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転生黒太子の溺愛

ハシュティ帝国第一皇位継承者、エドヴァルド・ハシュティ。




色の濃淡でそのものが持つ魔力の量が決まっていると言われているこの世界ディミトリアスで、ハシュティ帝国を建国した始祖である剣帝、アレクシス・ハシュティ以来持ちえなかった混じりけのない純黒な黒髪・黒目を持って生まれた、この世界で唯一の黒色保持者である。




その意志の強そうな怜悧な目鼻立ちの男らしい美貌で、帝国中の女の子達から絶大な支持を受けており、婚約者がいると分かっていても側室候補に名を連ねようとするご令嬢達が後を絶たない。


しかし、エドヴァルド・ハシュティが婚約者である侯爵令嬢イザベラ・チェンヴァレンのことを溺愛していることは帝国内だけでなく他国の者達の間でも有名で、妾や側室を持っていることが暗黙の了解となっている貴族世界の中で、「イザベラ以外を娶るつもりは無い」ときっぱりと宣言していることも彼の人気に拍車をかけていた。




また、幼き頃より武術や戦術、魔法に関して天賦の才を発揮し、ほとんどの貴族子息達が16歳で初陣を飾ることが多い中、若干13歳という若さで帝国軍の大将軍として初陣を飾り、堂々とした様子で戦場に立ちその有能さを発揮した。


13歳とは思えないほど歴戦の戦士をも遥かに凌駕する圧倒的な強さで、先陣を切って戦場を駆け巡り口元に笑みを携えながら確実に敵を屠る姿から、最強(凶)の黒太子または死神と呼ばれ、『ハシュティ帝国の皇太子を敵に回したら最後だ』と近隣の諸外国の者達から恐れられていた―――。











きゃー!!と女の甲高い悲鳴が店の中に響き渡る。




日本でもっとも有名な歓楽街で、某T大学経済学部卒業の高学歴男子ということを武器に、NO.1ホストとして働いている俺は店でいつも通りに接客をしていた。




会話をしながら楽しく飲んでいると、ボーイに1番テーブルにお客様ですと耳打ちされる。


了解と返事をし、対応していた女の子にまた後でねと別れを惜しむかのように寂しげに言って、移動するために席を立つ。




前に目線を向けると、最近来ないなと思っていた上客の女が俯きながらいつの間にか目の前に立っていた。


驚きはしたもののすかさず常連の女の子達に人気の甘い笑みを浮かべ、久しぶりと声をかけながら近づくと何の前触れもなく腹部に激痛が走った。






「え……?」






突然の出来事に呆然と立ち尽くし、尋常ではない痛みを発している腹部へと視線を落とすと、包丁と思わしき物が俺の腹に刺さっていた。






「 隼人がわるいのよ!貴方には私がいるのに、こんな女達なんかに愛想を振りまいたりするから!!自業自得よ!」






他の女の子達と同じように一定の距離を保ちながら、勘違いが起こらないよう、客としての対応しかしていない俺のことを自分の彼氏だと公言したり、家にまでついてこようとしたりと思い込みの激しい感じの女だと思っていたが、まさかこのような行動に出るとは……。




刺された腹部から大量の血が流れ意識が朦朧とする中、ボーイに抑えられながら髪を振り乱して金切り声を上げる女の声と、警察に電話しろ!違う!救急車が先だ!!と怒声が響く喧騒とした店の音を聞きながら意識を手放した。










「んっ……」






カーテンの隙間からもれる明るい陽射しに眉を寄せながら目をゆっくりと開く。


見知らぬ天井が目に入り、ここはどこなのかとけだるさの残る重い体を起こして辺りを見渡してみる。




見るからに高そうなアンティーク調の豪華な家具が置かれており、天蓋のついたベッドで寝ていたらしい俺にかかっている布団も、シルクのような柔らかな手触りでこんなに豪華な病室がある病院が日本にあると聞いた事がないので、ここが病院ではないことをまず理解した。






「……エド様?」






ガチャっと扉が開く音がしそちらの方に顔を向けると、人形のように愛らしく目鼻立ちの整った美幼女と目があう。


女の子は鈴の音のような耳触りのいい声で名前らしきものをポツリとつぶやくと、信じられないものを見ているかのようにアメジストのような瞳を今にも零れ落ちそうなくらい見開いて固まってしまった。






「イザベラ……」






何故か知っているその女の子の名前を呼ぶと、くしゃりと今にも泣き出しそうな表情になり、黒紫色のふわふわとした髪を舞い上がらせながら走りよってきて、ベッドによじ登ると俺に抱きついてきた。




周りの景色に気を取られて今気づいたのだが、どうやら俺もイザベラと同じくらいの大きさになっているらしく、泣き出してしまったイザベラをあやしながら小さくなった手を呆然と見つめる。




なぜこのような状況になっているのかときちんと働かない頭で考え込んでいると、イザベラの後ろにいた侍女が慌てて外に出ていくのが目の端に見えた。






泣きながら俺の胸に抱きついていたイザベラは、先程出ていった侍女が連れてきた医師にやんわりと離され、俺は大人しく医師の診察を受ける。


医師が何かを呟き、俺の体に手をかざすと魔法のような暖かい不思議な光が俺の体を包み込む。


その様子をじっと見ていた医師は安堵の息を吐くと、もう大丈夫でしょうと力強く頷きながら診断を下した。


その言葉を聞くと医師と一緒に入ってきた豪華なドレスを身にまとっている、ハリウッド女優顔負けの美人さんが俺のことをぎゅっと抱きしめる。






「あぁ神よ!感謝致します!!


貴方が高熱を出して3日も目を覚まさないから、もうこのまま儚くなってしまうのではないかと私は覚悟しておりました……。


エドヴァルド、生きていてくれてありがとう。」




「・・・・・・心配をかけてごめんなさい、母上。」






目の端に涙を溜め安堵の息を吐く美女を抱き返すと、するりと言葉が出て来る。




まだ微熱がありますので安静にと医師に言われ、母上やイザベラ達は名残惜しそうに部屋から出ていった。






シンと静かになった室内でベッドに寝そべりながら、先回しにしていたこの状況のことを分析し始める。




先程医師から聞いたのだが、俺は原因不明の高熱で3日3晩寝込み、生死の境を彷徨っていたそうだ。




以前インフルエンザで高熱が出た時のように身体がだる重いので、先程の医師が言っていることは本当なのだろう。




この小さな体で大の大人ですらも苦しむ高熱など耐えられるはずもない。


なぜだかわからないがたぶんその拍子に前世の記憶を思い出したのだろうと俺は結論づける。




あの思い込みの激しい女に刺されたあとから全く記憶がないので、多分出血多量が原因で死んだのだろう。


やっと大学卒業したのに24の若さで死ぬとか悲しすぎるが、まあ起こってしまったことはしょうがないし、実際こうして生きてるわけだから、なんの問題もない気がする。




物心がつく前に両親ともに事故で亡くなり、両親の代わりに育ててくれた祖父母も大学入学前に相次いで病気で亡くなっているので、大切な人もいないあちらの世界に思い入れなど一切ない。




現世の(というのも変なのだが)俺は、エドヴァルド・ハシュティという名前で、一週間程前に5歳の誕生日を迎えたばかりのハシュティ帝国の第1皇子である。




俺が目を覚まして初めに目にした美幼女は、この国で宰相をしているセドリック・チェンヴァレン侯爵のご令嬢であるイザベラ・チェンヴァレンというみたいだ。




彼女とは年が1歳違いで、まだ今以上に小さい頃からの遊び相手であり幼馴染だ。


俺達が生まれた時からの親同士の取り決めで決まっていたらしく、1週間前の俺の誕生日の日に婚約者であることを大々的に発表されたらしい。




らしいというのは俺の中にあるエドヴァルドの記憶が言っているからだ。




イザベラは幼い外見ではあるものの綺麗な顔立ちをしており、将来美人になることは確実だろうから、俺の中で婚約に対する反対などない。




前世のように女の子みんなに愛想を振りまくのではなく、現世ではイザベラのみを愛そうと固く心に決める。






元からあったエドヴァルドの記憶と前世の俺の記憶がだんだんと混じり合っているようで、流れ込んでくる記憶を整理しながらこれは自分のことなのだと、不思議とすっと納得することが出来た。




1つ1つ分析し、ここまで考えてわかったことがひとつある。






自分でも信じられないのだが、どうやら俺はかの有名な異世界転生というものをしてしまったみたいだ。

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