35.遊殺の悪魔、死す(兵士視点)
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《兵士視点》
俺は小さな国のちっぽけな兵士。
特に偉い役職にも就いていない俺は、領主が殺されたという館へやってきていた。
「これはまた、何も残ってねぇなぁ」
現場である館を見て、最初に出てきた感想はこれだった。
現場は燃やされていて、ほとんどが炭になっている。
残っているのはいくつかの金属類。
柱に刺さっていた釘などが、黒くなって落ちている。
踏んだら痛そうだし、気をつけて歩かねぇとな。
ガチャガチャ。
「おう。来たか」
がれきの上を歩きながら、大柄な男が歩いてきた。
「あっ!兵長。おはようございます」
俺は挨拶をする。
歩いてきたのは兵長。
この辺りの兵士の中で5番目くらいに偉い人だな。
当然俺の上司に当たる。
だが、仕事時間の前から誰よりも早く出勤して、いろいろ仕事に当たるというので、同僚たちからも市民からも尊敬されている存在だ。
「どうですか?犯人はカナタと言われる老人1人の犯行だと聞きましたが」
俺は、兵舎で聞いてきたことを兵士長に言う。
「ああ。動機もあるし、目撃者もいるし、間違いないだろう。まあ、まだ死体は見つかってないんだがな」
そう言って肩をすくめる兵長。
俺が聞いた話だと、発見された死体は1つ。
ほとんど灰になっていたが、少しだけ骨が残っており、その辺りに転がっていた持ち物、そして、極めつけには兵士の証言から領主の息子だと断定された。
なんで、カナタが持っていた剣は、触れただけで相手をしばらく麻痺させる魔剣だったらしい。
それでやられた領主の息子は、動けないまま火を放たれて、
といった状況だったらしい。
「そういえば、カナタが遊殺の悪魔じゃないか、という話が出ていましたが、それはどうなんですか?」
俺は兵舎で集めておいた情報の中からまた1つ聞いてみる。
遊殺の悪魔。
6つくらい他の街を挟んである街で起こった、殺人事件の犯人の名前。
悪魔のような膨大な魔力量による攻撃を起こすとされていて、必要がないのに、最初に死体を丸焼きにしたと言うことで、遊ぶように殺すという意味の遊殺の悪魔という名前がつけられた。
「それも、兵士たちの証言を聞く限り間違いないンじゃないかと思う。あれだけの兵士たちを麻痺をさせる魔剣を作れる魔力量があるのはもちろん、あっちの街で起こった遊殺の悪魔の事件での爆発と類似したモノが、今回も見られたという話だったからな」
「なるほど。それじゃあ、遊殺の悪魔は死んだということを発表しても良いんでしょうか?」
俺は兵長の言葉を聞いて、遊殺の悪魔の扱いについて聞く。
「そうだな。遊殺の悪魔は領主もろとも死亡。それでいいだろう」
こうして、遊殺の悪魔が死んだということが発表された。
だが、遊殺の悪魔が引き起こす悪夢はまだまだこれからだった。