55.初弟子との別れ
「ありがとうございました!」
人間が頭を下げて、消えていく。
結局腕だけでなく全身黒く、悪魔のような姿になれるようになった。
それで満足したようで、人間は帰ったのである。
俺としてもいくつか得るモノがあった。
人間の呟きから推測すると、どうやら俺の魔法が失敗するのは、魔術につぎ込む魔力量が多すぎるかららしい。
イメージとしては、ちっちゃい針の穴に自分の指を通そうとしている感じか?
まあ、そりゃ無理だよなって感じだ。
だから、普通に魔法を使おうとすると魔力を押さえて使うというのが1番いいのだろう。
だが、それでは人間がやっていたように悪魔には効果がない。
そうなると、どうしたらいいのか分からなくなるが、それも人間は言っていた。
魔力の完璧な操作が必要になるそうだ。
「魔力の完璧な操作、なぁ」
俺は手のひらから魔力を出しつつ、考える。
俺にはできる気がしない。
魔力の細かい操作すらできないからな。
どれだけの訓練が必要なんだろうか?
頑張らなければな。
「あっ!リベン!みぃ~つけた!」
ギルの声がする。
「どうした?俺はしばらく戻らないと言づてを頼んだはずだが?」
俺は何のようかと尋ねる。
「ん~。面倒くさいことになったからウユリが呼んで来いって」
面倒くさいこと。
何だろうか?
俺を呼ぶ必要があるって事は、かなり大変な事なんだろうな。
関わるのも面倒だが、仕方ない。
いくか。
「よし。ウユリはいつもの所か?」
「うん。じゃあ、競争しよう!スタート!」
そう言ってギルは急に全速力で飛んだ。
「おい!ちょっとまて!」
いきなりのことで俺は戸惑う。
だが、勝負となれば負けるわけにはいかないので、俺はすぐに追いかけた。
このまま全力で飛んでもぎるより早く飛ぶことはできないから、俺ができるのはどれだけ近道して飛べるかって事だな。