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おまけ話2 フィリアside

楽しんで頂けると嬉しいです。

『妾の子のくせに』

『容姿しか取り柄がないのね』

『本当恥ずかしい子だわ』


 あんたなんかに何がわかるのよ。

 不細工なくせになにいってんの。嫌な妬みね。

 そんなの知らないわよ。恥ずかしいのはあのオヤジよ。


 だから、あんたらはそこまでなのよ。

 私は違うわ。私は幸せになってみせる。

 私は綺麗よ。男なんて利用するものなの。


『大丈夫か?綺麗なんだから無茶はするな』


 あの時、手を差し伸べてくれた貴方しか私はいらない。




 綺麗なピンクのドレスに身を包み豪華な装飾品で身を飾る。髪はアッシュブロンドで瞳はブルー。

 どこから見ても皆が羨む美貌。

 私はいい人を演じて、にこやかに笑うの。それだけで皆が慕ってくれる。


 どこかの伯爵の舞踏会。いろんな人と話し終わり壁の花になっていると1人の噂好きの令嬢が寄って来た。


「フィリア様今日も見目麗しいですわ」

「そんなことないですわ。リリア様も素敵です」


 私が1番なのはわかってるわ。

 何人の男が私をエスコートしたいと言い寄っても、私の隣に似合う人はあの人しか居ないの。


「そう言えば聞きました?ルード様婚約の話が出てるみたいで、あのラクール公爵の三女なんですって」

「そうなんですね。私はお似合いだと思いますよ」

「そうですか?私はフィリア様が1番お似合いだと思います」


 あの冴えない令嬢ね。あんな地味で何も考えていなさそうな女がルード様の婚約者。


(そんなの許せない)


 ルード様の隣は私なのよ。私に優しく手を差し伸べてくれたあの横顔は忘れない。


(ルード様は忘れているだろうけど)


 私の大事な思い出。



 街のひっそりと佇む店の中に私はいる。

 母が営んでいた表向きは雑貨屋。裏は、(まじな)いを使う店。母から呪いを教わり今は私が営んでいる。

 母は5年前に亡くなり、私はグイド・ソルテに引き取られた。呪いの力を見込まれて。


「ねぇ、ダグラス公爵と繋がりないの」

「あるわけない。話しかけるのも恐れ多い」

「使えない」


(本当に使えない男。別に期待なんかしてないけど)


 グイド・ソルテ。こんな奴父親と思ったこともないし、何をしようかなんて興味ない。

 ただ、面白そうだと思っただけ。

 魅了の呪いで男どもを虜にしていくことに。


「もう少ししたら、魅惑の花を手に入れられる。そしたら、少しづつ計画を始める。店は何箇所か増やすよ」

「わかったわ」


 私にはわからないけど、金儲けの為に隣国との戦争をしたいらしい。


 しばらくすると、グイド・ソルテは気持ち悪い笑顔をしながら店を後にした。


(愛人に会いにいくんだ)


 また、愛人に貢ぐ為に大金が欲しいのね。

 母親ヅラするあの女の悔しい顔を思い描く。


(あぁ、いい気味)


 私は笑いが止まらなかった。

 あんな惨めな女なんかにならない。




「ルード様」


 どこぞの公爵家の舞踏会にルード様を見つけた。

 ルード様の隣には目障りなラクール公爵の三女がニコニコと笑って居座っている。近々、婚約を発表するらしい。


「なんで、あの方なんですか?」

「フィリア様がお似合いなのに」

「本当不釣り合いですわ」


 もっと罵られればいい。とってもいい気味ね。

 あの女を見てるとイライラするわ。


「そんなこと言ってはいけないわ。ルード様が幸せになればそれでいいのよ」


 少し悲しそうな顔をして言えば周りからは、私を擁護する言葉ばかり。気持ちいいわ。

 あの女は昔から気に食わなかった。何を言われても自分は大丈夫だと思ってる。あの目つきがイライラさせる。あの女を幸せになんかさせない。今だけよ。ルード様の隣で笑ってられるのは。


(私が隣に並ぶべきなんだから)


「フィリア嬢、少しお話いいでしょうか」

「えぇ、大丈夫ですわ。貴方は?」

「あ、あの。デューク・ナーラムと申します。今は騎士団に、所属しています」

「まぁ、騎士団だなんてお強いのね」


 冴えない男だけど騎士団は魅力的だわ。

 これで、騎士団と繋がりを持てるかもしれない。それにしてもこの男、どこかで見たことがある。たまに、ルード様の隣で話している男だわ。楽しくなってきた。


「もし良かったら1曲踊りませんか?」

「いいんですか?私嬉しいです。ありがとうございます」


 満面の笑みで笑ってやれば、顔を赤くして動揺してる。こんな事で照れるのね。可愛い人ね。私が使ってあげるわ。


「デューク様はとてもお優しい方なのですね。明日どこかに出かけませんか?私恥ずかしいので皆様には内緒で」

「ほ、本当ですか。少し、任務があるので午後からなら」

「はい!ありがとうございます」


 喜んでいる笑顔をしてこの男を喜ばせる。

 私の事を好きになりなさい。そして、私を楽しませて。

 自然と笑みが溢れる。



「フィリア、店を3つ用意した。気づかれないようにやってくれ」

「はいはい。わかってるわ」

「今日珍しく男と踊ったって聞いたぞ。お前が珍しいな」

「あぁ、騎士団の男よ。ルード様の友人らしいわ。貴族だけじゃなくて騎士団も使っちゃえばいいんじゃない?」

「おぉ、いいじゃないか。騎士団が狂い出せば国政にも影響が出るかも知れん。益々、武器が売れるぞ」


 ニヤニヤしながら頭の中で損得勘定している。最低だわこの男。でも、楽しんでる時点で私も大概だけどね。私はこの男の血を確実に継いでる。


「戦争になったらどうするの?」

「隣国を通して違う国に逃げるよ。ちょっとした伝手があってな。あいつと2人で逃げるさ。お前も一緒に逃げればいい」

「……そうね。そうさせてもらう」




 あれから計画は着実に進んでる。そして、私にもチャンスが巡ってきた。

 ルード様とラクール公爵の三女が婚約後、うまくいってないらしい。ルード様を拒絶してる噂。


(だけど、腹立たしい)


 ルード様の好意を無下にしてあの女何様のつもりなの。でも、これでデュークの出番ね。


 店で魅惑の花のお香を焚く。しばらくするとデュークが入ってくる。お香の匂いを嗅ぐと目が虚になっていく。


「貴方の望みは何」

「フィリア嬢です」

「そう。じゃぁ、私の願い叶えてくれる。ルード様と皇帝陛下の舞踏会に行きたいの」

「もちろんです」

「お願いするわ。デューク様」


 デュークは意識朦朧としたまま店の外に出て行く。これで私はルード様と接点を持つことが出たわ。ルード様の隣に私が並べる日が来るのね。



 約束通りルード様は迎えに来て下さった。馬車の中で私の隣に座っているルード様を見るのは嬉しい。


 微笑んでも、手を触れても、瞳を見つめてもルード様の興味を引き出すことは出来なかった。


(まだ、大丈夫)


 まだ時間はあるわ。あの女の悔しがる姿を見るのよ。馬車を降りてルード様は私と早く離れたいけど無碍に出来ず付いて来てくれる。会場に入り1人でいるあの女を見つけた。


「あら!ナディアさん。ごめんなさいね。貴女の婚約者借りてしまって」

「いいえ。大丈夫ですよ。お気になさらないで」

「ナディア。遅れてすまなかった」

「別に良いのですよ。でも……。ここではっきりさせましょうか。私、婚約破棄させて頂きたいのです。ですから、フィリアさんは気にしないで下さい。……それでは失礼します」


 悔しい顔を見る事は出来なかったけど、これは私が望んでいた展開だわ。思い通り婚約破棄になるかも知れない。ルード様も興味がなさそうだし。やはり、ルード様の隣は私なのよ。


「ルード様、婚約破棄になってよかったですわ」

「そ、そうですわ。ルード様には不釣り合いですもの」

「ルード様には他の方がお似合いです」


 私を慕ってくれてる令嬢たちがルード様に声をかける。もっとあの女を罵ればいい。いい気味だわ。あの女を幸せになんかさせるものですか。

 しばらく令嬢たちが笑い物にしていた。


『ダンッ』


 背後から、すごい音が聞こえた。

 綺麗な1人の男が壁を叩いた音だった。その顔は怒りに満ちている。


「あなた方はナディア嬢が他の誰にも劣る方だとお思いですか?それに、あなた方が言える立場じゃないですよね?……一度、ちゃんと鏡を見る事をお勧めします。酷く醜い方が映っていますよ。ナディアはあなた方よりとても綺麗で聡明な女性です」


 なんなの?楽しかったのに。あの女を擁護するなんて。気に入らない。綺麗な顔してるくせに見る目がないわ。

 いつの間にか慕ってくれてる令嬢たちはいなくなっているし、本当最悪な気分。

 いつの間にかラクール公爵がいてこっちを見た。ここで私がルード様から離れなければ勘違いする。余計なこと言わずルード様が私から離れないように服を掴んで離さなかった。

 勝手に勘違いすればいいわ。


「ルード君申し訳ないが、婚約破棄を受け入れてもらえないだろうか。ナディアにも、君にも時間が必要だと思う。ルード君にも迷惑かけて申し訳ない」


 本当に面白い。これで婚約者はいなくなった。これで私の呪いを使えばルード様は私のモノになるんだわ。笑いたい気持ちを押さえてルード様の隣にいる。

 ラクール公爵と話し合えたルード様はデュークを探しているがここにはいないから見つからない。

 仕方なくと言った感じで私と一曲踊ってくれた。

 こんなに近くにいる。横顔が素敵だわ。凄く幸せな気持ちは久しぶり。


(貴方様が隣にいてくれれば私は幸せ)




 最近、貴族や騎士団が街で暴れているといった事件が多発している。もちろん、私が関わっている。魅惑の花と呪いを組み合わせば操れない相手など私にはいない。


「フィリア、上手くいってるじゃないか」

「私にかかればこんなものよ」

「ちょっと問題が出てな。ノア殿下が俺たちの事探ってるらしい。この植物使えないか?」

「使えるわよ。強力な毒が出来るわ」


 隣国でしか採取出来ない、毒になる夜光草。


「隣国のスパイに皇子を殺されたとなると戦争が起こるな。これで邪魔者はいなくなるし戦争は起こる。あぁ、楽しみだ」

「本当、楽しみだわ」


 ノア殿下。あの女を擁護した綺麗な男。皇子だなんて。最近は皇子の周りをうろちょろしてるらしいし、あの女には不幸になってもらわないといけないのよ。


「ついでにラクール公爵家も潰せばいいんじゃない」

「それもいいな。少し考えるとしよう。大丈夫だと思うが気を付けてやれよ」

「わかってるわ」


 嬉しそうにグイド・ソルテは愛人の元に向かった。

 あと少しで私はルード様を手に入れられるのよ。

 私だけが幸せになればそれでいい。

 だから、あの女も擁護する皇子もみんな不幸になればいいのよ。




「いらっしゃい。デューク様」


 いつものように魅惑の花のお香を焚き、呪いをかける。虚のデュークが来た。これが終わりで始まりなのだ。


「誰が欲しいの」

「フィリア嬢です」

「私の言うこと聞いてくれる」


 デュークと私の間にある机に昨日出来たばかりの毒々しい瓶を置いた。


「これをノア殿下の飲み物に入れて欲しいの。これは力が湧いてくるものよ。他の人に渡したらダメ。ノア殿下に飲ませたら、次は貴方が飲むのよ。わかった?」

「はい。わかりました」

「すぐじゃなくて良いわ。貴方の出来そうな日で結構よ。失敗はしないでよね」

「フィリア嬢の為に」


 デュークが虚のまま出ていく。

 邪魔者はいなくなる。あの女の苦しい顔が目に浮かぶわ。凄く嬉しい。

 これで準備が整ったわ。いつでもいいように用意しなくては。私から離れられないように。


(さぁ、次は貴方の番よ)




 デュークに毒を渡してから1週間。まだ皇子には毒が盛られていないのか何も話を聞かない。

 聞くのはルード様の異変。荒れているそう。

 心が乱れれば隙ができ相手の心に入り込める。

 今が頃合。ルード様は任務で街にいると聞いたし、今しかないわ。


 甘い魅惑の花のお香をいつもより多めに焚く。ルード様だけが反応する様に呪いをかける。


(もう少し)


 足音が店の前で止まる。扉を開き抵抗していた瞳が虚になって歩いてくる。私は微笑み声をかけるだけ。


「ルード様。我慢なさらないで。心に素直になれば良いのです」


 ルード様は荒々しい瞳を宿している。嫌いな人がいるのね。これは好都合だわ。


「さぁ、コレを」


 店の棚の奥から毒々しい瓶を出し渡す。


「コレを邪魔な人に飲ませて下さい。天罰が下されましょう。決して貴方は飲んではいけませんよ」


 虚なルード様が瓶を懐に入れて店から出て行く。

 貴方が、誰を殺したっていい。殺したい相手を殺せばいい。

 これで、貴方は私の物。ルード様が地に落ちれば私が手を差し伸べてあげられる。そして、逃げればいい。私たちを知らない国へ。


(ルード様)


 高揚感が溢れて心臓の鼓動が止まらない。

 私たちはずっと一緒に居られる。





 私が捕らえられてから何日過ぎた。

 なんでこうなったの。信じられない。

 毎日同じ事を考える。


 皇子が毒を飲んだと報告が来て喜んでいた時に、街で騎士団に囚われた。

 皇子が生きていた。デュークが失敗したのだ。

 それに、グイド・ソルテも色んな証拠を押さえられてる。

 ルード様も誰も手にかけていなかった。

 どこで間違ったんだろう。あぁ、最初から間違っていたのかも知れない。本当に最悪。


 暗いジメジメした1日1食の美味しくもないご飯を持ってくる時しか誰かが来ないはずの地下牢に靴の音が聞こえる。とうとうなのかと思う絶望と同時に、あの人ではと希望を持ってしまう。


「フィリア。お前の父が全てお前が企てたと言っていたが間違いないか」


 牢屋の前にルード様がと数人の騎士が立っていた。

 あの男は最低だわ。私に全ての罪を着せようとした。


「私は知らない」

「お前の店から書類が出てきた。隣国の貴族とのやり取りの密書がな」


 確かにお香の事で売買のやり取りしていた。でも、密書の様な書類のやり取りなんかしてない。

 あの男にはめられた。もう、逃げられない。

 ルード様は1枚の紙を私に見せる。


「皇帝陛下からだ。フィリア・ソルテ。明日、死刑を執行する。もう、お前の父親は国家反逆罪で今頃骸になってるだろう」


 あぁ、あの最低な男死んだの。本当あっけない。人なんて本当あっけないわ。


「ルード様。5年くらい前に襲われた女の子を助けた覚えはありませんか」

「何を急に」

「覚えていませんか。暴れて傷だらけになった女の子を」

「そんな前の事覚えていない。襲われた女性を助けたのは多くあるからな」


 去り際、ルード様は振り向いた。


「お前も身を以て償え」


 覚えてはいなかった。そりゃそうよ。誰にでも国の為なら手を伸ばす人だった。

 助けた人を覚えてなんかないわ。

 それに、私は変わった。今はあんなみっともない小娘じゃない。貴方に釣り合う為に必死に綺麗になった。


(疲れたな)


 私はしゃがみ込み動けなかった。




 騎士に連れられ階段を登る。

 処刑台に膝を突き座らされる。数多の血を吸っている木の台は汚い。

 私は幸せになる事を諦めたわけじゃない。生きることを諦めたわじゃない。

 ただ、全てが終わるだけよ。


(最期まで私は綺麗なのよ)


 受け入れてやるわよ。私の運命なら。

 最期まで微笑んでやるわ。私は泣かない。今までの事を後悔なんかしない。


「やるなら早くおやりなさい」


 にこやかに笑ってやる。

 首に冷たい感触。目の前が真っ暗になる。

 痛さなんか感じない。


(ただ、貴方が好きだった)


 これがフィリア・ソルテ。

 私の人生よ。



読んで頂きありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございました!

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[一言] こんなにルードが好きだったなんてー!(笑)
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