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1話:女神の願いなんて叶えるんじゃなかった!/1

さて。

俺こと佐久間さくま 優人ゆうとがどうしてこんなピンチにさらされているのか。

まずはそこから説明することにしよう。


ことのはじまりは1年前。

俺がこの『プルクラ・ステラ』と呼ばれる世界へとやってきた日まで遡る。


それまでのクソみたいな人生に見切りをつけて、夢と希望にあふれる新生活を求めた俺は、一も二もなく女神の言葉に頷いた。

すると、眩い光の奔流が瞬く間に俺の身体を包み込み――――気がつけば、俺は見知らぬ郊外の地に一人立ち尽くしていた。


「――――」


ぼんやりとした頭のまま2、3度視線を左右に動かす。

緑生い茂る草原、雄大に連なる山々、遠くに見える城郭都市。

そのどれもがずっと思い描いていた風景そのもので。

『ああ、俺は本当に異世界へとやってきたんだ』と、言いようのない感動を覚えてしまう。


今日から俺は、この世界で心躍る日々を過ごしていくんだな。

爽やかな風を全身で感じながら、ゆっくり噛みしめるように、はじまりの一歩を踏み出して――謎の違和感に、ピタリと動きを止める。


どうして俺は、全身で風を感じているんだ?

怪訝に思いながら、自分の装備品を確認してみる(といっても、身体を見下ろしただけだが)。


装備品一覧

E ピンクのハート柄が可愛いトランクス


以上。

俺の自室内での基本スタイル、わかりやすくいえばパンツ一丁だ。

加えていうと、残念なことにそれ以外のアイテムは一切見当たらない。


「…………おやおや? おやおやおや?」


ちょっと待て、なんかおかしいぞ。

転生ボーナスやら女神の恩恵やらはどこいった?

虹色に光り輝く聖剣は? どんな攻撃も跳ね返す伝説の鎧は? 

なして俺はこんな格好で――――


「って、やっべ!」


数十秒のラグのをはさんで自分がほぼ裸だという事実に気づいた俺は、すぐさま辺りを窺う。

幸い、人影らしいものは見当たらなかった。


この世界の文化や法律がわからない以上、裸に近いこの姿を人目に晒すのはかなりリスキーだ。

下手をすれば一発でお縄どころか、そのままこの世界からおさらばしかねない。

そんな展開はあんまりにもあんまりなので、ここは安全確保のために一旦情報収集に回るとしよう。

どうやらここは街道沿いのようだし、待っていれば誰かしら通りかかるはずだ。

道行く人の姿を見れば、どれくらいの文明レベルかもおおよそわかるだろうし。


少し離れたところにおあつらえ向きな茂みを見つけ、ひとまずそこに身を隠すことを決める。

が、その数秒後。突如足の裏に謎の激痛が走る。


「――――っ!?!?!?」


すんでのところで悲鳴を飲み込んで、涙まじりの目で足もとを見る。

そこには手のひらサイズながらも鋭く尖った石と、じんわり血をにじませる足の裏が。

なるほどなるほど、泣きっ面に蜂とはこういうことをいうんだな。


痛む足を引きずりながら、俺はやっとの思いで物陰へとたどり着くのだった。

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