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後輩に告白されたと思ったら、幼馴染に監禁されて「結婚しよ?」って言われた。  作者: W.N.
後輩に告白されたと思ったら、幼馴染に監禁されて「結婚しよ?」って言われた。
2/11

昼休みになると、いつも後輩がやって来る


学校に到着し、何事もない日常が始まる。

朝学に朝礼。

そして授業。

何の変哲もない光景だ。

キーンコーんでカーンコーン。

チャイムが鳴る。

昼休みだ。

教室で授業を受けていた生徒たちが一斉に廊下を飛び出る。

そして、一気に食堂へと駆け上がって行った。


「今日も騒がしいな……」


そんな事を思いながら、階段を降りる

向かう先は校庭。

そして、その奥にある雑木林だ。

いくつかの木々はがビッシリと並んでおり、人がほとんど来ることがない。

僕のお気に入りの場所だ。

ついこの間までは、緑で輝いていた木々だが、今は黄色くなっており、地面には落ち葉が絨毯のように敷き詰められていた。


「さてと……」


ポケットから文庫本を取り出す。

ほとんど音がしないこの場所で、本を読んだり、音楽を聴いたりする。

最高だ。

物語も佳境に入り、一気に面白くなる。

そんな時だった。


「先輩!」と頭上から陽気な少女の声が響いた。

彼女だ。

いつも昼休みになると僕の所にやって来る1人の少女。


「……なに?」


「こんな場所にいたんですね? 随分と探しましたよ!」


「あ……ごめん」


バタンと本を閉じる。

目の前にはあざいとい笑いを浮かべていた1人の彼女がいた。

水樹 有希。

僕の1つ下の後輩だ。

桃色のロングヘアを一本結びで纏めている。

今では元気100%の彼女だが、出会った当初は今とは全く違う性格だった。

今が陽なら、当時は隠。

隠の中でも相当の隠だ。

彼女と出会ったのは2年前。

僕が所属していた今亡き文芸部に、彼女が体験入部をしに来たのが最初の出会いだった。

当時は驚いたものだ。

柚と他愛もない雑談をしていたら、いきなり扉が開き、有希かがやって来たんだから。

その時の有希は前髪で目が隠れており、引きこもりでもしていたのかと言うほど、周りに不気味な印象を与えていた。


「あれ? ゆーちゃんはいないんですか?」


ゆーちゃん。

僕の幼馴染である柚の事だ。

有希が入部した時点で、部員は僕と柚の2人だった他、すぐに仲良くなった。


「今日は生徒会だって」


「ふーん」


意味深な笑みを浮かべる有希。


「えっと……どうかしたの?」


様子が変だから、声を掛けてみる。

すると彼女は大袈裟に手を振り「いやっ! 何でもないですよ?」と笑った。


「あっ、そう……」


「はい」


ニコッとする彼女。

こうして見てみると、本当に変わったんだなと実感する。

今の有希に、当時の根暗だった面影はない。

本当に同一人物なのかと思うほどだ。


「それで……何の用?」


「暇そうでしたので、来ただけですよ?」


暇か。

第三者から見れば、暇人に見えるのか。

でも、実際はそんな事はない。


「暇ではないよ」


「そうですか?」


「ああ」


本を開き、読書を再開する。

彼女と話していたものだから、どの場面だったか忘れてしまった。

パラパラと前のページに戻る。

するとその時だった。


「先輩って……彼女作らないんですか?」


そんな後輩の呟きが僕の耳に届いたのだ。


「……」


またか。

時々だが、有希はこうやって「彼女を作らないのか」的なことを訊いてくる。

ついこの間まではこんな事をなかったのに……。

今朝の柚と言い、今の有希と言い、そんなに僕の彼女の有無が気になるのか?

少しイラッときた僕は思わず言ってしまった。


「彼女ね……誰かがなってくれれば良いんだけど……良い人が居ないんだよな」


「じゃあ、彼女は欲しいんですか?」


「まあね……例えば、君とかは──」


ここで、僕は失言に気がついた。

あっ……言ってしまったと。

冗談だと伝える為に、顔を上げると、そこには顔を赤くしていた後輩の姿があった。


「大丈夫?」


「あっ……何でも無いです」


そう言って、有希は立ち上がると、「用事が出来たので」と告げ、颯爽に走り去ってしまった。


「……用事?」


さっきまで暇だって言ってたのに……。

何か出来たのだろうか。


「まっ、いっか」


この本の返却日がそろそろだ。

それまでに読み終えないと。

人差し指で挟んでいたページを開く。


「今日中に読み終えるかな?」


ちょっと厳しいかもな……。

そんな事を呟きながら、読書を再開した。

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