第1話 秘宝
◇◇ マップ ◇◇
星が瞬く静かな夜。
そこは、小さな村の小さな広場。
集まった村人たちは儀式を見届ける。
1人の青年の旅立ちの儀式を。
人々の視線が注がれる中、託される1本の剣。
村の長から青年に。
青年の名は、アルジ。
特別な力を授かり、生を受ける。
走っても泳いでも戦っても村では負け知らず。
剣の名は、勇気の剣。
古より村に伝わる宝剣。
月の光を受けて青白く輝いている。
アルジ「よろしくな」
アルジは剣を天にかざす。
ずしりと伝わる重み。
村の長「星の秘宝を頼んだぞ」
アルジ「ああ、任せろ」
求めるは、星の秘宝。
星の秘宝とは何か。
なぜそれを求めるのか。
始まりは、3年前の事件。
◆◆ 3年前 ◆◆
小国クユの国、ナキ村。
そこがアルジの生まれ育った村。
よく晴れた穏やかな昼下がり。
アルジは村の広場で球蹴り遊びをしていた。
友達のトア、マサとともに。
アルジ「こっちだ!よこせ!」
トア「アルジ!」
トアがアルジに向かって球を蹴る。
マサ「させるか!」
マサがその球を奪おうと間に割って入ろうとする。
アルジ「はっ!」
アルジはマサに体当たりをした。
マサの体はふわりと宙を舞う。
芝生の上に叩きつけられ、のたうち回る。
マサ「いってー!」
アルジ「だ…大丈夫か?」
マサ「…ああ、相変わらず、すげー力だな」
アルジ「ワリイ!つい本気になっちまって…」
トア「今のお前ならクマも倒せるかもな」
アルジ「クマか。そうだな、剣があればやれる」
マサ「おい、本気かよ」
アルジ「本気だ」
トア「冗談で言ったんだけど」
アルジ「オレは本気だ」
トア&マサ「ははははは…」
アルジたちに近寄る3人の人物。
彼らは黒い衣服に身を包んでいる。
静かに歩いてやってくる。
真ん中の男「君たち、お楽しみのところ、悪いね」
アルジ「誰だ?」
真ん中の男「僕ら星の秘宝を求めて旅してるんだ」
アルジ「星の秘宝?」
トアもマサも声を出せず、固まっていた。
3人が発する異様な雰囲気に飲まれていた。
左の女「村長の居場所を教えてくれないかな」
アルジたちは一度、顔を見合う。
トアとマサは黙って首を横に振る。
アルジ「村長になんの用だ?」
左の女「君たちには関係ない」
右の男「教えないなら死んでもらうぞ」
アルジ「あ?なんだと?」
アルジは拳を握り、身構える。
遠くから大きな声。
???「やめろ!」
叫んだのは、タラノス。
タラノスは学校の教師。
ナキ村唯一の学校、ナキ学校。
彼はそこで生徒たちに授業をしている。
体力自慢の教師。
だが、格闘技の実習では先月アルジに敗れた。
アルジたちのところへ駆けてくる。
タラノス「私の生徒が失礼しました」
真ん中の男「村長に会わせてくれないか?」
タラノス「村長ですね?分かりました」
タラノスは3人を案内する。
取り残されるアルジたち。
マサ「なんなんだ。あいつら」
トア「タラノス先生の様子おかしいぜ。
悪い予感がする」
アルジ「あとをつけよう」
距離を置き、こっそり追いかける。
タラノスと3人の来訪者は村長の家へ入った。
しばらくしてタラノスが1人で出てくる。
木陰から見ていたアルジたちが駆け寄る。
タラノス「なんだ、お前ら来てたのか」
アルジ「先生、誰なんですか。あいつらは」
タラノス「偉い魔術師様だ」
トア「魔術師?」
タラノス「ああ、あの衣装は…
『北土の魔術師』と呼ばれる方々のものだ」
マサ「聞いたことあるかも」
タラノス「この前学校で教えただろ。
いいか、彼らに逆らっちゃいけないよ。
魔術を使われたら太刀打ちできないんだから。
こてんぱんにやられておしまいだ」
アルジ「だけど、先生!」
タラノス「だけどじゃない。とにかく危険なんだ。
アルジ、特にお前は殴りかかろうとしただろ。
本当に危ないところだった」
3人が村長の家から出てきた。
アルジたちには目もくれない。
次の目的地に向かって歩き出す。
アルジは村長の家へ走る。
トアとマサが追いかける。
タラノスは大きなため息をつく。
タラノス「やれやれ…」
◆ 村長の家 ◆
アルジ「村長!」
村長「おお、アルジか」
アルジ「さっきのあいつら、なんだったんですか!」
村長「うむ」
黙り込む村長。
アルジ「村長!」
トア「村長!」
マサ「村長!なんか言ってよ!」
村長「まあ、大きな声を出すな」
アルジ「あいつら魔術師だと聞きました。
魔術師がナキ村へ何しに来たんですか」
村長「…相談事だ。いや、頼み事というのかな」
トア「何を頼まれたんですか?」
村長「ある物を渡してほしいと」
マサ「ある物。ある物ってなんですか?」
村長「村に伝わる宝。『安定の玉』というものだ」
アルジ「安定の玉。初めて聞いたな。そんな宝」
村長「学校で習っているはずだが…。説明しよう。
このナキ村というのは不安定な場所にある。
崖崩れや洪水がよく起こったと歴史書にはある。
その不安定な土地を安定させるため、
作られたのが安定の玉というわけだ。
とてもとても不思議な強い力が込められておる。
そのおかげでこの村は安定が保たれているのだ。
それが、昔からの言い伝えだ」
アルジ「大事な玉なんだな!」
トア「なくなったら大変なわけだ」
マサ「それなら魔術師なんかに渡せないね」
村長「いや、渡した」
アルジ「渡したんかい!」
村長「まあ、そうやっていきり立つな」
トア「安定の玉がなくなってどうするんですか?
ナキ村はどうなるんですか?」
村長「心配ない。言い伝えは言い伝え。
どこまで本当かは分からん。
それに渡すしかなかった。あいつら脅してきた。
渡さないなら村人を全員殺す…とな。
従うしかなかった。みんなの命を守るために」
アルジ「村長…」
突然、大きな地鳴りの音。
アルジたちは驚いて顔を見合う。
そして、急いで外へ出る。
タラノスが立っていた。
タラノス「今の地鳴り聞こえましたよね。
ゼゼ山からです」
村長「ふむ…」
マサ「安定の玉だ!玉を魔術師に渡したからだ!」
村長「いや、まだ分からん」
トア「そうだ、マサ。これは偶然かもしれない」
アルジ「それはどうかな?」
トア「………」
タラノス「安定の玉。星の秘宝と呼ばれるものの
1つですよね。村長の家に保管されている…」
マサ「先生!村長は…それを魔術師に渡したんだ!
だから、さっき崖崩れが起きたんだ!
村長は村が滅びてもいいと思ってるんだ!」
アルジ「そうだ…。絶対に渡しちゃならなかった。
安定の玉は戦ってでも守るべきだったんだ」
マサ「村長はバカだ!!」
村長「……くっ!」
タラノス「バカ野郎はお前らだ!」
黙り込むアルジとマサ。
タラノス「状況はまだ分からない。
確かめる必要がある。安定の玉を失ったこと。
このことが、さっきの地鳴りにつながったのか」
アルジ「なら、どうする?」
タラノス「見に行こうじゃないか。
お前たちは無理して来なくてもいいが…」
アルジ「オレは行く」
トア「オレも」
マサ「………」
村長「私は家にいよう」
マサ「玉を渡したくせに!」
村長「…マサよ。私をバカ呼ばわりするのは構わん。
だが、口先だけでなく行動も見せてくれ」
マサ「くっ…分かった…。オレも行くよ」
タラノス「決まりだな」
村長「タラノスよ。生徒が危険なときは頼むぞ」
タラノス「もちろん。では、行ってまいります」
アルジたちは村の小さな武具屋へ行く。
そこで適当に装備を整えた。
ゼゼ山へ向けて出発する。
◇◇ ステータス ◇◇
◇ アルジ ◇
◇ レベル 1
◇ HP 60/60
◇ 攻撃 3★★★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ 2★★
◇ 魔力
◇ 装備 木の剣、革の鎧
◇ トア ◇
◇ レベル 1
◇ HP 47/47
◇ 攻撃 2★★
◇ 防御 1★
◇ 素早さ 1★
◇ 魔力
◇ 装備 木の剣、革の鎧
◇ マサ ◇
◇ レベル 1
◇ HP 53/53
◇ 攻撃 1★
◇ 防御 2★★
◇ 素早さ 1★
◇ 魔力
◇ 装備 木の剣、革の鎧
◇ タラノス ◇
◇ レベル 8
◇ HP 172/172
◇ 攻撃 4★★★★
◇ 防御 3★★★
◇ 素早さ 4★★★★
◇ 魔力 1★
◇ 装備 鉄の剣、銅の鎧
◇ 持ち物 ◇
◇ 治療薬9