6.心の崩壊
(何も、起きない)
俺がこの死体の中に埋もれている間、何も変化は起きなかった。
俺の命を脅かすモノは何ももない。
だが、俺に喜びを与えるモノも、何もない。
俺は“無”というものの恐ろしさが分かった。
命は脅かされない。
ただし、心は脅かされる。
少しずつ、少しずつではあるが俺の心が壊れていくのを感じた。
最初こそ頭の中で考え事をしたりしたが、途中からはボォとしている時間が多くなった。
何もせず、何も考えず、ただ1ってんを見つめてボォとする。
しばらくはそれが続いたが、さらに時が過ぎると別の現象が起こった。
グチャグチャグチャグチャグチャ。
俺は自分の脚を自分の指で突き刺していた。
自分を痛めつけるという行為が続き、その行為はどんどんエスカレートしていく。
腹を突き刺し、耳を突き刺し、、、最後には首を突き刺そうとした。
(本当に、死んで良いのか?)
だが、最後の最後で俺は思いとどまった。
俺は死ねない。
そんな思いが、心のどこから渇く。
俺は、俺を殺した社会を変えるためにここにいるんだと。
社会を潰して、俺を殺した奴らに復讐するんだと。
そう思ってからは、また虚無な時間が続いた。
自殺は思いとどまったが、だからといってすることは何一つ無い。
(考えるのを完全にやめても良いのではないか)
そうまで思ってしまう。
さらに長いときが過ぎ、また俺は自分の体を痛めつけだした。
こんな所にいても、俺にできることなど何1つない。
そう考えたのである。
個々では社会への復讐なんてできない。
(ここで何もしないよりは、死んだ方がマシなのではないか?)
そう思った。
俺は指をもう1度自分に向ける。
だが、
死ねなかった。
何度も死のうと思った。
だけど、死ねなかった。
死ねずにいると、俺の心は悲しみが襲ってきた。
自分で死ぬこともできない情けなさや、力が無い事への悔しさ。
いろんな感情が入り交じったが、最後には悲しみが残った。
俺は涙を流す。
この体から涙が出ることはないため、泣いているのは心だろう。
(・・・)
泣き止んだ俺の心は空っぽだった。
全てを諦めてしまった。
体がピクリとも動かない。
そんなときだった。