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第6話 互いの秘密、共有して前進

「せやぁぁあっ!」

『ウラァァァア!』


 相手の大斧と僕のブレードが激しくぶつかる。その中で火花が散り、そして相手の力の強さに負けて圧されていた……


『オラァァア……どうした……その見た目はただのお飾りか?もっと……もっと俺を滾らせろぉおおお!』

「がっ……」


 なんて力だ……このままじゃいつか押し返されるどころじゃ済まされない……けど、僕がここで負けたりしたら……サテライザーの発表会の時とは比べ物にならない程被害が出る……!


『Hey、夏輝……だいぶ苦労しているみたいだね。ま、無理もない……キミが抑え込んでくれている間に奴の解析を試みてみたんだが……奴ら、上級のヴァイラスの一種と判明した』

「な、何だって……」

『そこでだ……ここではキミも100%の力を出し切れないだろう?バスターフィールドを使え!』

「バ、バスター……フィールド?」

『私がペルセウスやアステライザーと並行して開発を進めていた対ヴァイラス用兵器の一種だ。起動コードは『バスターフィールド、展開』だ』

「よし……バスターフィールド、展開!」


 僕の声にあわせて僕と牛のような怪人は光に包まれ、気付くとホシガシアから一転して巨大な岩の柱がいくつか立っている荒野のような所へと飛ばされていた。


『壊し甲斐がある場所に俺を連れ込むとは……よっぽど死にたいようだなぁ!』

「違う……僕は皆を守る為に君をここへ閉じ込めたんだ!」

『つまり……互いにガチでやり合おうって訳か。ヘヘッ、お前……気に入ったぜ。口振りは弱々しいクセしてやる事は随分と大胆じゃねぇかよ!』


 牛の怪人は一瞬だけ笑顔を見せつつ、その勢いのまま大斧を振り下ろして周囲に衝撃波を発生させ、僕を軽々と吹き飛ばしてしまった。


「と、捕らえた筈が……逆に自分を追い詰める事になるなんて……!」

『このミノス様の怪力は並の怪力とは違うぜ……俺の力は……他のどんな野郎でも敵わないんだよ!』

「うっ……!」


 衝撃波だけでもこの力……これが上級ヴァイラスの力……


『おいおい、そんなんじゃつまんなくなっちまうぞ?もっとお前の強さをぶつけてみろよ!』

「がぁっ……!」


 サイバービーストの力があっても……僕の力じゃ勝てない……のかな……いや、諦めるのはまだ早い!ヒーローはいつだって一度決めた事は途中で投げ出したりしない……!


「ぐっ……おおおおおおおっ!」

『ハハッ、コイツぁ面白い!この俺に対して鍔迫り合いをご所望とはなぁ!』

「ぁああああっ……!」


 ブレードに込める力を強くする度、僕のブレードはバチバチと悲鳴にも似た音を立てて軋みながらヴァイラスの大斧を押し返さんとしていた。


「僕は自分から危険だと分かっててこの道へ足を踏み入れたんだ……たった一回、自分より強い敵にぶつかったくらいで……退いてたまるかぁあ!」

『なっ……コイツ……自分の気迫をそのまま剣に込めているだと……!?さっきまで俺の衝撃波に揉まれまくってたじゃないか……そんな奴の何処にこんな力が……!』

「行けぇええええええっ……!」


 青白いスパークが走った次の瞬間、僕のブレードは負荷に耐えきれなくなって遂に粉々に砕けてしまった。しかしその際に溢れた余剰エネルギーが一際強い衝撃波を生み出した事で僕とヴァイラスは両方揃って大きく後方へ吹き飛ばされ、岩に体を叩き付けられた。


『ックク……アーッハハハッ!楽しかったぜ……最ッ高だよお前……今回はこの辺で引き返してやるよ。また遊ぼうぜ……』


 ヴァイラスは満足げな様子で笑みを浮かべると、そのまま自分の影を一際大きくするとその中へ飛び込むと、影はゆっくりと渦巻きながら消えていった。同時に僕も変身が勝手に解け、その上でフィールドも解除され……僕は気絶してしまった……みたいだ。



「……」

「なっくん……なっくん……!」

「あっ……ぐぅっ……!そ、そうだ……会場の人達はっ!」

「それなら皆避難は終わって、不思議な空間が消えるのを待ってたの。でも、そうしたら空間が消えた頃にそこからなっくんが出てきて……」


 そうか……やっぱりさっきの攻撃の反動で完全に変身が解けたんだ……それにここは……僕と涼葉さんの家……だね……


「ねぇ、なっくん……一つだけ、聞いてもいい?」

「……何、かな?」

「どうしてなっくんはあのフィールドの中から出てきたの……?」


 ……無理もないよね。自分の目の前で自分の大切な人が倒れて出てきたんだ。ここは……正直に話そう。


「ごめん、僕は……このアステライザーっていう機械で少し前から町の人を守る為に戦ってたんだ」

「それでたまに学校で疲れた顔をしてたんだね……なーんだ、もっと早く言ってほしかったなぁ、そういう事」


 怒られる……と初めから思っていた僕の予想は大きく外れ、涼葉さんは僕に優しく微笑みながら呆れたような感じで呟いた。


「えっ……怒らない……の?」

「怒らない。だって、ヒーローってカッコいいじゃん。それに……今日の一件でよーく分かったもん、私達の日常の裏であんな大変な事が起きてるってね。だから……怒りはしないけど、もうコソコソしないって約束して」

「涼葉さん……うん、約束するよ。けど、僕はこれからもこの力で敵と戦っていくつもりだよ」

「そっか……じゃあ今度は私が内緒にしてた事を教えなきゃだね」


 涼葉さんは僕が秘密にしていた事を知って安心した様子を見せた後、大きく深呼吸をしながら真剣な面持ちで自分の髪型を変え始めた。


「じ、実はね……去年から少しずつ、アイドルやってるんだ……私」


 薄々感付いてはいたけど……僕の目の前には涼華さん……では無く、今流行ってきているネットアイドルの夏空りんの姿があった。


「うん……やっぱり、涼葉さんだったんだね」

「へっ……あれっ、もしかして……バレてた?」

「あはは……実は蝉沢君に歌ってる様子とか、トーク動画を見せてもらったんだ。その時に、何処かで聞いた事があるような気がしてね」

「はぅぅ……な、何か恥ずかしいなぁ……」


 夏空りん……涼葉さんは僕から掛けられた言葉に対して一気に顔を赤くするとそのまま両手で顔を覆って机に伏せてしまった。


「ご、ごめん……でも、凄くキラキラしてて……いいなって思ったんだ。涼葉さんは生徒会の会長もやりながら、こんな事が出来るなんて……今までこういうのは興味が無かったけど、応援したくなったよ!」

「えっ……」

「アイドルに興味は無かったって言ったけど、こういう仕事って大変だと思う……僕は……ほら、涼葉さんの……サポーターだからさ。ここにいる時は肩の力を抜いて、リラックスしてほしい……」


 さり気なくこんな事言ってるけど、言ってる僕まで何か体が熱くなってきた……!


「ふふっ……ハッキリと応援したいって言ってくれたの、嬉しかったよ。これでお互いに隠し事は無くなったね……!これでまた私達の距離も縮まったよ!」

「そ、そうだね……」


 だいぶ落ち着いてきたのか、涼葉さんは髪型を元に戻しながら僕にそう言った。そしてそれに続けて笑顔で自分達の関係が深まった事を喜ぶと、お互いに顔を見ながら笑いあった。



「酷くやられたようだな……ミノス」

「まぁな……だが、人間達全てが揃って弱者という訳では無い……今は次なる戦いへ向け、傷を癒やす……!」

「そうですか。では、そろそろ私達も本格的に動かねばなりませんね……」

「お前らで勝手にやってろ……俺は俺で動く。下手な干渉はしねぇから安心しろよな」

「お待ちなさい、ミノス……少し私に付き合いなさい」

「あぁん?俺は疲れてるんだ……早く休ませろ」

「まぁそう言わずに……」

「ケッ……すぐ終わらせろよ」


 ミノスは負傷した左肩を擦りながらも渋々ラダマンティスの誘いの元、アイアコスと共に異空間の奥に存在する不気味な王座へ向かった。


「お初にお目にかかります……プルトーネ様」

『……ヨク、キタナ。シテ、ソノスガタハドウシタ?』

「驚くのも無理ないでしょう。実は、私達の計画……貴方様の復活に協力を申し出た者がいましてね。これは彼からの細やかな贈り物だそうです」

『ソウカ……ダガ、アセリハキンモツダ。ドウヤラワレヲココマデオイツメタオトコノノコシタチカラガオオキクナリツツアル……』

「分かっていますよ、プルトーネ様。兵力が潤い次第、貴方様を必ず復活させ、この地を新たなる母星としましょう!」

『オマエタチノカツヤク……キタイシテイルゾ』

「ハッ!」


 王座の上の方に浮かんでいたドス黒いエネルギーの塊は3人に対して片言な日本語で伝言を残すと鈍い光を放ち続けるのを止め、ゆっくり脈打つように光り始めるのだった。

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