第104話 王族
◆ 魔学校マス ◆
マスタスは話す。
彼が故郷で見聞きしたことについて。
大遊説をしているときに起きたことについて。
そして、学校を建てた経緯について。
マスタス「族長は言った。
急に変えてはいけないと。
急いではいけないと。
政府を倒すことも新たな国づくりも。
多くの人々は平和を望んでいるから。
それから、族長は教えてくれた。
ノイ民が再び大陸を制覇するため、
今やるべきことを。
それが大遊説。少しずつ大陸を変える。
平和なまま、争うことなく変えていく。
そのためにまずは多くの人を集める。
魔術の素晴らしさを教えると触れ込んで。
魔術を実際に見せる。
集会に来てもらい、体験してもらう。
参加者たちは感動する。
みんなで感動を共有する。
それから、伝える。
大陸はこうあるべきじゃないかと。
オレたちはこう考えていると。
理想の国家はこうじゃないのか。
だけど、実際はこうなっている。
これはよくないんじゃないか。
改める必要があるんじゃないか。
集まってくれた人々に投げかける。
共感を求める。分かってもらう。
賛同してもらう。大半は賛同した。
どこの集会でも。だが、そうでない人もいる。
強く反対する人もいた。
叫んで抗議する人もいた。
そんなときは説得して納得させる。
暴力を振るう人もいた。
凶器を手に襲いかかる人も。
そんなときは魔術で黙らせた。
そうやって大陸を巡った。
集会を開き、人々を集め、考えを広める。
そんな地道な活動で新たな風が起きる。
風はやがて大きなうねりとなる。
大陸を少しずつ変えていく力になる。
時間をかけて争うことなく変えていく。
族長は言った。大遊説は容易じゃないと。
特別な者にしかできないと。
才気に富んだ者。新たな王族となる者。
そういう人でなければできないと。
オレは聞いた。それは誰かと。
族長は答えた。待っていたと。
ノイ民は長い間待っていたのだと。
待っていたとはどういうことか。
聞いた。すると、族長は言った。
聞くより見るのが早いだろうと。
それで彼は会わせてくれた。
男と女。2人の子に。
族長は宝子と呼んでいた。
ノイ地方の遠く離れた町で生まれた2人。
両親は違う。祖父母も。
だが、2人には似通った血が流れている。
それは、王族の血。
大昔、ノイ民が築いた古代王国。
その国を治めていた王族の血。
何世代にもわたって受け継がれてきた。
静かに、密かに、絶えることなく。
そして、今、その血の力が覚醒した。
2人とも特別な魔力を持っていた。
オレが2人を見たときも分かった。
感じたことのない異質な魔波だった。
規格外の魔術の素質。
2人から確かに感じとれた。
族長は言った。
眠っていた力が解放されたのだと。
ノイ民の新たな時代が始まったのだと。
王族の血に施された仕掛け。
それがついに動き出したのだと。
2人の宝子の誕生はノイ民に示していた。
国家再建の時が来たことを。
2人の宝子はラグア、ロニという。
オレはその2人と大遊説をした。
族長から特別な命を受けたのだ。
同行せよと。2人を支えよと。
大遊説は順調だった。
町から町へ。国から国へ。
オレたち3人は考えを広めた。
多くの賛同者を得た。
新たなうねりが生まれた。
人々の考えが変わっていくのを感じた。
各国の主要都市に支部ができた。
人々の強い繋がりができた。
新たな時代の到来を予感させた。
だが、その一方で違いが出てきた。
オレと宝子たちとの間に。
大遊説の取り組み方に違いが出てきた。
ラグアもロニも穏やかで冷静だった。
どこの集会でも言えることだったが、
オレたちをひどく嫌い、批判する者がいた。
そういう者を前にしても2人は冷静だった。
下劣な罵倒の文句でさえも穏やかに聞き流す。
聞き捨てならない虚言や妄言は、
速やかに軽やかに言い返して否定した。
そして、ときには批判を受け入れた。
これが王族の余裕なのかと思った。
オレは違った。
2人と同じようには振る舞えなかった。
次第に2人と離れていくようになった。
オレは1人で集会を開くようになった。
自信があった。オレはオレのやり方でやれる。
大遊説を。そんな自信が。
だが、今考えると、それだけじゃない。
認めてもらいたかったのだ。宝子に。
自分の力を。オレは募らせていた。
どうしようもなく募らせていたんだ。
宝子たちと行動するうちに。
解消しがたい劣等感を。
それを打ち消すため、オレは求めていた。
オレだけの力によるオレだけの功績を。
自信はあった。
オレは自分を最強の魔術師だと思っていた。
誰にも負けない、正真正銘、最強の魔術師。
本気でそう思っていた。
その気になれば小さな村は滅ぼせた。
そして、実際に滅ぼした。
オレは習得していた。
そういうことができる魔術を。
そんなときだった。ある事件が起きた。
大っぴらにはなっていない。
だが、大きな事件だ。
オレの人生にとって。
そして、大遊説にとっても。
あれは、強い雨の日だった。
たどり着いた町で集会を開いた。
オレは小さな会場。1人で集会を開く。
ラグアとロニは別の大きな会場。
その頃、オレたちは薄々気づいていた。
集会にどうも怪しい連中が紛れ込んでいると。
やけに熱心だが、どこか様子がおかしい。
そんな連中が集会によく現れていた。
彼らは何者か。気になっていた。
その日、オレは正体を突きとめることにした。
ラグアにもロニにも言わずに。1人で決めた。
参加者を絞り、精神操作をかけて、話させる。
自分が何者なのか。洗いざらい話させる。
10人前後であれば、やれると思った。
多少、武闘派の人間が混ざっていても。
攻撃的な魔術を使う者がいたとしても。
オレ1人で制することができると思っていた。
そして、オレは集会を開催した」
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 23
◇ HP 2277/2277
◇ 攻撃
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 防御
26★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★
◇ 素早さ
28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★
◇ 魔力 5★★★★★
◇ 装備 勇気の剣、雅繊維戦衣
◇ 技 円月斬り、剛刃波状斬撃、朔月斬り
◇ エミカ ◇
◇ レベル 19
◇ HP 1452/1452
◇ 攻撃 9★★★★★★★★★
◇ 防御 12★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔樹の杖、深紅の魔道衣
◇ 魔術 火球、火砲、火樹、火海、王火
◇ ミリ ◇
◇ レベル 16
◇ HP 1008/1008
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 7★★★★★★★
◇ 素早さ
17★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★
◇ 装備 魔石の杖、紺碧の魔道衣
◇ 魔術 氷弾、氷柱、氷乱、氷渦、王氷
◇ リネ ◇
◇ レベル 27
◇ HP 1011/1011
◇ 攻撃 7★★★★★★★
◇ 防御
18★★★★★★★★★★★★★★★★★★
◇ 素早さ 14★★★★★★★★★★★★★★
◇ 魔力
31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★
◇ 装備 天界石の杖、創造の杖、聖星清衣
◇ 魔術 雷弾、雷砲、雷柱、王雷
岩弾、岩砲、岩壁、王岩
光玉、治療魔術、再生魔術、蘇生魔術
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療魔術薬 10、魔力回復薬 20