表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルジ往戦記  作者: roak
108/300

第108話 記憶

リネは涙声でマスタスに言った。


リネ「あなたが何に悩み、苦しんできたのか。

 今、分かった」

マスタス「………」

リネ「確かに…確かにあなたは…

 反省すべきだったと思う。過去のことを…。

 魔術で人を殺めてしまった過去のことを…。

 取り返しがつかないこともしたかもしれない。

 だけど、そうするしかない事情があった…。

 分かった。分かったよ。私は分かったから…」

マスタス「分かってくれたか」

リネ「うん…分かった。分かったから。

 話してくれて、ありがとう」

アルジ(何を言ってるんだ!?リネ!!

 分かったってどういうことだ!!?

 何を考えてるんだ!?)


温かいリネの言葉。

マスタスは安心して笑顔を見せた。

そんな彼にリネはほほえみ返す。


マスタス「………」

リネ「あなたは抱えていた。強い劣等感を。

 宝子たちと旅をする中で。大遊説をする中で。

 王族の器の大きさ。あなたはそれを感じた。

 誰よりも近くで。宝子と一緒に旅をして。

 そして、あなたは圧倒された。

 長い間、圧倒されていた。

 だから、力を求めた。彼らに負けない力を。

 ずっと、ずっと求めていた。

 彼らに負けないために。

 彼らから一目置かれるため。

 一族から認めてもらうため…」

マスタス「ああ、そうだ」

リネ「だけど、そうする内に…

 あなたは心をゆがめてしまった。

 あなたの心に大きな空白ができてしまった」

マスタス「そうだよ。そのとおりだ」

リネ「もういいから。気にしなくていいから」

マスタス「そのつもりだ」

リネ「学校を建てた話、とても素敵だった」


アルジは困惑する。


アルジ(なんなんだ?どういうつもりなんだ?

 待ってくれ…。待ってくれ…!リネ!!)

マスタス「…ありがとう」

リネ「 あなたは準備してきた。

 学生たちが魔術を学べるように

 とても清らかで誠実な態度で…」

マスタス「ああ、そうだ」

リネ「これからも頑張ってほしい。

 応援するから。私、ずっと応援する。

 あなたのことを」

マスタス「ああ、ありがとう」

アルジ「待ってくれ!!!!」


気がつくとアルジは叫んでいた。


エミカ&ミリ「…!!」

リネ「…?」


アルジは歯を食いしばり、肩を震わせる。

マスタスをにらみつけてからリネを見つめる。


アルジ「なんでだ!?」

リネ「え…?」

エミカ&ミリ「………」

アルジ「なんでだ!!?リネ!!」

リネ「………」

アルジ「決着をつけるんじゃなかったのか!!

 星の秘宝を取り返すんじゃなかったのか!!」

リネ「………」

アルジ「なんだったんだ!!オレたちの旅は!!

 一体、なんだったんだ!!」

マスタス「………」

アルジ「星の秘宝を取り返すどころか、

 あいつに創造の杖を渡して!!

 それで分かったってなんだ!?なんなんだ!

 オレたちは…!!オレたちはなんのために…!

 なんのためにここまで旅をしてきたんだ!!」

リネ「アルジさん…」

アルジ「応援するってどういうことだ!

 それでどうする!!?

 また何かあいつにくれてやるのか!!?

 いい加減にしろ!!」

リネ「アルジさん!」

アルジ「なんだ!!!」

リネ「あなたにも分かる日が来る。

 あなたは世間知らずだから。

 だから、まだ分からないだけ」

アルジ「なんだって!!?」

リネ「今日のことは分かる日が来る。

 あなたにも。きっとそういう日が来る。

 来るから…。

 そうか、そういうことだったのかって。

 分かるようになる」

アルジ「分かってたまるか!!」

リネ「大人には、いろんなことがあるから」

アルジ「いろんなことってなんだ!!!

 こんなことがあってたまるか!!!」


アルジの声は震えている。


リネ「いろいろあるの。大人には。

 ここで簡単に口にできるようなことじゃない。

 あなたも生きていく中で理解する。

 誰もがそうやって…」

アルジ「理解してたまるか!!!!」

マスタス「ガキは黙っとけ」

アルジ「てめえ…!!!」

マスタス「……?」

アルジ「…!!?」


そのとき。

アルジは強い熱を感じる。

熱の根源。

それは何か。

彼の隣。

視線を移す。

そこには熱い魔波を身にまとうエミカ。

マスタスをじっと見ている。


エミカ「話をやめるな」

マスタス「…?」

エミカ「焼かれたいのか?」

リネ「エミカ!!何言ってるの!!?」


近づくリネ。

エミカは魔波を浴びせる。

熱を帯びたその魔波がリネの頬を微かに焼いた。


リネ「…あつっ…!!」


リネはよろめき、立ち止まる。


リネ(ここまで…!ここまで強い魔波を…!!)

マスタス「やるつもりか?その程度の力で…」

エミカ「話はまだ終わってないだろ」

マスタス「………」

エミカ「自分が言ったことを忘れたのか?」

マスタス「………」

エミカ「まだ話していないことがあるだろ」

マスタス「………」

エミカ「最後まで話をしろよ」

マスタス「………」

エミカ「すべてを話せ」

マスタス「………」

エミカ「ここで話をやめるのなら…

 私がお前を焼く…!」

マスタス「くく…」

リネ「エミカ!!!」


アルジはエミカを見て問いかける。


アルジ「話って…?」

エミカ「新魔術のことだ」

アルジ「新魔術…」

エミカ「あいつはまだ話してないよ」

アルジ「…ああ」

マスタス「………」

エミカ「新魔術が一体なんなのか。

 まだあいつは話していないんだ」

アルジ「…確かにそうだな」

エミカ(リネさんの…おかしな様子…。

 おそらく…原因はそれにある…!!)


マスタスはニヤリと笑う。


マスタス「話すのを忘れていたわけじゃない。

 少し考えていただけだ」

エミカ「…何?」

マスタス「言うか言わないか考えてた。

 話しながらずっと。

 あとで決めようと思っていた。

 言っていいか悪いか。

 言っても許されるかどうか。

 考えていた。だから、今まで言わなかった。

 それだけだ。

 新魔術について語るのは心苦しいことだ。

 だから、オレはためらった。

 言わないことにしようかとも思った。

 だが、言うことにした」

エミカ「早く話せ!」

マスタス「調子に乗るなよ」

エミカ「………」

マスタス「少し火術が使えるからって…」

エミカ「…!!」


闇の魔波が巻き起こる。

嵐のように、強く、激しく。

底知れない暴力性と凶悪性を備えて。

エミカに向けて放たれる。


エミカ(なんて…恐ろしい…!息が…!!)


エミカがよろめく。

倒れそうになる彼女をアルジが支える。


アルジ「大丈夫か!!」

エミカ「…う…うう」


マスタスが笑って言う。


マスタス「少し魔波に触れただけでこれだ。

 よく分かっただろう。実力の差が。

 お前らなどいつでも手にかけられる。

 オレがその気になれば…な」

アルジ「ぐ…!」


顔面蒼白のエミカ。


アルジ(エミカ!さっきまで元気だったのに!!

 これが闇の魔力!思ってたよりずっとやばい!

 …分かった。分かったぜ。

 あいつの余裕の原因が!

 あいつは思っていない。

 ちっとも思ってないんだ!

 自分が負けるなんてことを!)

エミカ(分かった…。

 リネさんの言葉の意味が…。

 リネさんの言葉の…本当の意味が…。

 猛獣を…裸で手懐ける…。

 その意味が…分かった…。

 …勝てない。今の私たちじゃ…!

 悔しいけど勝てない!!あいつは強過ぎる!

 魔力の量が、質が、明らかに違う!!

 このままじゃ…勝てない…!

 どんな作戦を立てようと!

 戦えば…負ける!!だけど!それでも…!)


エミカは恐怖心を振り払う。


アルジ(あいつは確信している…!

 自分が負けるなんてあり得ないと!

 絶対に勝てると!!そこだ!!

 あいつの隙は…多分そこにある!)


アルジは闘争心を燃やす。


エミカ「もう大丈夫だ…」

アルジ「…エミカ」


マスタスはリネに語りかける。

アルジとエミカには目もくれず。


マスタス「リネ」

リネ「マスタス」

マスタス「リネ。話そう。新魔術について。

 オレが考え出した新しい魔術について。

 怒らないで最後まで聞いてくれ。

 そして、許してくれ」

リネ「許してくれってどういうこと?

 一体どんな話?心魔術って?」

マスタス「ああ、今から言うから。

 隠さず、すべてを。だから、聞いてくれ」

エミカ(あの様子…何かある…!

 あいつの新魔術に…何か秘密がある!

 それがおそらく…原因になっている…!

 リネさんを…おかしくしている原因に…!

 だって…それ以外に考えられないから…!!)


マスタスは椅子から立ち上がる。

リネの目を見つめて話し始めた。


マスタス「オレが研究所を退所したあとのこと」

リネ「…ええ」

マスタス「オレは1度だけ戻ってきた」

リネ「そう…だったの…?」

マスタス「ああ。1度だけ。

 そして、オレは君に会いに行った」

リネ「会った…?思い出せない…」

マスタス「無理もない。

 かなり前のことだったしな」

リネ「いつ?いつ戻ってきたの?」

マスタス「君の誕生日。

 その日の夜、オレたちはお祝いをした」

リネ「そんな…。嘘…それなら…忘れるはず…」

マスタス「お祝いをした。少し豪華な料理で。

 有名店で買って持ち帰った。君の寮の部屋へ。

 オレたちは一緒に歌を歌ったりもした。

 お祝いの歌だ。君の誕生日を祝う歌を」

リネ「そうだっけ…そうだったっけ…」

マスタス「食事を終えると君は眠ってしまった。

 オレはもっと話がしたかった。

 だけど、君は先に眠った。

 君は言っていた。

 複合魔術の研究にかかっていたと。

 徹夜が続いていたと。

 だから、早く眠りたいと。

 オレは了解した。

 疲れているなら、早く眠ってくれと。

 君は1人、深い眠りに落ちていった」

リネ「知らない…。私はそんなこと…知らない。

 確かに私は…複合魔術を研究していたとき…

 とても忙しかった。…だけど…!」

マスタス「もうすぐ思い出す」

リネ「え?」

マスタス「思い出すんだよ。これから」

リネ「どういうこと?」

マスタス「これは、そういう魔術だから」

アルジ(なんだ…!?)


マスタスは懐から1本の杖を出す。

黒く、細く、短い杖を。

手にしたその杖を素早く振る。

すると、リネの顔の表情が変わっていく。

困惑から、驚きの表情に。

眠っていた記憶が呼び覚まされる。

色鮮やかに。

まるで昨日のことのように。

彼女の頭の中でよみがえる。

そして、マスタスは明かす。

新魔術がどのようなものか。



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 23

◇ HP   2277/2277

◇ 攻撃

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★

◇ 素早さ

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 魔力  5★★★★★

◇ 装備  勇気の剣、雅繊維戦衣がせんいせんい

◇ 技   円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 19

◇ HP   1452/1452

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御  12★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔樹の杖、深紅の魔道衣

◇ 魔術  火球、火砲、火樹、火海、王火


◇ ミリ ◇

◇ レベル 16

◇ HP   1008/1008

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  7★★★★★★★

◇ 素早さ

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔石の杖、紺碧の魔道衣

◇ 魔術  氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷


◇ リネ ◇

◇ レベル 27

◇ HP   1011/1011

◇ 攻撃   7★★★★★★★

◇ 防御

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 装備  天界石の杖、創造の杖、聖星清衣せいせいせいい

◇ 魔術  雷弾、雷砲、雷柱、王雷

      岩弾、岩砲、岩壁、王岩

      光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ マスタス ◇

◇ レベル 38

◇ HP   2553

◇ 攻撃

 11★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 秘力   7★★★★★★★

◇ 装備  極上魔獄杖ごくじょうまごくじょう邪悪舞魔衣じゃあくまいまい

◇ 魔術

火弾、火矢、火砲、火弦、火壁、火宴、王火

  暗球、精神操作、五感鈍化、変態魔術

  暗黒獄焼術

  微細暗球型精神操作

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ