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第13話 燃える思いを力に変えて

『まさか……生き残りがいたとは、驚きましたよ。やはりあの男が余計な真似をしたからでしょうか?』

『フン、翼博士の事を悪く言う奴は……纏めて嬲り殺しにしてやる!今のオレはかなり頭に来てるからな……ハァァ!』

 な、何であの赤い戦士は僕の父さんを知ってるんだ……それに……自分の事をプラネットって言ったのも気になる……


『やはりプラネットは挙って迷惑な連中ばかりで困りますねぇ』

『どの面晒して言ってやがる……ラダマンティス!火星のステーションをぶっ壊したその恨み……仲間の無念共々晴らさせてもらうぞ!』

 か、火星のステーション……って確か、父さんが打ち上げに携わってた〈セブンソーラーズ·プロジェクト〉の一環で打ち上げられた通信衛星……やっぱり父さんと何かあったんだ……!


『その姿……思い出しましたよ。貴方、あのステーションの管理人でしたっけ?』

『そうさ……オレこそがマルスの管理者……アレス様だ!』

 アレスと名乗りを上げた戦士は身の丈ほどはある大剣を片手で豪快に振り回しながらラダマンティスとほぼ互角と言っていい程激しい戦闘を繰り広げていた。


『やれやれ……せっかく死の手前まで追い込めたと思ったのですが、ここまで邪魔が入ったとあれば話は変わってきます……故に、ここは一度身を引きましょう』

 ラダマンティスはそう残すとアレスを軽く突き飛ばしながらローブを翻して自身の影の中へと飛び込み、展開された結界も消えて彼に何かされたであろう生徒もそのまま姿を消してしまった。



「教えてくれ……どうして俺達を助けたんだ。見ず知らずで、弱ってたんだから倒す事もだって出来たはずだ」

「確かに……全盛期程の力が出せないとはいえ、あの状態ならお前ら二人を何の苦労もなく倒せたかもしれない。だが、今の俺にはお前らを倒す理由はない」

「だから助けたって訳か……」

「それに……オレの探していた存在に会えたんだ……話もせずにおさらばって訳にも行かねぇよ」

 変身を解いたアレス君は僕に代わって僕が知りたかった事を全部聞いてくれた。そして彼は犬上君からの問に対して少しため息が混ざりながらもちゃんと答えてくれた。


「あの……アレス君はさっき、自分の事をステーションの管理者って言ってたけど……それ、どういう意味?」

「言葉の通りさ。オレは火星の通信ステーション·マルスの管理者……そして同時に人間とは全く異なる種族……プラネットだ」

「人間と違うって……ヴァイラスとかみたいな存在って事?」

「そうだ……オレ達プラネットはこの星で活動する為に人間や色んな生き物に擬態している……奴らと同じようにな」

「じゃあ……アレス君みたいな存在はまだいるって事になるのかな……?」

「さぁな……オレもここへ降りてきた時に微かに同類の気配は感じたが、薄すぎて覚えてねぇ。んな事より……夏輝とか言ったな?その腕に付けてるブレスレットを見せてみろ」

「えっ……あっ、うん……」

 アレス君の指示通りにブレスレットを彼に見せると、彼はそのブレスレットに手を重ねながら目を閉じて何かを送り込むような素振りを見せた。


「よし……これでオレの出番は終わったな」

「えっ……それどういう事?」

「オレはステーションを破壊され、その影響でこの肉体を維持出来るのがやっとなとこまで弱っちまったんだ……そこで、翼博士の息子が博士の遺したテクノロジーを持ってるって知って……コンタクトを図ったんだが……奴らの妨害のせいでこの有り様だ……」

 アレス君は左胸の辺りを抑えて苦しみながらも自分に関する事を丁寧に伝え始めた。僕はそんな彼に肩を貸して近くのベンチに座らせると、犬上君に水を買ってくるように言った。


「お前にオレの力を託した……この力があれば、例え予知を持つあの野郎とも互角がそれ以上に渡り合えるはずだ……だが忘れんな……力を育てるのは、あくまでもお前次第だ……うぅっ!」

「アレス君……!」

「お前……何で手負いって事を伏せてたんだ!」

「アイツは予知出来ても見透す事は不可能だ……要は一芝居売ったって事だ……」

「とにかく……今は保健室へ!」

 僕はさっきから苦しそうにしていたアレス君に再度肩を貸すと、彼を保健室へ連れて行ってそこで偶然いたタカヒロさんに診てもらった。



「うーん……これはかなり重症だねぇ。そもそもプラネット……しかも管理者達は皆、自分達の生体機関をステーションとリンクさせてるからね……そのステーションが破壊された今、エネルギーを回復する手立ても無しにここまでやれた事が逆に奇跡だね」

「そんな……じゃあ、アレス君はもう助からないんですか?」

「現代技術を使っては……ね。まぁ、宇宙にもう一度ステーションを打ち上げればその限りでは無いのかもしれないけど」

「……」

「そんな暗い顔すんな、夏輝……今は弱ってるが、そのうちまた落ち着いて話せる時は来る。それまでオレは休ませてもらうだけさ……」

「そうだね……じゃあ、僕達は一度教室に戻るよ」

「後の事は私に任せてくれたまえ」

「お願いします……!」



 その後は先程までのドタバタが嘘みたいに感じるくらい何も起きる事なく時間だけが淡々と過ぎていった。けれどその流れこそが僕の中で違和感となって引っかかり、そして……


 ……放課後、その違和感の正体が明かされると同時に僕は再び死神と相まみえる事になった。


『おや、これでも一応姿は消していたつもりですが……やはりそのブレスレットの力は凄まじいという訳ですか』

「今度こそ……刻屋君は返してもらう!アレス君から託された……この力で!」

 僕は死神……ラダマンティスと向かい合うと、アレス君から光をもらったブレスレットを翳した。するとブレスレットの中央部がいつものように展開すると、その中央の水晶が赤い光を放った。


『ほぉう……あの男が貴方にそんな力を……ですが、力に振り回される事は見えてますよ?』

「そうだったとしても……僕は得た力に負けない……!どんな事があっても……僕はもう、膝を付くつもりはない!トランスオペレーション……ペルセウス!」

 僕はいつものように起動コードを発すると、赤い光に身を包んでペルセウスへと変身した。そしてその直後に体から炎が吹き出し、そこからさらに姿が変わって、宛らアレス君の変身した姿に近いものになった。


『Unbelievable!それこそが私の開発していたペルセウスに実装した新システム……スターソウルだ!散り散りになってしまったプラネット達をもう一度目の届くところへ集める為に開発していたが……それがこんな形で完成を迎えるとは……!』

「タカヒロさん……それって……」

『そう。このシステムは……このシステムこそがヴァイラス打倒の力になる!さぁ、思いっきりいけ……夏輝!』

「はい……見ててね、アレス君。君からもらった力で……必ずラダマンティスは……倒す!」

『私を倒すですって?そんな事……貴方に為せるとは思いませんがねぇ』

「やってみなくちゃ分からない……だろ!」

 僕は腕部に新しく追加されたクローを展開して赤熱させつつ、同じく強化された脚部に追加されたアーマーからの噴射で一気にゼロ距離まで迫ってからクローでラダマンティスを引っ掛けながら投げ飛ばした。


『な、何……私の読みを……上回った……だと!?』

「貴方が未来予知で僕の動きを上回るなら……僕はそれよりも早く、貴方を超える……!」

『……では、お互いに予測と超越の応酬を始めるとしましょうか』

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