116.葛藤
「やめてぇぇぇ!!??」
男たちは少女を押さえつけ、馬車の中をあさり始めた。
俺としてはとても助けたいという気持ちが強い。
だが、それと同時に、そんなことをする必要はないという感情もわいてきた。
いつもだったら、迷わず助けただろう。
復讐を作り出すようなことは止めるに決まっている。
だが、今回はそうも行かないのだ。
なぜなら、
その少女の魂が、とても明るく輝いていたからだ。
今まで見てきた魂の中で1番明るい。
レオは魂を見えないようにしているらしいので分からないが、他の侵略者などと比べても、格が違うというレベルで明るくて、大きい。
その少女が侵略者だというのは簡単に想像できた。
だが、ここで襲うことはどうしても気が引けてしまう。
それに、魂が凄い相手に俺が勝てるかもしれないしな。
とりあえず、レオに腕輪を使って報告だけしておくか。
「よし。仕事に集中だ」
と気合いを入れて、俺は翼を羽ばたかせる。
が、一向に前に進まない。
いや、的に動けなくさせられてるとかではないぞ。
ただ、どうしてもこの状況を見逃すことに気が引けるだけだ。
「関わりたくない。関わりたくはないが、」
俺は動かない首を頑張って動かす。
少女は押さえつけられたままだった。
まだひどい暴行などを受けている様子はない。
ここで行ってしまえば、後のこと早く分からないまま過ごせるんじゃないだろうか>
そんなことは頭では分かっていた。
だが、一向に体が動こうとしない。
「くそっ!面倒な!」
だんだんと俺は、モヤモヤした心にいらだってきた。
「ア゛ア゛ア゛アァァァァ!!!!!」
俺は怒りにまかせて叫ぶ。
いつだって世の中は不条理だ。
無実な俺は殺されるし。
困った人に手を差し出すこともできない。
「アアァァァァ、、、、、フゥ。少し気が晴れた」
叫んだおかげで、今までのストレスがかなり軽減できた気がする。
たまには、自分のきの赴くままに行動することも必要だな。




