二人の親友
七海の一日はベットの上から始まる。
ピピピッッっと鳴る目覚ましを止め、眠たい体を起こして、パジャマから学校の制服のセーラー服に着替えて下にある洗面所まで行き。
蛇口をひねり水を出したら二回ぐらい顔にパシャっ、パシャっとかけて目を覚まさせる。
「ふぅ。よし! 今日も歩君を可愛いがる!」
顔を少し強めに叩き最後の目覚ましをさせてから鏡の前に立って身嗜みを整えだした。
「~♪」
上機嫌に櫛を使って髪を梳いて、前髪を整えて歩が好きと言った匂いがする香水を少しふってからリビングの方に行った。
「~♪」
「あんた、ここ最近上機嫌だね」
親にそう言われるぐらい最近の七海は上機嫌でその理由も知っている親は若干呆れている。
知っていても一人娘だからどうなってるか気になる親心からそう言った話題を振ってしまう。
「うん! だって、歩君に会えるのは私の楽しみなんだもん!」
朝から元気に答える七海にお母さんは呆れた顔で「はいはい」っと返して。少し嬉しそうにもしていた。
「はっはっは。七海は本当に歩君が好きなんだな」
笑いながら言う七海のお父さん。
このお父さんは娘が選んだ相手なら文句は言わないっと言う良いお父さんだ。
だが、もし、娘を不幸にするなら………………っと言う感じに不幸にしたら何をしでかすか分からない少し娘バカなお父さん。
七海は朝食を取り終わると玄関に行って靴を履き。
「行ってきまーす!」
元気な声でそう言って七海は学校に向かう。
学校は、歩が家の事情で一緒に行くことが出来ないので一人で登校したり友達と登校することが多い。
「みぃー!」
後ろから呼ばれる声がしたので振り向くと。
薄茶色の髪をポニーテールにしてて大きな胸を揺らして私の横に小走りで駆け付けてくる女の子が居た。
和泉 真矢。明るく元気で人当たりも良く可愛らしい女の子。
「おはよう。真矢」
「うん! おはよう!」
真矢はとっても良い子。余り人と関わるのが好きじゃなかった私にも気さくに話しかけて来てくれて今ではかなり仲良くなったと思う。
だけど、この子は危険。歩君に一番近づけちゃ駄目な女の子でもある。
理由は、胸が大きい。胸が大きいから一番近づけたくない女の子。
歩君も男の子だから胸が大きい女の子が好きに決まってる。
別に男の子が皆、大きいのが好きとは決まって無いが七海の男に対する定義がそうなってるらしい。
決して私は小さく無いと思う。前に測った時には平均より少し上だったけど、絶対に真矢はそれ以上。
「真矢。歩君を取らないでよね?」
「え。別に取ったりしないけど?」
二人に限ってそんなことは無いと思うけど念のため、念のっっっために釘を差しておく。
心配は無いと言わんばかりの七海だがじっっっと真矢の胸を妬む様に見ており、それに勘づいた真矢は溜め息をついた。
「安心して。絶対に間宮君は取らないから」
「え。あ、うん」
そんな言葉を掛けてくれるのにまだ心配なのかじっっっと真矢を横目で見ていた。
真矢はそれに気づいておりまたしても溜め息をついた。
「はぁ。まぁ、良いからさ、最近はどう? 間宮君と上手く行ってる?」
「うん。最近はね! 前まで嫌がってたキスも普通にしてくれる様になったし、それなりにかな?」
歩はまだ付き合って数日からキスを求められ恥ずかしいから拒否をしていたら七海が泣くので一回したらそこから何度もされ恥心が無くなってしまい今では求められば普通にしてしまう様になってしまった。
「ふーん。順調ってことね」
「うん!」
さっきまでの嫉妬の顔とは至って変わり笑みになりホッとする真矢だった。
学校に着くと二人はそのまま教室に行き、入ったら歩は居ないので自分達の席に座った。
「歩君まだかな~」
「七海は本当に間宮君にぞっこんだね~」
「うーん。歩君が悪いよ。あんな可愛い顔で抱き付いて来たり、可愛い顔で上目遣いされたり、もう! 可愛くてたまらない!」
最初は大きな声で悪いとか言ったのでびっくりした真矢だったがその後に惚気だしたので若干呆れ気味で「はいはい~」っと適当に返事をして返していた。
そんな風に歩のことを話してると歩が教室のドアを開けて入ってきた。
だが、歩は何処か不機嫌な顔をしていてそのまま七海の所に歩いて行った。
七海に話しかけるかと思いきや斜め後ろが歩の席なので歩は七海に話しかけること無く席に座った。
歩は見ての通り機嫌が悪い。だから余り誰かに近寄ろうとはしない。間違って機嫌が悪いのを他人に飛ばしたくない歩の気心だ。
そんなことを知っては居る七海は本来ならばそっとしといてあげるのが良いのに我慢が出来ず歩の後ろから飛び付く様に抱き締めた。
「歩君! おはよう」
「ん?………………………おはよう」
本当に機嫌が悪そうにしてる歩で七海はそれを理解してるが怒ってる歩も可愛いため構ってしまう。
「歩君は本当に朝は機嫌が悪いよね~」
「七海。それ分かってるなら止めてあげなさいよ。間宮君嫌がってるでしょ?」
「いや、まぁ、大丈夫だよ」
「ほら! 歩君だってこう言ってるよ!」
真矢は気づいてる。ああは言ってるが歩はうざったそうにしてる顔を………。
それから先生が来るまで他人から見たらイチャイチャをしていた二人だった。
☆
「オッス! 歩!」
飴色の髪をボサボサさせた体格の良い男子が歩の所に来た。
「ん。どうした? 湊」
笹熊 湊。歩の幼馴染の親友。運動神経抜群で見た目は元気爽やか系で女子の人気も高い奴だ。
「と言うか、今は大丈夫か?」
湊が聞いて来てるのは多分、機嫌は大丈夫かってことだと思う。
「正直に言えばまだ悪い」
「じゃあ、嘘で言えば?」
「ん。まぁ、良いよって答える」
そんな二人の所に忍び寄る影が一つ。
七海が歩の後ろからたまたしても飛び付くように抱き付いて行った。
「あーくん! どう? 機嫌は?」
「ん。良いよ」
嘘である。さっきの話で行くならば歩が言ったことは嘘になる。
(あ~。だよな~、流石に彼女にはそう言わないと駄目だよな~)
湊は歩の対応を同調する目で見ていた。
「歩君。まだ機嫌悪いよね?」
「え………………。えっと、悪くないよ?」
「ふーん。なら、良いけど」
(一瞬バレたかなって思ったけど、バレて無くて良かった)
七海はスリスリっと歩に顔を擦りつけてそれと同じに胸も当たってるので歩はまんざらでも無さそうにしてる。
「歩君~、今日の放課後は暇~?」
「うーん。家の手伝いがあるから今日は無理かな」
歩の家は喫茶店をやっているため歩は朝早々に店を手伝いをしてるから朝はいつも機嫌が悪くなっている。
元々朝は弱い歩なので更に機嫌が悪くなる。それならば店の手伝いをしなければ良いと言う話になるが、歩は嫌々そうにしてもなんやかんや手伝ってしまう優しい子だ。
歩に用事があるっと知った七海は不機嫌そうな顔になり。そんな七海を見て歩も少し困った顔をしている。
「あ、そうだ。歩! またお前ん所でバイトさせてくれね? 最近金欠で! この通り!」
頭を下げて手を合わせてお願いしてくる湊。
「分かった。父さんに聞いとくよ。オッケー貰えたら連絡する」
「サンキュー! じゃあな!」
手を振って自分の教室に帰って行く湊。
湊は忙しい奴と言うか、唐突に来て帰って行くなんとも騒がしい奴だ。
そんな湊を笑みを浮かべて歩は見ていた。
湊が見えなくなったら後ろに居ると思うみぃーを見ると、まだ不機嫌な顔で居た。
「歩君。私もバイトして良い?」
「え」