表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フラグブレイカー  作者: 秋風 赤空
1/7

俺のスキルは異世界人に理解されなそう。

<フラグとは?>

 何らかの伏線や前触れ、見込みといった意味で使われる。


***


 最近よくある話。

 トラックに轢かれそうな子猫がいたから、気が付いたらその子猫を助けようと飛び出していた。理由なんていうのは行動してからの後付けで、最近はやりたいこともやりつくして、このまま緩やかに時間が過ぎて死んでいくことが嫌になったとか、重度の猫アレルギーなんて関係ないくらいの猫好きだからとか、正直どうでもいい。


 結果的に俺はよくある中世ヨーロッパを意識した異世界に転移した。


***


「……またこのスキルにゃ、もう詰んだにゃ、最初からクライマックスにゃ」


 異世界あるあるの真っ白な神殿の広間で、スキルを授与してくれるポジションの二足歩行できる子猫、正確には猫の神、ケットシーは、その小さな肉球二つで頭を抱えている。

 その光景を重度の猫アレルギーの俺ことハタ 免人メントは、可愛いなぁと思いながらも、止まらない鼻水と痒い目を擦りながら眺めていた、そしてケットシーは続ける。


 「いや、まだワンチャンあるにゃ、僕は猫だけどワンチャンあるにゃ!」


 そろそろ独り言は終わるのかなぁと思ったところでケットシーの目がコバルトブルーの輝きを放ち、俺の方を見る。そして一言。


 「…………毒て」


 そうポツリと呟いた後に静寂が空間を包み始めたところで。


 「ごめん、そろそろ説明してくれない?」


 鏡を見なくても目が真っ赤なんだろうなぁと思いながら、俺は白いローブを羽織った二足歩行の猫、ケットシーに質問した。


***


 「まず、別世界からの転移者がこちらの世界に来た際に授けられる特別なスキルがあるにゃ、それが君の場合は『フラグブレイカー』というスキルにゃんだけど、これが僕達の世界ではよくわからないのにゃ」


 「というと?」


 「発動条件、性質の詳細がわかんにゃい。逆転もしくは反転に近いものかにゃとは思うんだけど、どのタイミングで発動するかがわからにゃい、例えば過去の転移者のように、万物切断のスキルが発現した転移者には治癒者ヒーラー盾役タンクの仲間をサポートにつければ攻撃面は何とかにゃる、けどこのスキルを最初に発現した転移者はこっちの世界にきた翌日に亡くなったにゃ。二人目の発現者は仲間はいらないと言って、一か月で消息不明になったにゃ、だからもう訳わかんにゃいのにゃ」


 「なるほど、じゃあさっき言ってたワンチャンがどうとかいうのは?」


 「スキルとは別に個人が使える魔法の属性のことにゃ、基本的にこの世界は一人1属性の魔法を使うことができるにゃ、これが過去に魔王討伐に成功した転移者、即ち勇者と同じ光属性であればワンチャンあったにゃ、けど君は毒属性にゃ、勇者というより暗殺者向けにゃ」


 「……おおう」


 毒属性かぁ……というのが正直な感想だった。

 その後ケットシーは『チュートリアル的なあれにゃ』と言って、色々なことを教えてくれた。

 

 1,魔王が復活し、それを倒すことで元の世界に戻れること。


 2,魔王が復活してから魔王軍は徐々に勢力を拡大し、今や世界の約8割が魔王軍の領土になっ    ていること。


 3,魔王軍の領土の広さに比例して魔王の力が増す性質があり、地図上で極西に位置する大陸に    ある魔王城を極東にある街から西へ向かいつつ魔王軍を倒し、領土を解放して弱体化させる    必要があること。


 ちなみに魔王城から離れれば離れるほど魔物は弱くなるらしい。

 なのでRPGでいう始まりの町が極東の町であり、地球でいうなら日本から西周りでブラジルを目指すような感じだ。 


 とりあえずケットシーは真っ赤になった俺の目を見て、俺の重度の猫アレルギーを察知したのか最初の街に魔法で送ってくれた。そして最小限の装備、ナイフや魔法の収納袋、そして半年は生活できるお金をくれた。


 これがRPGに出てくる王様なら、魔王を討伐しろという癖に特に何かをくれるわけではないパターンが結構あるので、待遇は良いほうだと思う。

 更にケットシーは「ピンチの時に一回だけ助けてやるにゃ、何度も助けるつもりはにゃいから、勘違いするにゃよ」と言っていた、ツンデレかな?


<異世界生活 一日目>

 最初の街とはいっても、最初の街ファンダリアは栄えていた。

 インフラは整っているし、武器屋にいけば金属製の剣や槍、鎧も売っていたし、お金持ち向けなのか高価な武器には丁寧な装飾が施されていた。

 街の東側に行けば港があって、漁師が船から降ろした魚を手早く運んで、そのまま港にある露店で売っている所もあった。

 意外なのは図書館があったことだ。

 必要最低限の衣食住。食欲と睡眠欲以外にも知識欲を満たす場があるのは豊かさに他ならないと思う。最初は異世界だから文字が読めるか心配だったけど、普通に日本語というか異世界の文字の上に日本語が浮かび上がって読めるし、自分が話した言葉が自動で異世界言語に訳されて通じるみたいで、これはたぶんケットシーさんのおかげだ。というかこの世界でスムーズに生活できるのは全部ケットシーさんのおかげだ、そういっとけばいいと思う。

 ちなみにお金、通貨の単位はマニーだった。

 100マニーでリンゴ一つ買えたので、元にいた世界と金銭感覚は大体同じ感じだと思う、これも全部ケットシーさんのおかげだ。

 リンゴを買うついでに果物屋の主人にこの街でオススメの宿屋を聞き、その宿屋の店主に2週間分のお金を前払いするからもう少し安くしてと値切り、交渉成立。これも全部ケットシーさんのおかげだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ