32.領主の館
フードを深くかぶり、夜の街を音もなく歩くモノがいた。
もちろん、カナタである。
俺はその後ろを地面にめり込みながらついて行く。
肉体を持たない悪魔にとって、地面や壁なんて関係ないんだよなぁ。
だからこそ、肉体を持たなくても強い悪魔が肉体を持ってしまうと、大量の犠牲者が出てしまうんだろうけどな。
俺は肉体を持つべきかどうか悩んでいる。
館の兵士を全員殺せばもしかしたら肉体を持てるかもしれないからな。
狙ってみるのもありかもしれない。
「見えたぞ。あれだ」
カナタは指を指しながら言う。
指の先には大きな館があった。
館と言うより、城みたいだが。
それにしても大きいな。
人が住むのにあんな大きさは必要ないと思うんだが。
「それじゃあ頼んだ」
カナタはそう言って別の所へ向かう。
俺はこの正面で待機だ。
そういう作戦らしい。
カナタが言うには
「できればわし1人で全てやってしまいたい。だから、屋敷の兵士たちの陽動を頼む」
ということだった。
作戦としては、カナタが裏口から侵入する。
そして、発見されそうなタイミングで、俺が正面玄関付近で大きな音を立て、兵士をこちらに誘導。
警部が薄くなっている間に領主の所まで行って殺害。
といった感じだ。
あまり難しいモノではない。
キンッ!
金属が強くぶつかる音が聞こえた。
おそらく見つかったんだろう。
そう思った俺は、入り口の下から侵入し、玄関辺りのモノを壊した。
バリバリバリッ!
すごい音がして、いろいろなモノが割れたり落ちたり壊れたり。
すぐに入り口近くの兵士がやってきた。
俺はまた地面に潜って隠れる。
「し、侵入者だぁぁ!!!」
兵士が叫ぶ。
「どこだ!」
「人数は!?」
叫び声を聞きつけた他の兵士たちが次々とやってくる。
それを確認した俺は、魔法を使った。
炎の魔法。
前回召喚されたときに豚に撃ったのと同じ魔法だ。
やはり、今回も、