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強制召喚も悪くない  作者: かなちょろ


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第7話 剣術修行も悪くない

 魔王軍のカーブに太刀打ちできなかった俺はライムス、シャム、ラミュ、ベリーにお願いし、実戦形式の剣術修行が始まった。

 場所は森の中、障害物を避けながら攻撃を躱す訓練だ。


 まずはライムスとラミュが先陣をきって突撃してくる。

 ライムスの剣は腕で受け止めるが、動きが止まった所をラミュに吹っ飛ばされる。

 木を二、三本薙ぎ倒し、転がり大勢を立て直した所にベリーの火球が直撃する。


「そこまでじゃ」


 通常なら致命傷になる。

 そんな一撃をもらったら終了だ。


「おぬし本当によわいのぅ」

「剣児様も頑張っています」


 エルンは擁護してくれているけど情けない……。


「頑張るのは勝手じゃが、結果が出なくてはの」


 確かにそうだ。


「もう一回頼む!」


 ライムス達の布陣はさっきと同じ。

 違ったのはラミュが先に出てきた事だ。

 ラミュの右ストレートをガードする……が、すかさず左足の蹴りが頭を目掛けて飛んでくる。


 引いてかわそうとしたが、ラミュが袖を掴んで動けない。

 袖を破ってしゃがんでかわしたが、上段に蹴った足が落ちて来る。

 両腕でガードをし、立ち上がる力でラミュを弾こうとするとラミュの右足でのサマーソルトが俺の顎をかすめる。

崩れた体制を立て直すと、シャムのナイフが俺の首元に突きつけられていた。


 修行を始めて2週間、一日に召喚できる回数をフルに使って訓練をしてきた。

 だいぶ動けるようにはなってきたんじゃないかな。

 ……と、思う……。


 休憩で一息ついていると、ライムスが隣に座って話しを始めた。


「なぁ、剣児、私の弟について聞きたいんじゃない?」

「まあ……な」


 聞いて良いのかわからず、聞かないようにしてた。


「私と弟は幼い頃に生き別れたのさ」

「生き別れに?」

「私達の町もベリーと一緒で魔物の軍勢に襲われて……その時に離れ離れになってしまってな。 私は賞金稼ぎになって弟を探していたけど、結局見つからなくて」

 

 ライムスの剣技はその時に覚えたと言う。


「前に魔物相手にドジ踏んで、瀕死で倒れていた所をエルン様に救われたのさ」


 ライムスは空を見上げながら話を続ける。


「エルン様に助けて頂いた恩を返すため、王様にエルン様の護衛に就かせて欲しいとお願いをして今こうしてお供させてもらっているわけ」

「ライムスの弟はカーブで間違いないのか?」

「間違い無い。 死んだと思っていたから……生きていてくれて……」

 

 ライムスの声がうわずっている。


「だから絶対助けたい! 剣児!協力してくれ!」

「もちろんだ」

「ありがとう」

 

 その後軽く話をして俺は部屋に戻ってきた。


 俺も由衣がいなくなったら死に物狂いで探すだろうな……。

 そんな事を思いながらベッドの上でぶつぶつ独り言を言っていた。


「私がなーに?」

「うわっ!」

「驚く事ないじゃん!」

 

 ポカポカと背中を叩いて来る。


「由衣も力強くなったな。 これなら魔物も一撃だ!」

 

 ちょっとからかってみた。


「ひどーい! お兄ちゃんもう知らない!」

 

 むくれてドアを強めに閉めて部屋から出て行く。

 うん、やっぱり俺の妹は可愛い。

 そんな想いを馳せながら夏休みの宿題に追われるのだった…。


 数日後の朝、由衣と一緒にエルンに召喚された。

 場所はいつもの石造りの場所。


「剣児様」

「お兄様」

「ほっほ、よく来たよく来た」

「何かあったのか?」

「いえ、ロニア様に召喚する様に言われまして」

「さて、始めるかの」

 

 そう言うとロニアさんの隣に転移魔法が発動する。


「やっとか!待ってたぜ!」

 

 転移魔法陣から出てきたのはカーブ。


「な!」

「「え!」」

 

 皆んなが驚く。

 出てくるなりカーブは襲い掛かってきた。

 それに反応したのはライムス。

 カーブの剣を上手く受け流し、ラミュが攻撃する。


「え? え?」

 

 1番驚いているのはベリー。

 それはそうだろう。

 自分の育ての親であり、師匠が敵のカーブを召喚してきたのだから。


「なんで? 師匠がなんで? え?」


 もう何が何やらわからない状態だ。


「まだわからんとは愚かな弟子よ」

「どう言う事だ!」

「わしは元より魔王軍なのだよ」

「え!? そんな……、……嘘で……す……よね? 師匠……?」

 

 ベリーはガタガタと震え、その場にへたり込んでしまう。


「ベリー!」


 エルンが駆け寄りベリーを抱き締める。


「あなたはベリーの親ではないのですか!?」

「全ては研究のためじゃよ。 このゴジブルーの町を襲わせたのも、そこの犬の親を殺したのもな」

「うそだうそだうそだうそだ……これは夢、夢、そう夢……早く目を覚まさないと……早く……早……く……」

 

 ベリーはエルンの腕の中でガクッと気絶してしまう。


「この娘はわしの研究のために良くやってくれたよ。世界樹の戦士を召喚し、宝珠を増やし、2人も召喚するイレギュラーな事もやってのけたのだからの」

 

 ロニアは高笑いを上げながらベリーを見つめる。


「あなたって人は……」


 エルンはベリーを強く抱き締める。


「やっぱり……あなたですか!」

 

 カーブとの戦いで、全身を血まみれにしながらラミュがロニアに突進して行く。

 ロニアはラミュの攻撃を軽くかわすと、腕を取ってラミュを軽々と投げつける。

 壁がめり込む程に投げられたラミュは体を上げる事が出来ないが、ロニアを見上げて睨む。


「ベリーさんの親だったから黙っていたけど、ベリーさんにこんな……、……こんなひどい事が出来るなんて……」

「この娘は子でも無ければ、弟子でもない! わしの研究道具じゃよ」


「貴様!」

 

 流石の俺も黙ってはいられない。

 すぐさま剣で斬りかかる。


「ほっほっほ。 少しは鍛えたかいがあるの」

「貴様が魔王軍ならなんで俺を鍛えた?!」

「研究じゃよ。 世界樹の戦士はどこまで強くなれるのかとな」

「なんだと!」

「う……し、師匠……」

 

 目を覚ましたベリーが、エルンの腕からロニアに向かって歩き出す。


「ベリー! 行っては駄目!」

 

 エルンはベリーを捕まえに向かうが、間にシャムがカーブによって飛ばされてくる。


「くっ! 強い」

 

 シャムもライムスも傷だらけだ。


「師匠……これもただの研究ですよね? 私頑張るからもう皆んなを傷つけないで……」

 

 足取りがおぼつかず、フラフラとロニアに歩み寄っている。


「うむ、一つ良い事を教えてやろう」


 その言葉にベリーは笑みを浮かべる。


「宝珠と一緒に渡した古文書の写しは全て嘘じゃ! 無敵なわけあるまいて……本当はドラゴンの力を少し上回るだけに過ぎん。 お前に託したのは嘘の解読書じゃよ」

「!!!」

 

ベリーの目から涙が溢れて、声の無い泣き顔となる。


 パシーン!!


 ベリーの頬にロニアの平手打ちが入り、ベリーは俺の前に飛ばされる。


「ベリー!!」

「お兄……様……、……ごめん……な……さ……」


 そのまま気絶してしまった。


 怒りに我を忘れた俺は、ベリーをその場に寝かせ、ロニアに突っ込む。

 学んだ事などどうでも良い。

 こいつに一太刀でも浴びせないと気がすまねぇ!


「お前の相手は俺だ!」

 

 そこに割り込んできたのはカーブ。


「邪魔だぁ!」

 

 力と速さでカーブを押すが、カーブの剣技にはがむしゃらでは敵わない……だか、ライムスもシャムもラミュも力を貸してくれる。

 4人対1でもカーブに一撃を与えられない。

 4人共カーブに一撃与える事に集中しすぎてロニアが見えていなかった。

 ロニアは俺の背後から手を伸ばすと肩に触れる。


「危ない!お兄ちゃん!!」


 エルンとベリーの近くで2人を守っていた由衣はロニアの行動にいち早く気がついていた。

 由衣は俺を押し出すと、ロニアの何かが由衣に炸裂する。

 由衣には俺と同じく魔法は効かない。

 だが、次の瞬間、由衣の体は崩れ落ちた。


「由衣!!」

「……くぅ……大丈夫、大丈夫だよ」

 

 明らかに息が上がっている。

 魔法は効かないのになんでだ?

 傷がついてる跡もないし、服だって破れてない。


「くああぁぁぁ!!」

 

 突然由衣が苦しみ出す。


「貴様! 由衣になにをした!」

「邪魔が入ったが、これはこれで面白い。 なに、簡単な事じゃよ。 おぬしの腕にもあるじゃろ?」


 腕にあるのは召喚の合図がわかるための印。


「まさか!」

「そう、呪いじゃよ。 わしの道具が良く発見したものじゃ。本当ならおぬしに呪いを着けてどの位で死ぬか研究したかったのじゃが、これはこれでかまわんな」

「きっっ! さまあぁぁ!!」


 ロニアに飛びかかるも、カーブに阻まれてしまう。


「わしにかまっていて良いのか? その呪いは生命力を激痛と共に奪い、一日で死に至る呪いじゃぞ」

「うわあああああ!!」

 

 由衣の叫びがさっきより酷くなった。

 痛みが増している。


「エルン! ベリー! 誰でもいいから由衣を助けてくれ!」

 

 すかさずエルンが駆け寄って、癒しの魔法をかけてくれる。


「ああああ!!」

 

 由衣の呪いはエルンの魔法でも効果がないのか!?


「ふぉっふぉっ! いい響きじゃ。 これが研究と言うやつじゃよ。 わしの呪いを解きたければわしを殺す事じゃな」


 ロニアに斬りかかった所で俺の部屋のベットに戻ってきた。


「うう……痛い……痛いよ……お兄ちゃん……」

 

 戻ってきたのに由衣の痛みが引かない。

 召喚の合図と同じで体の一部となっているから戻ってきても呪いが解けないのか!?

 由衣の手を握り、必死に励ます。


「大丈夫だ! お兄ちゃんが絶対何とかしてやる!」


 励ましが効いたわけでは無いが、若干だが由衣の痛みが引いたようでさっきまでの苦しさは無いようだ。

 早くロニアを倒さないと!

 その気持ちで一杯だった。

 少しの時間が経ち、召喚された時にはロニアやカーブの姿は無く、ラミュとライムスの姿も無い。

 召喚したのはシャム。


「剣児! ロニアは鏡面の塔と言う所に逃げた。 今ラミュとライムスが追っている。 私もすぐ行くけど、剣児はエルン様を見てて」


 エルンは苦しそうにしているが、祈りの姿勢を崩さない。


「剣児様……私の力でなんとか由衣さんの呪いを抑えてますから……早くロニアを倒して下さい」

「ほんとか! ありがとう! もちろんすぐ倒してくるからな!」

「ロニアの前に着いたらラミュに召喚させるから、エルン様と由衣を頼むよ」

 

 そう言ってシャムは飛び出して行く。

 由衣の痛みが少し引いたように見えたのはエルンのおかげか。

 ベリーは気を失ったまま、エルンは由衣のために祈っている、シャム、ライムス、ラミュは由衣の呪いを解くためにロニアのもとへ急いでいる。

 だけど既にエルン、シャムが宝珠を使ってしまっている。

 ベリーは気を失っているので、召喚できるのは後一度だけ。

 その10分でロニアを絶対倒す!

 戻ってきた俺は由衣について、親には由衣が俺のベッドで寝てしまってと嘘をついておいた。


「お……にい……ちゃん……」

「由衣!」


 俺は由衣の手を握りしめ、エルンが由衣の呪いを和らげている事を伝えた。


「さすが……エルン……様だ、ね…。 おに…い……ちゃんが……、……好き、に……なるのも…わかる……よ」

「喋らなくていい! お兄ちゃんが着いててやるから!」

「う……ん」

 

 由衣の手を強く握るとそれに安心したのか、眠りにつく。


 再び召喚されたのはロニアの前ではなく、塔の途中、階段を登っている所だ。


「ごめんなさい剣児さん。 魔物の数が多すぎて! 今シャムさんとライムスさんが魔物が登って追ってこないように入り口で戦ってます!」

「2人が! 大丈夫なのか?!」

「本来なら私の方が適任でしたが、剣児さんを呼べるのが私しかいないので、おふた方が戦ってくれています!」

 

 2人の事も心配だが、今はロニアをいち早く倒さないと!


「わかった! 一気に駆け抜けよう!」

「最上階まで後少しです!」

 

 大量にいる魔物を倒す必要はないので、とにかく進んだ。


 最上階への階段を駆け上がっていると、階段を登ってくる魔物にラミュが突撃して行く。


「私がここを抑えます! 剣児さんは早くロニアの元へ!」

 

 最上階に着いた時には既に残り時間が5分を切っている。


「ふぉっふぉっ。 良く辿りついたの」

「ごちゃごちゃ言ってる暇はねーんだ!」

 

 すぐさま俺はロニアに向かって飛びかかる。

 だが、俺の攻撃は易々とかわされてしまう。


「ほれほれ、早く倒さんと時間がないぞい」

「ちっ!」


 ロニアの強さ、迫る時間、焦りから俺の剣は乱れまくっている。


「そういえば、わしの呪いをあの姫さまが肩代わりしているようじゃが、時間の問題じゃな」

「エルンが肩代わりだと!」

「おそらく聖なる祈りの力じゃろうな。厄介な存在じゃったから国ごと滅ぼしたのだが、運良く生き延びとるとはの……運の良い」

「エルンの国を滅ぼしたのもお前か!!」

「当然じゃ。世界樹の力を授かっている者は魔王に滅ぼせと言われておるからの」


 俺の攻撃は空を切り、ロニアは躱しながら話しかけてくる。


「おぬしの時間もそろそろ切れる頃じゃ。 姫さんも呪いの激痛によう耐えとるが、こちらも時間の問題じゃな」


 くそ! 時間が無いのに! 剣が届かない!

 その時、一本のナイフがロニアの腕に刺さる。


「なに! ……しまっ!」

 

 一瞬動きが止まった所を俺の剣が首を斬り飛ばす!


「やった……」


 後ろを振り向くと、ラミュがシャムとライムスに肩をかしている。

 3人ともボロボロになりながらも笑顔を向けてくれる。


「ありがと……」

「はーっはっは!!」

 

 お礼の言葉を言う前に、斬った首が浮かび上がり話始めた。


「残念じゃったのう。 わしは死んどらんぞ」

「な!」

「ここは鏡面の塔。 地上部分は鏡に写った偽物じゃ」

「そんな」

「嘘だろ」

「なんだと」

「良い、良いぞ! その絶望の顔、もう何もかも間に合わないと悟った顔、実に良い」

 

 笑い声が消えると残ったのは首を切られた魔物の姿だった……。

 由衣の前に戻ってきた俺はもうどうして良いか分からず、ただただ手を握って祈るのみだった……。

読んでいただいてありがとうございます。

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