156.去った場所
悪役令嬢になるはずだった闇の女王 ~悪役令嬢に転生したから、闇の組織を作っとく~
もお願いします。
「ちっ。遅かったか」
俺は舌打ちをする。
俺の目の前に広がるのは、あちこちから火の手が上がっている、隣の大陸にある港の国。
あちこちで人が逃げ惑う。
逃げ惑う地面には、真っ赤な水たまりがあった。
コレが俺の急ぎたかった理由だ。
俺は、地下の奴らがやるのは、国王を殺すことだと思っていた。
だが、それでは恨みは収まらなかったのだ。
地下の奴らはおそらく、地上の奴らにも恨みを持っていた。
だから、地上で殺戮を行っているのだろう。
復讐好きの俺としても気持ちが分からないわけではない。
分からないわけではないが、コレではさらなる復讐が生まれてしまうぞ。
それでは意味が無い。
復讐が復讐を生んでしまっては、復讐が終わることはないのだ。
「こんなことは終わらせなければ」
俺はそう思い、翼を広げる。
そして、争いの起こっている場所に向かった。
「死ねぇぇぇぇ!!!!」
「「きゃぁぁぁ!!???」」
「いやぁぁ!!やめでぇぇぇ!!来ないでぇぇ!!!!!」
地下のヤツであろう剣を持った男が、一般の人間達を斬り殺している。
俺は止めようと思ったが、その瞳から迷いが見られなかったため、止めることはできないと確信した。
だから、殺戮を行っていない人間を探してみることにする。
「ん。あれは」
俺は見覚えのある人物を見つけた。
「おい。大丈夫か」
俺は血まみれの、少女の父親である見回りの男に話しかける。
見回りの男は胸に大きな切り裂かれた傷があり、ほとんど死にかけである。
だが、その目はシッカリと俺を捉える。
そして、血を吐きながらも、
「ど、どうした、悪魔?」
「きちんとあいつらは安全な場所送り届けたぞ。……まさか。お前達がこんなことをするとは思っていなかったが」
俺の言葉に、見回りの男は薄く笑った。
そして、その表情から男が動くことはなかった。
……別れとは、寂しいモノだな。
「さて、止められないなら、どうするべきだろうか」




