(´-`).。oO
良いタイトルが思い浮かばない……
「……」
「……」
長い沈黙。
あれからどのくらいの時間が経ったのだろうか。
ちらりと時計を見てみるが、針は7と4の数字を指していた。
つまり、現在の時刻は7時20分。
柚がやって来たのがだいたい7時15分くらいだから──5分少々の時間が経過したのか……。
長く感じたけど、実際は数分しか経っていないのか。
「……」
「……」
沈黙は続く。
このまま10分、15分と続いていくかと思ったが、そうはならなかった。
「ねえ……」と柚が破ったのだ。
「……何?」
「……返事は?」
「……」
辞めてくれ。
忘れようとしていたのに……。
思い出したくない記憶。
それはつい5分前の彼女の発言だった。
『私と結婚を前提としてお付き合いをして欲しい』
ストレートな求婚。
告白したその先にあるもの。
プロポーズってやつだ。
僕だって男だ。
柚のような美少女から告白されるのは嬉しい。
しかも、昔からの幼馴染。
性格や価値観の違いで別れる事はない。
だけど──。
「ちょっと、早すぎるんじゃ無いか?」
僕たちはまだ学生だ。
それも高校2年生。
1年後には受験が控えている身である。
それに、せっかくの学生時代なのだ。
今は彼女とイチャイチャするよりも、家の中でグータラしてゲームをやりたい。
だから、今ではなく、もっと後──それこそ大学生くらいからでも良いだろう。
そう言ってみるが、彼女は首を横に振った。
「このまま大学卒業まで待ったとしよう。 その間に他の女の子に告白されるには耐えられないからね」
現に有希から告白されたでしょう?
柚は今、ここで、僕の答えが欲しいらしい。
「少し考えてたいんだけど……」
「それは構わないが、昨日もそう言ってたよね?」
「……」
何故、知っているの?
いや、この際、何で知っているかはどうでも良い。
目の前にある現状の問題を何とかしなければ……。
……どうしよう。
「もしかしてだけど、逃げようとは思っていないよね?」
「何でそうなる……」
見透かされている?
まさか、考えている事が全て漏れてるの?
「もし本当なら、いくらの私も傷つくよ?」
泣く真似をする幼馴染。
僕は「いや、咄嗟の事で驚いただけだよ……」と誤魔化してみるが、彼女の方が1枚上手だった。
「もう告白してから5分は経ってるよ?」
「……消化するのにそのくらいの時間が掛かったのさ」
「まあ良いけど……それで、返事は?」
「……」
しかし、これは大変なことになった。
昨日は後輩から。
そして今は幼馴染から。
2日続けての告白だ。
ラノベの主人公でもこんな状況になるのは珍しいのではいのか?
いや、彼の方が相当マシであろう。
もし告白されてもやろうと思えば、その後のイベント次第では有耶無耶にする事も可能だからだ。
しかし、僕の場合は違う。
有希の告白は「考えておく」と言う理由で利用して、何とかなったが、今回──柚の場合はそうにはいかない。
思い出したくないが、僕は幼馴染に監禁されている。
有耶無耶にする事も出来なければ、延期にする事もできない。
つまり、これからの僕の言動次第で今後の人生に大きく影響するのだ。
「どうしたんだい?」
「いや、これからの事を考えていた」
嘘は言っていない。
だが、幼馴染には効果が無かった。
「そうかい。 でも、それが私と一緒に暮らす10年後の事なら嬉しいんだけどね」
「……」
1枚上手だな。
流石、天使様だ。
「でも、驚いたよ」
「何が?」
「柚が僕の事を好きだって思っていた事」
「何を言っているんだい? 昔からずっとケンくんのことが好きに決まっているだろう?」
君は何を言っているんだと言わんばかりの表情。
まるで、僕が何かを間違っているような雰囲気だ。
「でも、そう言う素振りとか全く無かったじゃん」
「君が望まなかったからだよ。 だから、私もいつも通りの私で居たんだ。 まさか、君に告白する娘が居るとは思わなかったけど」
「……」
ちょっぴりとだが、口調が強くなる。
おそらく、有希の事だろう。
普段は、姉妹のように仲が良いんだけどな……。
「さて、これで私がケンくん好きだと言う事がわかっただろう? それで、そろそろ返事が欲しいんだが?」
ぐいぐいと顔を近づける幼馴染。
いつもよりもいい匂いがする。
だが、もう時間はない。
幼馴染のプロポーズに答えなくてはいけない。
「えっと……その?」
「うんうん」
「僕は……」
柚のプロポーズに──。
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