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アルジ往戦記  作者: roak
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第10話 決行

店内に笑い声がいくつも響く。

ワノエ警備隊の宴は盛り上がっていた。

オオデンは胸を張る。


オオデン「こんなふうになったオレだが、

 今でも繋がっている警備隊員が何人かいる。

 副隊長だった頃、慕ってくれた部下たちだ。

 ノゴウもそんな1人…」

アルジ「そうか」

ノゴウ「カサナ家襲撃事件の日…

 あのとき、僕は未熟だった。

 警備に参加できなかった。

 オオデンさんに呼んでもらえず、

 警備隊の基地で待機していました。

 一緒に戦えなくて本当に悔しかった。

 でも、今となってはよかったと思ってる。

 こうして生き残ることができたから。

 オオデンさんのため、働けるわけだから」

アルジ「…そっか」

オオデン「カクノオウの居場所も

 ノゴウが突きとめてくれた」

ノゴウ「地道に聞き込みをして、

 それから、潜入調査もしたんです」

アルジ「潜入調査…。

 …てことは、カクノオウに会ったのか」

ノゴウ「会った」

エミカ「会って、どうした?魔術は見たのか?」

ノゴウ「見た。敵ながら見事な技だった」

アルジ「どんな技なんだ?」

ノゴウ「雷だ。キラッ!ドカンって!」

アルジ「キラッ…ドカン…か」

ノゴウ「剣を振り下ろすと、ドカンって!」

アルジ「どういう技かよく分からないな…」

オオデン「悪いな。

 ノゴウは情報を集めるのは得意だが、

 伝えるのがヘタクソなんだ」

ノゴウ「オオデンさん相変わらず厳しいなぁ」

エミカ「雷を発生させる…

 それだけでも相当強い魔力が必要だ」

アルジ「やっぱりただ者じゃないってことか」

エミカ「ああ。心してかからないとな」

ノゴウ「あと、歴史の知識がすごかった」

アルジ「歴史…?」

ノゴウ「そうだ。とにかくいろいろ知ってる。

 この人は教師なのかって思うくらいに」

アルジ「へえ…そうなのか…」

ノゴウ「あと、ナキ村の出身だとも言ってたな」

エミカ「ナキ村。アルジと同郷じゃないか」

アルジ「………」

オオデン「知り合いじゃないのか?アルジ」

アルジ「…どうかな」

ノゴウ「ナキ村で教師をしていた。

 そんな話も少しだけしていたな」

アルジ「………」

オオデン「ナキ村で教師…か。

 確かナキ村はナキ学校の1校だけ…。

 アルジも教わったんじゃないのか?」

アルジ「…どうだろう…な…」

ノゴウ「あとは…そうだ…

 弟子の1人がこっそり教えてくれた」

オオデン「何を?」

ノゴウ「本名です」

オオデン「カクノオウの本名か?」

ノゴウ「はい」

オオデン「なんて名前なんだ?」

アルジ「………」

ノゴウ「確かタラノスって言ってたな」

アルジ「!!!?…タラノス…!」

オオデン「タラノス…知らない名前だ」

エミカ「アルジ…?」

アルジ「…そんな…まさか…」

オオデン「おい、アルジ。どうした?

 さっきから顔色が悪いぞ」

エミカ「眠いのか?」

アルジ「………」

エミカ「確かにもう夜も遅いしな…」

ノゴウ「…で、決行はいつにしますか?

 オオデンさん」

オオデン「善は急げだ。明日にするか」

ノゴウ「分かりました」

エミカ「異議なし」

アルジ「………」

オオデン「おい、アルジ、お前は?」

アルジ「………」

オオデン「おい!」

アルジ「あ…え…?」

オオデン「明日でいいか!?」

アルジ「あ、ああ、ああ…」

オオデン「よし!!決まりだ!

 明日の朝、この食堂の前に集まろう」


アルジ、エミカ、オオデンは食堂を出る。

ノゴウは警備隊と食事を続けた。

もうすぐ日付が変わる。

町の明かりはほとんどが消えていた。

マノトノ食堂の近くに建つ小さな荒屋。

それが警備隊を追われたオオデンの家。


オオデン「またな」

エミカ「ああ。鍋料理よかった。ありがとう」

オオデン「戦いに勝ったらまたおごってやる」

エミカ「楽しみにしておこう」

アルジ「………」


アルジとエミカは近くの宿屋を探す。

アルジの足取りはふらふらしている。


エミカ「アルジ、さっきからどうした?」

アルジ「ああ…」

エミカ「腹が痛くなったのか?」

アルジ「そうじゃない」

エミカ「なら、どうしたんだ?」

アルジ「オレの先生なんだ」

エミカ「先生?」

アルジ「カクノオウだ。

 カクノオウは…オレの先生なんだ」

エミカ「…そうか」

アルジ「でも…3年前…先生はやられた。

 ヤマグマに食べられたはずなんだ」

エミカ「………」

アルジ「…なんで…今…」

エミカ「アルジ、考えても仕方ない。

 今日はもう寝よう」

アルジ「…ああ」


挿絵(By みてみん)


古くて小さな宿屋を見つける。

そこで2人は受付の手続をとる。

眠たそうな顔で受付係は帳簿に記録する。

そして、2人に鍵を1つずつ渡した。

細く短い廊下を歩く。

宿泊部屋の前で立ち止まる。

アルジとエミカの部屋は隣同士。


エミカ「それじゃあ、また明日」

アルジ「ああ…」

エミカ「明日の戦い頑張ろう」

アルジ「え…?明日?戦い?」

エミカ「………」

アルジ「エミカ、戦いって…」

エミカ「明日、戦うことになったんだ。

 カクノオウと」

アルジ「そうだったのか…!」

エミカ(かなり動揺しているな…)


エミカは部屋の鍵を開け、中へ入る。


エミカ「おやすみ」

アルジ「ああ、おやすみ」


アルジも部屋の鍵を開ける。

中に入ると、目の前に物入れと布団が並ぶ。

飾り気のない、狭い部屋だった。

アルジは寝支度を済ませると布団に潜る。

静かに目を閉じ、眠りに就いた。



◆◆ 翌朝 ◆◆

マノトノ食堂の前に集まるアルジたち。


オオデン「準備はいいな!」

エミカ「ああ」

ノゴウ「はい!」

アルジ「………」

オオデン「どうした?アルジ」

アルジ「1つ言っておきたい」

オオデン「なんだ」

アルジ「強盗団の指導者カクノオウ…。

 そいつは…オレの先生だった人だ」

オオデン「先生だと…?」

アルジ「ああ。

 ナキ村の出身で…教師で…歴史に詳しい。

 名前がタラノス。そうだ、間違いない」

オオデン「…だからなんだ?」

アルジ「自信がない」

オオデン「なんの自信だ」

アルジ「いざ対面したときに戦えるのか。

 ためらうことなく斬れるのか。

 その…自信がない…」

オオデン「おい!お前!今更何を言うんだ!

 決行は今日!これからだ!

 お前も今日やると言っただろうが!!」

エミカ「待て。アルジの話をもう少し聞こう」

オオデン「………」

アルジ「ナキ村は…小さな村だ。

 ほとんどが…多くの人たちが…

 自分にとって家族みたいなもので…

 タラノス先生も…そんな感じで…」

オオデン「…はぁー…」

アルジ「………」


オオデンは頭をガリガリかきむしる。


アルジ「オレの父親はレンガ職人で、

 工房にこもりっきりのことも結構あって、

 それで、学校ではタラノス先生とも

 よく遊んだり、話をしたりで、

 タラノス先生はもう1人の父親っていうか…

 オレにとっては…そういう感じの人で…

 そんな人を…オレは斬れるのかって…」

オオデン「甘ったれたことを抜かすな!」

アルジ「…!!」

オオデン「いいか…?殺人鬼なんだぞ?」

アルジ「………」

オオデン「あの日…オレは見た。この目で!

 見たんだ!やつが!なんのためらいもなく!

 次々と人を殺していくところを!

 オレの部下も!カサナ家の家族も!使用人も!

 そして!この!オレの!左腕を!やつは!

 やつはっ…!!だから!だから…!!!

 絶対に倒さなければならない相手だ!

 できないというなら!見ていろ!

 そうだ!お前は黙って見てればいい!

 お前が世話になった人だろうと!

 先生だろうと!オレには関係ない!

 とにかく!今日!オレは復讐する!

 そう決めたんだ!」

ノゴウ「そ…そうだ!」

アルジ&エミカ「………」

ノゴウ「カクノオウ…

 あいつは絶対に許されるべきじゃない!

 倒さなくちゃならない相手なんだ…!」

オオデン「そのとおり。行くぞ!!」

ノゴウ「はい!」


オオデンとノゴウは勢いよく歩き出す。

廃村ダブカに向かって。

力なくその場に立ち尽くすアルジ。

そんな彼にエミカが近寄る。


エミカ「なんて言ったらいいか…

 あまり気にするな」

アルジ「………」

エミカ「まずはカクノオウに会って、

 話してみるのもいいだろう」

アルジ「…ああ」


アルジはオオデンの後ろ姿をじっと見る。

そして、ゆっくりと歩き出す。

エミカも彼に続いて歩き出す。


アルジ「…オオデンの言うことも分かる」

エミカ「………」

アルジ「金のために多くの人を殺したなら、

 許されるべきじゃないと思う。

 だけど、どうしても分からないことがある。

 全部で3つ…どうしても分からないことが」

エミカ「それはなんだ?」



◇◇ ステータス ◇◇

◇ アルジ ◇

◇ レベル 4

◇ HP   145/145

◇ 攻撃  8★★★★★★★★

◇ 防御  4★★★★

◇ 素早さ 4★★★★

◇ 魔力  1★

◇ 装備  勇気の剣、革の鎧

◇ 技   円月斬り


◇ エミカ ◇

◇ レベル 4

◇ HP   127/127

◇ 攻撃  2★★

◇ 防御  2★★

◇ 素早さ 5★★★★★

◇ 魔力  7★★★★★★★

◇ 装備  術師の杖、術師の服

◇ 魔術  火球


◇ オオデン ◇

◇ レベル 10

◇ HP   336/336

◇ 攻撃  4★★★★

◇ 防御  4★★★★

◇ 素早さ 3★★★

◇ 魔力  2★★

◇ 装備  鉄の短剣、錆びた鎧


◇ ノゴウ ◇

◇ レベル 6

◇ HP   63/63

◇ 攻撃  3★★★

◇ 防御  2★★

◇ 素早さ 4★★★★

◇ 魔力  

◇ 装備  鉄の剣、鉄の鎧


◇ 持ち物 ◇

◇ 治療薬 9


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