


剣を振り下ろせば、マスタスを斬れる。

だが、その刃は斬りつける寸前で止まっている。

止められている。

精神操作によって。

剣は強く光り続ける。

アルジの激しい感情と共鳴するように。

そのとき、マスタスは気づいた。


マスタス(!!…なんだ!?)


剣が放つ光を見つめる。


マスタス(力…!!力だ!!!あの剣から…!!

 なんだ!?一体…なんなんだ!?あの剣は!!

 あの光…力が!!力が湧き出している…!!

 あの力…魔力じゃない!!…秘力だ!!

 あの剣から…莫大な秘力が出ている…!?

 一体どういう仕掛けなんだ!!?)


アルジの体は動かない。

マスタスの精神操作に屈服し続ける。

一方で剣が放つ光は一層強くなっていく。


マスタス(そうか…力を与えているのか!!

 あの剣が!!剣の秘力が高まり…

 あいつに力を与えている!!

 さっき…オレの暗球を避けたのも…!!

 あの剣が…!!?…まあいい!!

 …そろそろ焼いてやる!!!!

 焼いて!!殺して!!おしまいだ!!)

アルジ「ぐ…ぐぅぅうう……!!!!!」


アルジが剣を振り上げていたとき。

エミカはミリにすがりついていた。

黒くなり、固まって動かなくなったミリの体に。

大声を上げる。


エミカ「わああああああああああ!!

 ミリ!ミリ!!嫌だ!!!

 こんなに熱く…!!こんなに硬く…!!

 ミリ!!!ミリ!!!」

リネ「………」


ミリの肩や背中に触れたエミカの両手。

その手のひらは深い火傷を負っていた。

エミカは言う。

大粒の涙を流しながら。


エミカ「嘘だ!!嘘だ!!ミリ!!ミリ!!

 返事してよ!!!起きてよ!!!」

リネ「………」


柔らかい光に覆われる。

エミカの両手が。

火傷が癒されていく。

リネの再生魔術だった。

その再生魔術の光はミリの体にも当たる。

だが、彼女の体が元に戻ることはない。

炭人形のまま一切変化を見せなかった。

エミカはリネの方を向いて言う。

叫ぶように。


エミカ「先生!!!治してください!!!

 ミリを!!!前みたいに!!蘇生魔術で!!!

 先生の蘇生魔術で!!!お願いします!!!!」

リネ「………」

エミカ「先生…!!お願いですから…!!

 お願いですから…!!」

リネ「…それは…無理」

エミカ「そんな…!!そんなっ!!!」

リネ「ミリの…その体は…完全に…

 壊れてしまっている…。

 再生も…蘇生もできないくらいに…」

エミカ「そんな…!!そんな…!!

 先生…!!!!」

リネ「そういう魔術を…あいつは使った…」


そして、リネは視線を向ける。

キッと、力強く。

その先には、マスタス。

次の暗球を繰り出そうとするマスタスの姿。

そのすぐそばで剣を振り上げるアルジ。

膠着状態の2人の姿がリネの視界に入る。


マスタス「食らえい!!!」


暗黒獄焼術を出そうとする。

左手を動かそうとする。

だが、そのとき。


マスタス「!!?」


マスタスの体もまた動かない。


マスタス(なんだ!!痺れて…!!

 動かない!!?これは…!!)


いくつもの小さな閃光。

バチバチと音が鳴る。


マスタス(これは…雷術!!)


何度も左手を動かそうとするが、動かない。

暗黒獄焼術を出せない。


マスタス(リネか!!!リネの雷術か!!!

 くそぉぉおおお!!あの女ぁあああ!!!!

 邪魔しやがってぇぇええええ!!!!)


リネに目をやる。

彼女から雷術は発せられていない。


マスタス「…!!!」


すぐに彼は考えを修正した。

アルジをにらみつける。


マスタス「これは…!!そうか…!!

 お前の雷術か…!!」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

 39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り

◇ 魔術  雷動


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ マスタス ◇

◇ レベル 38

◇ HP   2553

◇ 攻撃

 11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   7★★★★★★★

◇ 装備  極上魔獄杖ごくじょうまごくじょう邪悪舞魔衣じゃあくまいまい

◇ 魔術

火弾、火矢、火砲、火弦、火壁、火宴、王火

  暗球、精神操作、五感鈍化、変態魔術

  暗黒獄焼術

  微細暗球型精神操作

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