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楽しんで頂けると嬉しいです。

 謁見の間の扉が大きな音を立てて開いた。


「申し訳ございません。皆様に少しお時間頂きたく思います」


 数名の騎士が入ってきた。真ん中には鋭い視線で貴族当主を見るグリーンの瞳の貴方が立っていた。ノアは私の手を握って微笑んでくれた。

 一瞬ノアと貴方は目配せしている。


(一体何が起こってるの?)


「ルード、一体どんな用件だ」


 ノアがそう問うと、貴方が一歩前に出た。


「騎士や貴族の間で問題になっている事柄に疑問を持ちまして、調べていましたらとんでもない事がわかりました」

「ほう。どんな事が判ったのだ」


 皇帝陛下は周りの貴族当主を見て眉をしかめながら言う。


「ソルテ伯爵を始め数名の貴族当主のお屋敷から、隣国から密輸したであろう武器、並びに身体に影響を及ぼす毒薬やお香を見つけました」


「な、何を馬鹿な」


 ソルテ伯爵は立ち上がり詰め寄ろうとするが、騎士によって椅子に座らされる。ソルテ伯爵は表情を強張らせていた。


「それに、毒薬はこの地域では採取不可な植物な為、ソルテ伯爵が隣国の貴族と手を組んでいる可能性があります」


 するとノアはソルテ伯爵に対し冷淡に笑いながら一枚の紙を皇帝陛下に渡す。


「奇遇ですね。僕も隣国の貴族の間者を捕らえました。そしたら、ソルテ伯爵と隣国のカルロ公爵の密書を持っていましたよ」


 皇帝陛下は密書の内容を見ながらだんだんと怒りの表情を濃くしていく。


「そんなでたらめ。……だ、誰かにはめられたんだ。証拠はどうなっている」


 ソルテ伯爵の表情は見る見るうちに蒼くなっていく。何人かの顔色も蒼ざめていく。


「証拠ですか?そうですね。まぁ、各屋敷から押収した武器と、毒薬お香の他に密書」


 扉の騎士に指示して騎士は扉の向こうに消える。


「……この方が1番の証拠でしょう」


 騎士が後ろ手に縛られたフィリアを連れて来た。


「フィリア・ソルテは街にお店を開いては人を操るお香と(まじな)いをして騎士や貴族に問題行動を起こさせていました」


(……フィリア)


 今までのフィリアの風貌と違い。煌びやかさがない。


「わ、私は知らないわ。どうして信じてくれないのですか。ルード様」


 フィリアの表情は不安でブルーの瞳は今にも泣き出しそうにしている。


「フィリア・ソルテの店に行った者は甘い香りのお香を焚いて、呪いをかけられる。訪れた者は何もかも覚えていない」


『何もかも覚えていない』その言葉に、フィリアは先ほどの不安の表情から一変し笑い出す。


「あははっ!それなら、私じゃないかもしれないじゃない」

「ですが、かく言う私も彼女におびき寄せられました。しかし、私は店の場所を覚えています。数名の騎士も覚えていまして、何箇所かある店も全て調査済みです。どうしますかフィリア・ソルテ」


 フィリアは口をつぐんだ。

 貴方はフィリアを冷たい瞳で睨み、手にはお店のある場所が書かれている紙をノアに渡す。


「後、これです。ノア殿下に使われた毒です。店には何個か毒瓶がありました」


 忌々しそうに毒瓶をノアは睨む。ノアに握られている手はすごく熱く顔にもうっすら汗をかいている。


「わかりました。皇帝陛下、これが本当の事だと国家反逆罪になりますね」


 ノアは皇帝陛下の方を向き、指示を仰ぐ。


「ノアよ。この事に関して全ての権限をお前に任せよう。解決に向けて頼むぞ」


 ノアはうなずきいつもとは違う、少し低くなった声で淡々と言う。


「これからの調査は皇帝陛下公認の調査団を派遣する。ルードよ、案内を頼む。さて、ソルテ伯爵とダリア男爵とダリデオン男爵、そしてデルダーク公爵は調査が済み疑いが晴れるまで地下牢に入ってもらおう。屋敷の捜査、家族も監視させてもらう」


 騎士が続々と入室して、疑いがある貴族当主を連れて行く。疑いのかけられた貴族当主たちは、やっていないと繰り返し叫んでいた。

 そしてフィリアは壊れたようにずっと笑っている。


 他の貴族も退出し、皇帝陛下も後で説明を求めるとしてお帰りになられた。

 ノアと私と数名の騎士だけになる。


「ナディアありがとう」


 笑うノアの顔色が悪い。緊張が解けたのか、糸が切れた様に力なく崩れていくノアを慌てて支える。


「ノア!ノア!」


 熱が上がり苦しかったのに、今まで気丈に振る舞っていたのだ。気を失ったノアはアランに運ばれていく。

 私はノアの近くに居たくてアランに無理を言ってノアが目を覚ますまで看病をさせてもらう事になった。



 あれから2日たったがノアの意識は戻らない。

 ノアの熱は下がらず、ずっと苦しそうにうなされている。

 アランが解毒薬を作っているがなかなかうまくいかないらしい。

 私はノアの手をずっと握りながらいつ目が覚めてもいいようにノアの顔を見てる。

 小説では、ずっと声をかけると大事な人は目を覚ましてくれる。


(小説と現実は違う。だけど……)


「ノアの嘘つき。どこが頑丈なのよ」


 話しかける事しか出来ない自分が歯痒い。ノアは1人で戦ってるのに。

また一緒に笑い合いたい。一緒に……。


「ノアが早く目覚めないと、私の決心が鈍ってしまうわ。お願い。ノア」


(私の願いは届かないかもしれない)


 何度、泣きそうになっただろう。ノアが目覚めた時は笑顔でいたい。泣きたくないのに。


(私の気持ちを、まだノアに伝えてない)


「目を覚まして。ノア、好きなの。私を花嫁にしてよ」


 握っていたノアの手が握り返してくれる。弱々しい力だけど確かに感じる。


「……ナディア」


 アンバーの瞳が薄く開く。


「……ナディア。本当に僕の花嫁になってくれるの?」


 久しぶりに聴くノアの声は、少しかすれていて小さいけれどはっきりと私の耳に届く。

 泣きたくないのに、大事なノアの言葉なのに。

 泣きながら笑っているであろう私の頭を優しく撫でてくれる。


「ノア。私、ノアと一緒に生きていたいの。だから……」


 今まで眠っていたのかと疑う力で引っ張られ、ノアの胸に倒れ込む。顔に手を添えられ、優しい口付けを交わす。


「ごめんね。凄く嬉しくて我慢できなかった」


 自分が今何をしたのか理解するのに時間がかかる。理解した途端、全身が真っ赤になる感覚、心臓の鼓動の音がどこまでも聞こえてしまうんじゃないかと思うほど大きく鳴っている。

 ノアも耳を赤く染めて嬉しそうに笑っている。


 この後、アランがノックもせず入ってきて凄く恥ずかしく気まずかった。





「でも、良かったです。ノア殿下が元気になられて。これ以上、私には仕切れなかったので」


 ノアが意識を取り戻してから、3日。


「ルード、申し訳ない。自分は毒に強いから大丈夫だと思ってたんだけど、甘く見てはいけなかったね」


(2人はこんなに仲が良かったかしら)


「ナディアごめんね。ルードには、ちょっとした

 おとりになってもらった。あっ、ナディアは渡せないよ。僕の大事な婚約者なんだから」


 ノアが私の身体を抱きしめて離してくれない。恥ずかしいが、その体勢のまま気になった事を聞いた。


「あの、おとりとは?」

「ノア殿下がフィリアの店を調査していて、そこに入り込んだ。怪しい店なのは分かっていたから部下を張り込ませて、呪いをかけられている私を呪いが解けるまで牢に閉じ込めてもらった」

「凄いな。良くあの日に間に合わせたよ」


 予め決めていた期間に間に合うように呪いを解いたのだ。

どんな事があってもノア殿下は死なせはしない。と高らかに宣言していた。


(やはり、騎士様なのですね)


「ルードは本当にむかつくけど優秀だよね」

「私もあまりノア殿下には好意を抱いてはないので」


 お互い笑い合いながら牽制し合っている。

 私は2人が幼馴染みだった事が1番驚いている。




 ステンドグラスがキラキラと光り私とノアを包む。優しい風が吹き私たちを祝福している気がする。


「ナディア。愛してるよ。必ず僕が幸せにするからね」


 正装のノアの隣に白いドレスで並ぶ私。

 大好きなノアの横顔を見て幸せに感じる。


(ノア。ありがとう。私は幸せ者だわ)


 誓いの口付けを交わし、赤い絨毯の上を歩く。


 私の腕の中には99本の白薔薇。

『永遠の愛』


 2人で手を繋いで笑い合いながら進んで行く。


 私は4度目の人生をノアと一緒に歩んで行く。





読んで頂きありがとうございます。


誤字脱字報告ありがとうございました!


次からはおまけの話をしていきたいです。

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