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後輩に告白されたと思ったら、幼馴染に監禁されて「結婚しよ?」って言われた。  作者: W.N.
後輩に告白されたと思ったら、幼馴染に監禁されて「結婚しよ?」って言われた。
7/11

幼馴染に求婚された


「……柚?」


「正解。 君の柚だよ」


部屋に入ってきたのは、幼馴染の柚だった。

寝起きなのか、いつもの姿からは考えられないほどのボサボサの髪。

ずっと変わらないよれよれのパジャマ。

最初に見たのが、中学生に上がった頃、一方で最後に見たのが1年とちょっと前くらい。

つまり5年以上は一緒ということだろう。

そして吸い込まれそうな黒い瞳。

そこに光はなく、目の奥にどこまでも深淵が続いているように見える。

まさにハイライトオフと呼ばれるものだった。


「……柚?」


大丈夫?

とは言えなかった。

昔から、彼女はそう言う心配は嫌いだったはずだし、

何よりも言ってはいけないような気がしたのだ。


「どうしたんだい?」


「いやっ、何でもない……」


「そうかい。 なら何かあったら言ってくれ。 なんせ君の柚なんだからね」


「……」


君の柚?

何を言っているんだ?

そんな事よりも──。


「じゃあ、これは?」


「ああ、すまない。 痛かったかい?」


今、外すね。

そう言って、足についてあった手錠を解除する。

手錠はカチャと音を立てると、簡単に抜ける事が出来た。

さっきまでの苦労は一体何だったんだろう。

少し、後悔した。


「おかしいな……足の大きさと丁度ピッタリにするように調整したはずなのに……」


「……」


僕の足元で、ブツブツと独り言を呟く幼馴染。

全部聞こえているんだけど……。

いや、何だよ。 足の大きさって。

僕も知らないよ。

疑問はいろいろとあるが、まずはこの状況の事を聞き出すのが先決だ。


「柚」


少し強めの口調で、幼馴染の名を呼ぶ。

何の真似だが分からないが、彼女だって何をやったのかは分かっているはずだ。

こんな事をするはずがない。

だが、幼馴染は「何だい?」とまるで、何をしたのか分かっていないような口調で返事をした。


「これは……どう言う事?」


「これって?」


「これは、これだよ。 どうして僕はこんな場所にいるんだい? しかも足は手錠に繋がれている……どうして?」


一回に何度も質問してしまう。

それほどまでに困惑していたのだ。

だが、柚は淡々と答えていった。


「ここは家の地下室。 ここにいる理由は昨日の夕食に、遅延性の催眠薬を入れたのさ。 そして寝たところを私がこっそりと運んだ。 手錠は……逃げない為かな?」


「……」


訳が分からない。

周りから見れば、実績や容貌のせいからか、彼女は少し浮いているように見える。

しかし、こんな事をする人では無いはずだ。

なのにどうして?

彼女が答えるまでに自分なりの答えを出そうとする。

だが、返ってきたのは──。


「君がいけないんだよ……」


「……僕が?」


彼女の返答は全く予期しないものだった。

一体、何をしたって言うんだ?

心当たりが全くない。

いつも通りに接していたはずだ。

もしかして、その接し方が不味かったのか?

考えが浮かんでは消えてゆく。

柚の言う「君のせい」の原因が全く分からなかった。


「昨日の放課後に君、告白されたでしょう」


「……」


どうしてそれを? と問いただす事はできない。

それはつまり、告白されたのを認めたと言う事になるからだ。

そうなるとめんどくさい。

この様子だと間違いなく、相手は誰だとか、付き合うのか、などと問い詰めるだろう。

まだ返事をしていないのだ。

下手に事を大きくしたくない。

僕ははぐらかそうと口を開いたが、幼馴染の方が早かった。


「別に問いただそうとしているわけじゃないよ。 ただ、君は有希ちゃんに告白された。 そうでしょう?」


「……」


何で知ってるのとは聞かない。

いや、怖くて聞けない。

近くには人の気配は無かったはずなのに……。


「そこで私は察したんだ。 このままのんびりとしていると、他の馬の骨に取られてしまうかもしれないとね……」


単純明快だろう?

と同意を求めてくるような言い方をする。

……いや、待てよ。

いろいろと聞きたい事があるんだが……まずは状況を整理しよう。

方法は分からないが、昨日有希に告白されている場面を知った。

だから、夕食に睡眠薬みたいなのを入れ、監禁まがいな事をした。

その理由は他の馬に骨を取られたくないから。

おまけに逃げないようにと手錠まで付ける始末。


「……」


何だろう。

この違和感。

これじゃあ、まるで僕の事が好きような感じじゃないか……。


「ん?」


「やっと気がついたのかい?」


先ほどの影が差していたような雰囲気から一点、まるで待っていたよと言わんばかりの表情になる。


「えっと……」


何とかなくだが、先が見えて来たような気がする。

もし、その予感が正しければ──。


「端的に言おう。私と……結婚を前提としてお付き合いをして欲しい」


「……えっ?」


えっ?


「……」


……えっ?

脳が一瞬停止をしてしまったのか。

彼女の言葉を理解するのに時間が掛かってしまった。


「……本気?」


「私は、嘘は言わないつもりだよ?」


「知ってる……」


何年の付き合いだと思っているのか。

ただ大変な事になってしまった。

どうやら僕は後輩だけではなく、長い付き合いの幼馴染からも告白されたらしい。

しかも、それは恋愛の付き合いじゃなく……求婚であった。

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