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第7話 デッドオブチャンバラ!?

「ぬおおおおおお……」

「ど、どうしたの蝉沢君……?」

「実力テスト……クラス内15位……素直に喜びにくいんだよこんちくしょうがぁ!」


 4月も下旬に入った頃、僕らの学校では恒例となっている実力テストの結果が廊下に貼り出されていた。僕と蝉沢君は朝からその結果を二人で確かめに行ったんだけど……蝉沢君は結果に納得がいかずに膝から崩れ落ちて右手で作った拳を叩きつけていた。


「まぁまぁ、僕の19位に比べたらいい方じゃん……ほら、元気だしてよ」

「お前もお前でまたしてもド真ん中記録更新してるな……ってそうじゃねぇんだわ。俺これでも徹夜2日重ねたんだぞ!それでこのザマかよ!」


 いつもと違って声に勢いがない辺り、相当悔しかったんだろうな……と思いつつ、ふと涼葉さんの成績が気になったので見てみた。


「涼葉さん……凄いなぁ、また1位だよ」

「天川さんはあの性格でそこまで勉強出来ちゃう人種なんだよ、きっと……」

「よし、僕も夏の2回目に向けて……頑張るぞ!次は……僕も10位くらいには入りたいな。蝉沢君も一緒に頑張ろうよ、ね?」

「おう……そうだな……」



―その頃、異空間では青年に化けたラダマンティスが映像越しに見ていた学生と同じ服装を纏って何かの準備を整えていた。


「そんなガチガチに準備なんてして、一体何を始めるつもりだ……ラダマンティス」

「見ての通り、私は今日からしばらく学生として人間社会へとけ込み、そこで駒集めに回ります。貴方もどうですか、ミノス」

「お断りだ……んな事するくらいなら戦いに明け暮れる方が何倍もマシだぜ」

「そうですか。では、私はしばらくこちらへは戻りません故、アイアコスとは上手くやるようにお願いしますよ……」

「せいぜい面倒事にはしねぇよ……行くならさっさと行っちまえ」


 ラダマンティスと同じく青年に化けたミノスは未だに痛む左肩に手を置きながらラダマンティスと少し言葉を交わすと、自室へ向かって足早に去っていった。そしてラダマンティスも鞄の中にギアを入れると自身の影を経由して人間界へ向かうのだった。



「あぁ……何か暑くね、今日」

「そうだね……まだ4月だっていうのに何でこんなに暑いのかなぁ……」


 僕と蝉沢君は教室の一角で購買で買ったばかりの冷たいゼリーを飲みながらやたら暑い事に対して不満を溢していた。


「一番先に思い付く理由として……この辺お見事なまでに自然ってものが存在しないよな?多分それだ……」

「うん……緑が無いから日光がアスファルトを経由して僕らに来るから余計ね……」


 4月……しかも衣替え週間まではまだ数日ある中でこれはとてもじゃないけどキツい……幸い、下着を通気性のいいものにしてるからまだベタつかないだけマシだけど……


「ん?何か武道場側が騒がしいな……こないだみたいな事になってないといいけど……っておい、夏輝!?」

「ごめん……焼きそばパン奢ってくれてありがとう!この埋め合わせはいつかするよ!」


 実は今朝の時点で既にこうなるって分かってたんだよね……僕が今年に入ってやたら見るようになった“未来で起きる出来事を模した夢”を見たから。


 僕はその夢が現実になる前に手に入れた力……ペルセウスになる力を使って少しでも最悪の未来を回避させるべく、武道場の方へ急いだ。



『ムムッ、こんな所へ人間が来るとは……舐められたものだな……』

「また学校で騒ぎを起こすつもりなら……僕が止める!トランスオペレーション·ペルセウス!」


 僕は武道場でトカゲのような姿をしたヴァイラスを見つけるとすぐに互いに言葉をぶつけ合った後、変身してブレードを展開して構えた。


『拙者、コルヴォと申す……』

 コルヴォ……って確か春の星座の……からす座じゃなかったっけ?


『ふむ、貴殿は鎧を纏うという件の少年か。良かろう……我が漆黒の刃、とくと味わうがいい』

「学校の皆に手出しはさせない……バスターフィールド、展開!」

 僕はひとまず事が大きくなるのを防ぐべく、この間タカヒロさんに教わったバスターフィールドの中にコルヴォと名乗ったヴァイラスを閉じ込めた。


『こうまでして拙者と一対一の真剣勝負をお望みとは……酔狂な男だな』

「酔狂だって……冗談じゃない!僕はただ、何も関係のない人達を自分達の戦いに巻き込みたくないだけだ!」

 僕はコルヴォが放った言葉に強く反論しながらブレードで斬りかかった……が、コルヴォはそれを瞬時に引き抜いた二本の黒い刀で完璧に防いでいた。


『勢いが良くとも踏み込みが甘ければどのような技も技では無くなる……悲しいな』

「何をっ……!」

『貴殿の攻撃は拙者には届かんと言っている!』

「がっ……!」

 か、簡単に跳ね返された……!どう見てもこれだけの力を加えればあっさり折れてもおかしくない刀身で……何でこんな芸当が!?


『貴殿よ、か弱き者を助ける為に戦う事の重さを考えた事はあるか?』

「なっ……それは……」

『ただその場から逃し、己が肉壁になっただけでは助けたうちにはならん……ならばその者はどうするべきか……分かるか?』

「……相手と全力で打ち合う。その上で……勝つ!」

『……っ!そうか……そういう答えもあるのか。貴殿の雰囲気とは限りなく無縁に近い返答だが、案外貴殿の志は高く、気持ちも雰囲気という壁に阻まれているだけで熱い何かを持っているのだろう……』

 さっきから妙な事ばかり話しているのに……僕の攻撃を片手間で止めるなんて……もしかしてコルヴォは……この間の奴と同じ、上級ヴァイラスなのか……!?


「僕からも一つ聞きたい……君達は一体何者で……何の為に僕達の日常を脅かすような真似をするんだ!」

『まだ勝者にすらなれぬ貴殿に開く口はない!』

「くっ……!」

 コルヴォの防御は依然として崩れる気配がない……そればかりか、さっきからずっと攻撃してる側の僕がダメージを負ってる……このまま目的を聞き出せずに終わるなんて……そんなの絶対に嫌だ……!


『つまらぬ剣戟芝居はここまでにしよう……拙者とて暇では無いのだ……塵同然に刻まれるがいい!』

「つまらないだって……?戦いにそんなものを持ち込むなぁぁああ!」

『なっ……!?この反応速度……なるほど、攻撃こそまだ凡人の域を出ない身でありながら、身の熟しに限れば戦士という事か』

 僕は自分でも驚く程に早く反応が出来た事でコルヴォが繰り出す攻撃を全て避けていた。馬鹿にされて頭に血が上っていてもおかしくないこの状況下で……何が起きたんだろう?


(な、何故だ……何故決まらない!?何が青年をここまで動かしているんだ……!?)

「今なら行ける……今度はこっちからも行くぞ!」

 僕は回避を中断しながらブレードを再展開するとそのままの勢いを活かしつつさっきよりも鋭く相手へ斬り込んだ。すると、防がれてはいたがさっきと違って防ぐ度に少しずつ後ろへ下がっていた。


(もしやこの青年……拙者の主と同じ力を持っているのか……)

「せやぁぁぁぁぁああっ!」

『ぬぅっ……ぐっ……ば、馬鹿な……先程よりも殺気が濃くなったばかりか、目の感じも変わっている……だと!?それにこれ以上防いでしまえば……かえってこちらが不利になるか……!』

(このままでは……間もなく押し切られてしまう……そうなればここへ拙者を導いてくれたラダマンティス様にあわす顔がない……!)

「おおおおっ……!」

 あと少しでコルヴォの防御を崩せる……そう思っていた矢先、僕は突然真上から全身に大きな重りを載せられたような感覚に襲われ、追って耳鳴りが始まると、そのままコルヴォの真横を横切る形で倒れてしまった。

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