34.消えゆく友
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「カナタ。領主を見つけたぞ」
俺は辺りをウロウロしていたカナタに声をかけた。
「何!本当か?どこだ?」
カナタが食い気味に訪ねてくる。
俺は隠し扉までカナタを案内した。
俺は隙間をのぞいて仕組みを確認しながら開け方を説明する。
カナタは俺の説明を覚えると、1,2度深呼吸をして、
「おぬしの、最強の技をこれにつけてはくれぬか」
俺にそう頼んできた。
「最強の技って、アレはお前まで死ぬかもしれないから危な、、、まさか、お前」
俺はそこで確信した。
カナタは、個々で死ぬつもりなのだと。
どうせここで逃げても、兵士たちは麻痺させてるだけで殺していないのだから、この騒動の犯人はすでにカナタだとバレていて、結局は捕まってしまうか、指名手配されるかだろう。
ならば、いっそのことここで死んでしまった方が良いんじゃないかという考えだと思う。
俺は、それを止めることはできない。
気持ちはよく分かるからな。
「、、いいだろう。だが、それをつけた後はお前の魔剣は壊させて貰うぞ」
俺はそう宣言する。
見ただけで人が死ぬモノを、こんな所に置いておくことはできないからな。
そんなことをしたら、ここには誰も入れなくなるぞ。
呪いの館に早変わりだ。
「その必要はない。この剣の寿命はあと1時間もない。おぬしの強すぎる力を一気に込めたから、この剣は耐えきれずにもうすぐ壊れてしまうのだ。そして、お前の最強の力とヤラが入れば、抜くだけで壊れてしまうだろう」
そんなことをカナタは言ってきた。
「そうか、なら俺の最高の力をこの剣に込めてやろう」
俺は目から剣に力を移していく。
その時だった。
「探せ!この近くにヤツはいるはずだ!!」
兵士たちの声。
麻痺が解けたのだろう。
「終わりだ。この剣を抜いたときがお前の最後であり、この契約が終わる瞬間でもある。楽しかったぞ友よ」
俺は別れの言葉を告げる。
「ああ。最後に良い友に出会えた。助かったぞ」
カナタも俺にそう言って、部屋の中へ入っていった。
カナタの復讐の声と、領主の驚くような声が聞こえ、それこそ部屋からは音がしなくなった。
俺はその後のことは知らない。
友の死に様を見てやる気はなかったからな。
だが、きっとすがすがしい顔をしていたことは、俺にも容易に想像できた。