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第5話 アイドル巡る攻防

 僕がペルセウスとして変身する力を身に着けた事で、僕はただの学生から生徒会の副会長でその裏ではヒーローという肩書きを得た。けど、それによって僕は電脳研究センターと特例かつ秘密の契約をしたんだ。


「す、凄い……初めて変身して戦ったのにその謝礼金がこんなに多いなんて……」


 僕は一人暮らしをしていた上、親から高校進学に併せて自分の金融管理は自分でするように言わていたから、バイトとかで給料が入った時は通帳記入をして詳細を確認する習慣をつけていた。そして、先日の戦闘後に貰えた謝礼金のその額の大きさに驚くあまり自分でも分かる位に目が丸くなった。


「一、十、百、千……万……ご、50万……!?今やってるバイト4〜5ヶ月分はあるよ、これ」

「夏輝、何見てんだ?」

「ん、あぁ……最近始めたバイトの給料が多かったから少しびっくりしてただけだよ」

「そっか……あ、そう言えば最近、ネットアイドルが流行ってるのは知ってるか?」

「そ、そうなんだ……ごめん、正直に言うと蝉沢君が教えてくれるまでは聞いた事すら無かったよ……あははっ」

「まぁいいや。俺らが今一番熱中してるのは……この子!」


 蝉沢君は満面の笑みのまま自分のスマホの画面を見せてきた。そこに映っていたのは如何にもアイドルといった感じの服を着つつ、何処かで見た事があるような無いような赤い髪の女の子だった。


「どうだ、結構可愛いと思わねぇか?」

「うん……それに何だか凄く楽しそうにパフォーマンスを披露してるね。何ていう子なの?」

「確か……夏空(なつぞら)りんって名前だったぜ?この子ほんっとうに可愛いし、ダンス上手いしで、芸能界の人間様も揃って注目してるって噂だな」

「へぇ……」


 夏空りん……か。やっぱり……涼葉さんに少し似てるな。声もそうだけど、この子から出てる雰囲気は画面越しでも分かる位にあの子に似てる……まぁ、僕の感覚だし、余計な事を考えるのはやめよう。



「ネットアイドルの祭典の警備についてほしい!?」

「YES、先程私宛にサイバーフォースから連絡を貰ったんだ。向こうは現在装備を整えるのに苦労しているようだから、是非キミの力をお借りしたい……との事らしい」


 いつものように昼放課を迎えた僕はまたしても外を歩いていたタカヒロさんに呼び止められた上、そのままいつものように保健室の奥の部屋へ連れられた。そして、唐突に依頼を持ち掛けられた。


「確かに僕は昨日の一件からサイバーフォースと組むって話になりましたけど……いくら何でも案件の持ち込みが急過ぎる気がしません?」

「私も最初は少しイラッと来たよ。正規の契約すら交わしてない一般人にこんな事を任せるなんてナンセンス……ってね。だが、私もキミにアステライザーを託した建前、断る訳にもいかなくてね……申し訳無いのは山々だ」

「……分かりました。僕で良ければやりますよ。でも……警備の経験なんて無いですよ、僕」

「実は最近、とあるネットアイドルの元へヴァイラスと思わしき影が忍び寄っているようでね……キミにはそいつのデリートを任せたい」

「それなら……僕でもやれそうですね」

「そう言ってくれると、私としても安心出来るよ。そして、キミをここまで巻き込んだ者として責任を持ってバックアップさせてもらうよ」


 こうして、ヒーローとしての新しい依頼をまた一つ受ける事になった。



―その頃、一面紫の電脳世界では以前この中へ介入してきた仮面を着けた黒コートの男性が再び訪れていた。


「また貴方ですか……今度は一体何の用で?」

『最近人間達の間では空想のアイドル達が人気を博している……』

「それで、それが私達と何の関係がお有りで?」

『君達は現在、同士を募って地球を第二の故郷にするという悲願があるそうだな。そこで私は彼女達に目を付けた……彼女達が行うライブ……そこでは多数の人間達がこちらの世界とリンクする』

「ふむ……それは確かに私達からすれば絶好の機会ですね。だが、何故その情報を?」

『私は君達のスポンサーだ……この位させてほしいと思ってね』

「ハンッ、俺は駒集めなんざどうでもいい……俺はただ強い奴を徹底的に叩きのめして二度と戦えなくさせたいだけだ」

「ミノス……お気持ちは分かりますが、自重なさい。今の我らには時間も戦力もないのです」

「ラダマンティス……とにかく、俺は誰がどうしようが自分のやりたい事は曲げねぇよ」


 フードでも隠しきれない双角が目立つ荒々しい雰囲気の青年……に化けた怪物は話が終わっていないような雰囲気の中、ローブを荒々しく翻して何処かへ消えていった。


「申し訳無い……ミノスは少々気の荒い奴でして……」

『血気盛んでいいではないですか……それに、あのような単細胞な者程早く倒れる運命にあるのだから』

「そのライブとやら……このアイアコスが行きます。ミノスのような馬鹿に荒されて駒に出来る機会を逃す訳にはいきません故」


 緑のローブに身を包んだ青年……アイアコスは半ばミノスに続く形でその場を去った。


『君は行かなくていいのかい、ラダマンティス』

「私には見えているんですよ……あの場に歌姫を守る騎士が現れ、そしてミノスは負傷して逃げ帰る……そんな未来が」

『なるほど……あの少年にも、似た力があったみたいだが……ックク、見物に飽きたら君も動くといい。では、私はこれで失礼するよ』


 仮面の男はそのままラダマンティスにもう一つ情報を残しながらその場を去り、そしてそれに気付いたラダマンティスは怪しげな笑みを浮かべるのだった。



―そして、ライブ当日……僕はすっかり修復作業が終わって少しずつ営業を再開しつつあるホシガシアへと来ていた。勿論、いつでも変身出来るように準備はしているし、家に帰ってからも空いてる時間は広い庭で軽く剣を振るイメージトレーニングは積んできた……


「タカヒロさん、配置に付きました」

『OK、こちらでも確認した……今の所、ヴァイラスの反応は無し……か』

「……隠れている、なんて事は無いでしょうか?」

『その可能性は大いに有り得るね……私の方でも、あらゆるレーダーを最大稼働させる。さ、事が大きくなる前に何としてでも食い止めようか、鷲宮夏輝』

「は、はい……!」


 そういえば、ホシガシアに来る途中でまた変なイメージを見たな……牛みたいな怪物と戦って、そこで会場にいた涼葉さんに正体がバレる……そんなイメージが。


『皆さん、お待たせ致しました……これより、夏空りんさんによる特別ライブを開始します!今回はトークショーや新曲披露もあるので、最後までお楽しみ下さい……!』


 司会者の人がマイクを切って会場全体が暗転した……その時、全てが始まった。一つの爆発と共に会場の非常用電源によって全部のライトが自動で点灯し、会場には一気に混乱と困惑の声が広がりだした。


『やられたね……敵は完全にこちらの出方を見切っていたようだ。夏輝、出番だよ』

「はい……トランスオペレーション·ペルセウス!」


 ライザー越しに落ち込んでいるタカヒロさんの指示を受けた後、僕も素早く人混みの中から抜け出しつつ人目に付かない所でペルセウスへ変身すると壇上へ現れた敵の元へ向かった。


『出たな……二度も俺らの貴重な駒共を蹴散らした人間ってのはお前でいいんだよなぁ?』

「僕だって答えたら……?」

『答える間もなくお前を潰す……徹底的になぁ!』

「やっぱりこうなるよね……分かった、キミは必ず僕が止める……この会場から出ていかないって言うならね!」


 僕は後ろでりんさんが怯えているのを一瞬だけ確認すると、すぐに相手へ向き直ってすぐにブレードを展開しつつそのまま素早く懐へ飛び込んだ。

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