後輩と僕
第二部です
「はぁ……」
翌日。
僕は3つの難で悩まされていた。
睡眠不足。
幼馴染とのこれからの関係。
そして──。
「先輩、大丈夫ですか?」
「……ああ」
後輩との関係性だ。
昼休み。
いつもの木の下に行こうとすると、そこには後輩がいた。
「君が最初からここにいるとは、珍しいね」
「今日は友達が休みだったんですよ」
「そうかい……」
他愛もない話をしながら、食事を取る。
一見、普通の先輩後輩の関係に見えるが、実は先日に告白されている。
こうして、いつも以上に接してくるのは、僕の回答を待っているからだろう。
だが、僕は幼馴染と婚約してしまった身。
実際に、婚姻届という王手に指されている。
だから、彼女の想いに応えることはできない。
だけど、どうすれば良いのか分からない。
普通に「ごめんなさい」と頭を下げる?
昔の有希なら、それでも良かっただろうが、今の彼女では明確な理由が無ければ、絶対に諦めないだろう……。
それに対応を間違えたら、第二の幼馴染に成りかねない。
「はぁ……」
「これで12回目ですよ?」
「何が?」
「先輩のため息の数ですよ。 何か悩み事でもあるでしょう?」
「私が聞きましょうか?」と近づく後輩。
その気遣いは嬉しいが、これは話せる内容では無い。
当たり前だ。
告白した好きな人の悩みがその告白の断り方の方法だ。
口が裂けても言えない。
だが、ここで「何でもない」と言っても、絶対に追従してくる。
「……進路の問題さ」
僕はそう嘘を吐いた。
「進路……確かに、先輩もそろそろ大学受験の時期ですもんね」
「ああ……1日10時間勉強とか絶対に無理だよ」
「私が手伝いましょうか?」
「……数学嫌いの君が?」
「……そんな事ないですよ?」
その間はなんだ。
それに、そんな事あるだろう。
彼女は廃部寸前の文芸部に入るほどの文系の人間である。
いわゆる文系女子?
それ故に、国語や社会の成績は学校でトップ10に入るほどの実力だが、数学や理科は下から数えた方が早い。
「辞めておいたほうがいいと思うと」
「どうしてですか?」
「いや、僕理系だし……」
「……」
後輩が、固まった。
ただでさえ、理解分野が苦手な彼女である。
それ以上の内容を解けるだろうか。
いや、ない。
「……でっ、でも、英語とか?国語なら出来ますよ?」
「僕もそれなりに出来るよ」
「……」
提案ありがとう。
彼女の頭をぽんぽんと撫でる。
すると、彼女の顔がみるみる赤くなっていった。
それは撫でれば、撫でるほど赤みが増して行く。
何これ……面白い。
だが、やり過ぎてしまったらしい。
後輩の体がブルブルと震え始める。
ちょっと不味いかも。
撫でるのを辞め、彼女から離れる。
だが、遅かった。
「待ってくだいさいよ!」
後ろから聞こえてくる有希の声。
僕がからかい、後輩が追いかけてくる。
普段は後輩がからかって来ることが多かったので、この立ち位置は久しぶりな感じだ。
「先輩!」
「速いな……」
後ろから追いかけてくる後輩。
その姿はだんだんと大きくなっていく。
すると、その時だった。
ポケットの中から何か振動するものがあった。
スマホだ、
「メール?」
電源を着けると、そこには幼馴染からの連絡の通知が来ていた。
何だろう?
今は生徒会の筈だ。
何か手伝いでも必要なのだろうか。
アプリを開く。
だが、そこに書かれていたのはそんなものでは無かった。
『早く断ってよ』
「……」
えっ?
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