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楽しんで頂けたら嬉しいです!

 王宮からの早馬が早朝に屋敷に着いた。

 知らせを受けたエマが慌てて、まだ眠っていた私を起こした。


「お嬢様。ノア殿下が……」


 最悪の目覚めだった。


「ノア殿下が、倒れ意識が戻られません」


 ノアに何があったのか。

 今日はロージーをノアの宮殿に連れて行く日だった。いつもと同じ様に、ノアと楽しくお話ししてお茶をして……。ノアといる時間が幸せだった。

 一瞬にして目の前が真っ暗になる。全身の血の気が引くのを感じ、倒れそうになるのを我慢してエマに言う。


「ノアの所に行くわ」


 早くノアに逢いたい。安否を確認しないと。

 お父様に言って、すぐに馬車を出してもらう。

 不安で胸が押し潰されそうになる。



 王宮では門の所でアランが待っていた。


「ナディア様。お待ちしておりました」

「アラン」


 いつもの庭園を通り過ぎてノアの部屋に向かう。

 その間、アランは何も話をしてくれなかった。

 不安が膨れ上がり部屋までの時間がすごく長く感じる。

 早く逢いたいのに、怖くて逢いたくない。

 部屋の前でアランが扉をノックし開けて、私が入ると素早く扉を閉めた。


「ノア」


 奥の方に天蓋付きのベッドがある。

 恐る恐るベッドに横たわるノアに近づく。


「ナディア」


 声とともに手が伸びて抱きしめられた為ベッドに倒れ込む。


「ごめん。ナディア」

「……ノア」


 ノアが生きてる。抱きしめられたまま耳元で弱々しいノアの声が聞こえる。感情が抑えられず涙が溢れる。


(本当に良かった。ノアが生きてる)


「心配かけちゃったね。僕は大丈夫だよ」


 ノアが生きてる事を確認する為にノアを抱きしめる。泣き止まない私をノアは笑って優しく頭を撫でてくれた。


「意識が戻らないって」

「ちょっと危なかったけど、大丈夫。僕は頑丈に出来てるんだからね」


 ノアは上半身を起こそうとするが、身体に力が入っていない。


「眠って身体を休めないといけないわ」

「その前にしなきゃいけない事があって」


 力が入らない身体で起き上がる。フラフラしてるがテーブルに掴まり立っている。


「僕が盛られた毒は、隣国でしか採取出来ない植物の毒なんだ。王族の僕がその毒で死んだとなれば隣国と戦争になりかねない」


 ノアはローブを羽織り椅子に座ってテーブルの上の書類を手に取る。


「最近、騎士や貴族の間でおかしな事があってね。自分の理性に歯止めが効かなくなるみたいで、問題を起こす者が多いんだ。それを操ってる人物がいる。もう目星もついてる」

「誰がその様な事」


 書類を私の方に見せる。


「フィリア・ソルテ。そして、グイド・ソルテ伯爵。伯爵は何人かの貴族と武器を密輸し販売しようとしてる。今この国は隣国との良い関係を築いている。だから、何かしらの綻びを作りたいんだ。戦争を起こして武器を販売する為に」


 フィリア・ソルテ。ブルーの瞳と嘲笑う表情。

 私のお父様が外交の仕事をしているから、ラクール家を蹴落としたかったのね。1番扱いやすい私を利用して無実の罪を着せた。もしかしたら、私が死んだあとラクール家も大変な事になっていた可能性がある。


(私はフィリアの所為で死んでいたのね)


フィリアに怒りを覚えた。


「ナディア。大丈夫?」


 私に反応がなかったので心配されてしまった。


「大丈夫よ。ノアに毒を盛ったのは誰だったの」

「あぁ、僕がちょっと油断しちゃって。騎士団の……」


 ノアは苦笑いして毒を盛った人物を言おうとした時、扉がノックされ申し訳なさそうにアランが入って来た。


「ノア様。もうそろそろ時間です」

「そうか。ごめん。この話は後で話そう。今はナディアに助けてほしい事があるんだ」

「私に助けてほしい事ですか?」


 ノアが満面の笑顔で私の手を掴む。


「僕が婚約したい人を皇帝陛下に御目通りさせたいんだ」


 私はその笑顔に見惚れていた。




 私は皇帝陛下に御目通りするためにノアの用意していた緑色のドレスに着替える。

 ノアの連れて来た侍女が支度を手伝ってくれる。


「ナディア様、とてもお似合いです」

「ありがとう」


 ノアは自分は死んでいない事。グイド・ソルテ伯爵の企みは失敗したと知らせる事。皇帝陛下に会いソルテ伯爵の企みは分かっていると牽制する事。私はまだ毒が抜けきれていないノアを支える為に一緒に皇帝陛下に会う。

 皇帝陛下にソルテ伯爵の事は報告済みで、証拠を集め次第ソルテ伯爵を失脚させる計画だと言う。



「ナディア支度できた?」


 侍女が扉を開けると、正装のノアとアランがいる。


(とても似合っている。綺麗で格好いい)


「……素敵だ。ナディアありがとう」


 私の前に跪き私の手の甲にキスをする。


「ノ、ノア」


 恥ずかしくなって心臓の音が他の人に聞こえるぐらい鳴ってる気がする。


 ノアに手を引かれて謁見の間に行く。途中アランがノアを支え休みながら謁見の間についた。

 私はちゃんとノアを支えられるのか不安だけど、頑張らないと。少しでもノアの力になりたい。


「さぁ、行こうか」

「うん」


 扉の前の騎士がノアを見て扉を開ける。


「第3皇子ノア殿下、ラクール公爵三女ナディア様謁見を許可します」


 奥の王座に皇帝陛下が座っており、赤い絨毯が扉から王座に向かって続いている。赤い絨毯に沿うように貴族当主たちの席があり多くの当主が座っている。

 急の呼び出しにも貴族当主は集まっていた。


 ノアに寄り添いながら赤い絨毯の上を歩く。お父様が心配そうに見ている。


(お父様もすべて知っているのね)


 ノアが目線で左側にソルテ伯爵がいる事を教えてくれる。

 皇帝陛下の前で頭を低くして陛下が何か言うのを待っている。緊張して少し震える。



「ノア、ナディア・ラクールよ。頭をあげよ。……この可愛らしい令嬢がノアの想い人か」


 皇帝陛下の顔が優しくノアや私を見ている。

 陛下はノアが大切なんだわ。


「はい。お慕いしている方です。まだ、返事はもらえていませんが近い将来、良い返事を期待しています」

「そうか。ナディアよ。ノアはいろんな事を考えておる。大変な事に直面すると思うが支えてやって欲しい」


(なんかもう婚約が決まったみたい)


 ノアを見ると満足そうに笑い私を見ている。


「はい。私がノア殿下の力になれるなら本望でございます」


 陛下が貴族当主の方へ探るような目線を向ける。特にソルテ伯爵に目線を合わせながら言う。


「皆の者よ。我が息子ノアとナディアをよろしく頼む」


 ソルテ伯爵の口元が歪んでいた。

 陛下の視線は、ソルテ伯爵のしている事を全て把握している。ノアとナディアに何かするとどうなるか分かっているな。

 そんな陛下の声が聞こえてくるみたいだ。


 しかし、ソルテ伯爵は冷ややかな笑顔で述べる


「陛下、失礼と知って申し上げます。ナディア・ラクール令嬢は婚約破棄をされた方です。ラクール公爵には申し訳ないですがノア殿下には不釣り合いな方だと思います」


 ソルテ伯爵の言葉に賛同する貴族も数名声を上げる。私がノアに相応しくないと。


 王家とラクール家が婚約で絆を深めれば、ソルテ伯爵の思惑が難しくなる。外交の基盤が強くなる。私とノアの婚約に反対している貴族はソルテ伯爵の仲間と見た方が自然。


「だから、なんだと言うのだ。ノアと私が決めた事。ソルテ伯爵たちに決めてもらう事ではない」

「私が心から慕っている。それだけではいけないのですか?」


 皇帝陛下とノアの物言いにソルテ伯爵たちは怯む。


 その時、謁見の間の扉が大きな音を立てて開いた。


「申し訳ございません。皆様に少しお時間頂きたく思います」


 数名の騎士が入ってきた。真ん中には鋭い視線で貴族当主を見るグリーンの瞳の貴方が立っていた。




読んで頂きありがとうございます!


誤字脱字報告ありがとうございました!

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