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アルジ往戦記  作者: roak
101/300

第101話 名前

◆ 北土の魔術研究所 所長室 ◆

アヅミナは語る。


アヅミナ「彼らは戦っていた。

 いつも日の当たらない場所で」


強い魔波を発しながら彼女は語る。

その魔波は、暗に警告していた。

この話を遮ることは許されないと。

誰もが黙って静かに聞いた。

ホジタも秘書も大前隊も。


アヅミナ「大悪党の成敗、化け物の退治…

 表立って華々しく活動するのが大前隊。

 彼らは、それと対照的。影の存在。

 密かに静かに仕事をこなしていた。

 人々の注目を集めることなんてない。

 政府の者もほとんどが彼らの存在を知らない」

ホジタ「………」

アヅミナ「彼らの仕事は不穏分子の監視と排除。

 大陸に混乱や災難をもたらすおそれのある者。

 そういう者たちを調べて見張って消していく。

 その仕事が行われていることを誰も知らない。

 だから、彼らは世間に称賛されることはない。

 尊敬されることも感謝されることもない。

 それでも、彼らは黙々と仕事をこなした」

ホジタ「…いきなりなんの話だね?」


アヅミナは声を少し大きくして続ける。


アヅミナ「そんな彼らが特に警戒していたもの。

 それが3人の魔術師」

ホジタ「………」

アヅミナ「通称、大遊説の3人。

 彼らはその3人を念入りに監視していた」

ホジタ「………」

アヅミナ「大遊説の3人が着ていたもの。

 それは、北土の魔術研究所の特製魔術衣。

 上位の実力を持った者に与えられる魔術衣」

ホジタ「………」

アヅミナ「まだ白状する気はない?」

ホジタ「白状も何も…」

アヅミナ「なら、もう少し話をする。

 さっきの破壊の矛についての

 問いにつながるまで」

ガシマ(彼らってのは…誰だ?)


アヅミナは明かした。

「彼ら」の名前について。


アヅミナ「彼らの名は、裏行隊りこうたい

オンダク(…聞いたことがある。

 隠密行動に特化した実力者集団だと。

 だが、聞いたことがあるというだけ。

 会ったことも、見たこともない…。

 ただの噂だと思っていた。…実在したのか?)

アヅミナ「裏行隊は政府の秘密組織。

 隊員は全部で12人。

 審理院の捜査員、学術院の学者、

 魔術院の魔術師、そして、大前隊の隊員。

 これらで構成された」

スゲチ「…な!!?」


思わず声が出る。

大前隊の隊員という言葉に驚いて。

アヅミナは構わず続ける。


アヅミナ「少人数の組織だったけど、

 1人1人の能力は確かなものだった。

 彼らは…調査を着々と進めていった。

 大遊説の3人について」

ホジタ「なんだ?それがどうした?大遊説?

 大遊説の3人?そんなものは知らんぞ!

 魔術衣が同じだった?うちの研究所のものと?

 ただそれだけの理由で…それだけの理由で!

 我が研究所に罪をなすりつけるつもりか!!

 私がその黒幕だとでも言いたいのかね!?

 言いがかりだ!ただの言いがかりだぞ!」


秘書の3人がホジタの前へ出る。

大前隊が武器を構える。


アヅミナ「魔術の素晴らしさを大陸に広める」

ホジタ「………」

アヅミナ「それが大遊説の目的。表向きの。

 裏行隊の隊員は何度も大遊説を聞きにいった。

 どんなことが話されているのか調べるために」

ホジタ「…潜入か」

アヅミナ「ええ。彼らは潜入捜査をしていた。

 そして、大遊説の3人に心酔した振りをして、

 何度も、何度も参加した。一般参加者として。

 大遊説の3人が大陸各地で開催した集会に。

 そして、裏行隊は知る。大遊説の真の目的を。

 魔術の素晴らしさを広める。

 その裏にある真の目的を」

ガシマ「なんだ?それは」

アヅミナ「3人の本当の目的。

 それは破壊と創造」

オンダク「何を破壊するんだ?」

アヅミナ「政府を破壊する。

 そして、新たな国家を創造する。

 それこそが、彼らの本当の狙いだった」

ホジタ「バカらしい…!」

アヅミナ「『我々には特別な力がある』。

 ある日の集会で、大遊説の3人はそう話した。

 そして、集まった人たちに見せた。

 それは破壊の矛。

 紛れもなく本物の破壊の矛だった」

オンダク「なら、イゴウセ博物館の矛は…」

アヅミナ「あれは偽物」

オンダク「なんだと…?」

アヅミナ「盗難の事実を隠すために、

 魔術院の術師と武器職人で作った模倣品」

ガシマ「盗まれたなんて話、聞いたことがねえ」

アヅミナ「隠す必要があったから。

 破壊の矛が盗まれてしまったという事実を。

 当時の政府はノイの乱で

 多くの犠牲者を出していた。

 そのせいで民からの信頼を大きく失っていた。

 さらに大事な宝が盗まれたなんて知られたら、

 大変なことになる。

 だから、政府は隠すことにした。

 盗難の事実を。隠さなきゃならなかった」

シンモク「当時の政府は…隠す必要があった…」

ユイ「当時の…政府…」

ガシマ「ノイの乱のとき、矛は盗まれたのか?」

アヅミナ「いいえ」

ユイ「それなら…いつ盗まれたの…?」

アヅミナ「ノイの乱のとき…

 博物館は襲われてない。

 矛は、何者かによって密かに持ち出された」

オンダク「博物館には大量の宝がある。

 警備も厳重だ。

 犯人は一体どうやって…」

アヅミナ「犯人は施設の警備に精通した者。

 命令すれば、警備の体制を変更できる者。

 命じれば、一時的に警備を解くことも可能。

 その人物は、武力と権力を兼ね備えていた。

 政府の戦闘部隊に所属していたから」

ガシマ「政府の…戦闘部隊」

アヅミナ「その犯人は確かな実力を持った戦士。

 悪党の成敗や化け物の退治をしていた。

 表立って華々しく…」

オンダク「………」

アヅミナ「人々から称賛され、尊敬され、

 感謝されていた」

ユイ「………」

アヅミナ「そういう人の犯行だから、

 政府は余計に隠す必要があった」

スゲチ「つまり、犯人は…」

アヅミナ「大前隊の隊員」

ガシマ&オンダク&ユイ&スゲチ&シンモク

「………」


沈黙は長く続いた。


アヅミナ(みんないくらか動揺してるみたい。

 でも、大丈夫。きっと…大丈夫)

ホジタ「それは、それは!

 とんでもない失態だなぁ!」

アヅミナ「………」

ホジタ「大前隊ともあろう者が…」

アヅミナ「その年に…裏行隊は結成された。

 同じような過ちを繰り返さないように。

 そして、奪われた矛を取り返すために」

ホジタ「それで?まだ取り返せていないと!」

アヅミナ「………」

ホジタ「裏行隊とやらも無能のようだな!

 ろくな調査もせず、証拠も出さず、私を疑い、

 私に罪をなすりつけようとする!

 貴様らも同様だが…」


ガシマがアヅミナに問いかける。


ガシマ「なぜ知っている?」

アヅミナ「………」

ガシマ「その話…嘘じゃないな?」

アヅミナ「嘘なんかじゃ…」

ガシマ「アヅミナ。お前もしや裏行隊なのか?

 お前は裏行隊の一員なのか?」


アヅミナは首を横に振る。

ガシマの目を見て言う。


アヅミナ「裏行隊はもう存在しない」

ガシマ「存在しない?」

アヅミナ「解散した」

ガシマ「解散…」

アヅミナ「正しくは解散するしかなくなった。

 そういう状況になった」

ガシマ「…どういうことだ?」

アヅミナ「ある夜、隊員のほとんどが殺された。

 それが2年前の出来事」

ガシマ「何があった?」

アヅミナ「深追い。裏行隊は深追いした。

 大遊説の3人を。彼らは過信していた。

 自分たちの力を。彼らは甘く見ていた。

 相手の力を」


アヅミナはホジタを見て言う。


アヅミナ「たった1人の魔術師だった」

ホジタ「………」

アヅミナ「1人の魔術師が裏行隊を滅ぼした。

 その凶悪な魔術を前にして、

 裏行隊はなす術なく敗れた。

 今思えば、調査不足だった。

 あの頃起きた2つの怪事件。

 あの事件をもっと詳しく調べていれば…」

オンダク「怪事件…」

アヅミナ「2つの村が焼かれた事件。

 村全体が、焼かれて滅んだ謎の事件。

 ある日、突然、その2つの村は人も建物も

 真っ黒な炭に変えられてしまった。

 審理院の調査団が現地を入念に調べたけど、

 はっきりした原因は突き止められなかった」

ホジタ(村が焼かれた…か。あれのことか…。

 これは好都合…)

ガシマ「魔術か」

アヅミナ「ええ、そう。魔術の仕業だった。

 でも、それはあとになって分かったこと。

 超高熱の暗球。

 それが怪事件を起こしたものの正体。

 裏行隊を滅ぼしたのは…その魔術の使い手」

ホジタ「暗球…闇魔術か。その魔術師とは誰だ?

 名前は?知ってるんだろ?言ってみたまえ」

アヅミナ「あなたはもう分かってるんじゃない」

ホジタ「いいから言ってみなさい!

 私もいくらか力になれるかもしれないから」


アヅミナは少し間を置いてから言った。


アヅミナ「その魔術師の名前は…」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ ガシマ ◇

◇ レベル  33

◇ HP   2178/2178

◇ 攻撃

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

 27★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 素早さ

 30★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★

◇ 魔力  10★★★★★★★★★★

◇ 装備  練磨の大斧、金剛武道着

◇ 技   激旋回斬、大火炎車

◇ 魔術  火弾、火砲


◇ オンダク ◇

◇ レベル 35

◇ HP   2841/2841

◇ 攻撃

  28★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★

◇ 防御

  39★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力  9★★★★★★★★★

◇ 装備  竜牙の長槍、超重装甲

◇ 技   竜牙貫通撃、岩撃槍

◇ 魔術  岩弾、岩壁


◇ ユイ ◇

◇ レベル 33

◇ HP   1711/1711

◇ 攻撃

  31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★

◇ 素早さ

  29★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★

◇ 魔力

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  煌石剣こうせきけん連花戦闘衣れんかせんとうい

◇ 技   千刺連撃せんしれんげき、炎舞剣

◇ 魔術  火弾、火砲、火柱


◇ スゲチ ◇

◇ レベル 31

◇ HP   1933/1933

◇ 攻撃

  31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  33★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  25★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★

◇ 魔力

  17★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  聖鋼せいこうの槍、白鋼はっこうの鎧

◇ 技   輝乱気嵐撃きらんきらんげき嵐身乱心撃らんしんらんしんげき

◇ 魔術  氷弾、氷柱

      雷弾、雷砲


◇ シンモク ◇

◇ レベル 34

◇ HP   1693/1693

◇ 攻撃

  18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 防御

  19★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

  32★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

  ★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

  20★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  魔波集攻剣まはしゅうこうけん魔布戦闘着まふせんとうぎ

◇ 技   火炎剣、雷断剣、炎雷剣

◇ 魔術  火弾、火球

      雷弾、雷砲、雷刃

      光球、治療魔術


◇ アヅミナ ◇

◇ レベル 35

◇ HP   404/404

◇ 攻撃   1★

◇ 防御   2★★

◇ 素早さ

 40★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 47★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★

◇ 装備  大法力の魔杖、漆黒の術衣

◇ 魔術

  火弾、火矢、火球、火砲、火羅、火嵐、王火

  氷弾、氷矢、氷球、氷刃、氷柱、氷舞、王氷

  暗球、精神操作、五感鈍化、魔病感染、

  酷死魔術


◇◇ 敵ステータス ◇◇

◇ ホジタ ◇

◇ レベル 41

◇ HP   2056

◇ 攻撃  9★★★★★★★★★

◇ 防御

 31★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★

◇ 素早さ

 22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 魔力

 34★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  司魔杖しまじょう司魔衣しまい

◇ 魔術

氷弾、氷剣、氷槍、氷盾、氷壁、氷嵐、王氷

 岩弾、岩砲、王岩

  暗球、精神操作、五感鈍化、

  希薄暗球型精神操作、八射銅鑼暗黒演舞やしゃどらあんこくえんぶ



◇ セトイチ(ホジタの秘書) ◇

◇ レベル 31

◇ HP   1824

◇ 攻撃  6★★★★★★

◇ 防御

 24★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★

◇ 素早さ 16★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 35★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  炎石魔杖、八多羅守護衣やたらしゅごい

◇ 魔術  火弾、火球、火柱、火舞、王火

      雷弾、雷砲


◇ ナサエ(ホジタの秘書) ◇

◇ レベル 33

◇ HP   856

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御

 23★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★

◇ 素早さ

 18★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 38★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  氷石魔杖、八多羅守護衣やたらしゅごい

◇ 魔術  氷弾、氷球、氷槍、氷壁、氷嵐、王氷

      岩弾、岩砲、王岩


◇ モウミ(ホジタの秘書) ◇

◇ レベル 31

◇ HP   772

◇ 攻撃  5★★★★★★★★★

◇ 防御

 22★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★

◇ 素早さ 13★★★★★★★★★★★★★

◇ 魔力

 36★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

   ★★★★★★★★★★★★★★★★

◇ 装備  光石魔杖、八多羅守護衣やたらしゅごい

◇ 魔術  光球、治療魔術、再生魔術


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