出会い
柊 七海は今日も男子に告白されうんざりしていた。
「ごめんなさい」
七海がそう言うと男子は泣きながら走って行き。
七海は男子が見えなくなると、溜め息をついて肩を落とした。
(何で、初対面なのに告白して成功出来ると思ってるの?)
泣くとかされても情なんて湧かないしもうどうでも良い。私にとっては鬱陶し過ぎてもう辞めて欲しいぐらいだ。
私が有名だってのは嫌でも分かる。
周りにいつも可愛いや綺麗っと言われどう答えたら良いか分からなく苦笑いで返したりしてるから。
それで今回が何回目になるか分からないぐらいに告白を受けて断って来た。
断る理由はもちろん、好きでも無いし大抵が初対面だから。
私には好きな人は居ない、多分そういうのに疎いんだと思う。
今はまだ高校生だし、これからがあるそう思ってた。
でも、私はとある日に運命の出会いをした。
その日は委員会の活動で遅くなって外は夕暮れだった。
「あ。ノート」
教室にノートを置いてた事を思い出して私は小走りで急いで教室に行くと。
「ん?………」
前の席の方で男の子が寝ていた。
それはもう気持ち良さそうにスヤスヤっと寝てる。
私はノートを取るより気持ち良さそうに寝てるその男の子に見とれていた。
(可愛い………)
瞳は閉じてるから分からないけど、背が低く顔は童顔の男の子は可愛い過ぎた。
少し悪戯心で頭を撫でて見ると予想以上にサラサラしていて肌も触って見ると男の子なのにモチモチしていて張りもある。
「うぅぅ」
何かにうなされてるのか可愛らしい声で寝言を言ってる。
(本当に可愛い………何で、こんなに可愛いの?)
不思議に思うぐらい私には男の子が可愛く見えた。
このままとっておきたい。この状態でずっと私の側に置いておきたい。
そんな私欲が湧いてきた。
自分のしたい、側に置いて愛でてたい。もしかしたら私に告白する人達も私と同じ気持ちだったのかもしれない。
「………あの、何か用ですか?」
「へ? あ、いや、その」
男の子はいつの間にか目覚めていて、目の前で屈んでる七海を首を傾げて見ていた。
「えっと! 私の物になって!」
「はあ?」
私は何を言ってるのか自分でも分かってなかった。
だけど、何故か私はこのまま答えを待とうっと思ってしまった。
多分、ここで受けて貰えればずっと私の側に置いておけるとでも思ってしまったんだと思う。
「………いや、普通に嫌なんだけど」
うん。そうなるよね。誰も自分の物になってって言われてなる人なんて居ないし。分かっていたかもう一度言い直さないといけない。
「なら、私と付き合って下さい」
恥じらいもなにもない。ただ早くこの子を自分の物にしたい私欲が私を動かして来る。
「あの、僕はカッコ良く無いし、柊さんに合う人じゃないと思うんだけど?」
男の子は私を知ってる様で柊さんっと呼んでくれた。
男の子に呼ばれた時に胸がギュッとなって嬉しい気持ちが湧いてきた。
「ううん。合うとかそんなのどうでも良いから、私は貴方と付き合いたい。というか欲しい、じゃない。一緒に居たいの」
「………ごめん。僕は死にたくないから」
そんな意味不明な言葉を言ってから男の子は帰って行き。
「死にたくないってどういうこと?」
七海は知らないが男の子、間宮 歩は知っていた七海に釣り合う者で無ければ七海のファンクラブに消されることを歩は知っていた。
だが、歩もまた知らない。歩にもファンクラブが存在することに___。
それから色々あり今の二人が居る。
「歩君はほんっと可愛い!」
「うん。ありがとう。七海」
最近は可愛いっと言われるのが嫌だった歩だが、彼女である七海に言われると嬉しいみたいで不機嫌にはなっていない。
(七海は、良い子だと思うけど、愛が重いと言うか一途と言うか)
最初に七海からの告白は断ったはず。と言うか怖かったから自分の物になれとか………………。それにまだ死にたくなかったし。でも、七海はずっと、次の日から同じ様に告白して来て、それも断ったけどまた次の日と更にまた次の日に来てそれも断ったらとうとう皆の前で告白をして来たので、そんな場所で人気者の七海からの告白を断れば同じ様に殺されるので、致し方無く了承した。
だけど、何故か殺される事は無く皆から拍手を受けて少しビックリした。
まぁ、そんな七海が今は好きになってきたんだけどね。
「七海~好き~」
「私も歩君が好きだよ~」
歩は七海のお腹辺りを抱き締め、女の子よりも背が低い歩は平均身長より少し上の七海に上から優しく抱き締められている。
七海からはいつも良い香りがする。香水なのか普段の匂いから知らないけど、僕はこの匂いが好き。それに胸が当たって少し嬉しい気持ちになる。
「ねぇ、七海。今度の休みはどっかに行く?」
「うーん。二人でピクニックでも行く?」
「うん。分かった」
普段の話もこんな感じ、休みはどっか行く?とか放課後どっか行ことか恋人と言うより友達に近い会話をしてる。
でも、それだけ僕と七海の距離が詰まったと言うこと。
最初は目を合わせるだけで僕は逃げ出してたから、これは大きな進歩でもある。
付き合って一ヶ月ちょいでここまでこれたのだから多分誇っても大丈夫だと思う。
「七海、僕は絶対七海と結婚するよ~」
そんな言葉を満面の笑みで言ってくる歩に七海は頬を赤くして強くギュッと抱き締めた。
強く抱き締められて痛いけど、七海の柔らかい部分に顔が埋まってるのでこのままにしとこっと。
「それ忘れないでね! 歩君は私以外の女の子と結婚しちゃ駄目だからね!」
「うん。しないから。七海大好き」
歩も七海をぎゅぅぅっと強く抱き締めて。
そんな歩の頭を七海は少し撫で撫でしてそっと優しく歩を抱き締めた。
二人は暫く抱き締め合って、軽くキスをして暫くイチャイチャしてから歩は自分の家に帰って行った。
「あー。今日も歩君は可愛かったな~」
クッションを抱き締め歩を思い出してうっとり見とれる様な顔をして天井を見上げる。
歩は可愛いし、優しくて何時も私に甘えてくれる。
それをうざい何て思ったことは無い、だってあんな可愛いくてか弱い歩が甘えてくれるんだもん、嬉し過ぎてこっちが死にそうだよ。
七海はもう歩に溺愛でずっと歩の事を考えている。
そんな七海も一つ歩に対する不満がある。
「………………はぁ、歩君はいつになったら私を襲ってくれるかな?」
付き合って一ヶ月ちょい、あーくんは未だに私に性欲と言うものを向けてこない。
さっき歩が自分の胸の感触を楽しんでたとは知らない七海は歩が性的感情をぶつけて来ないと思ってるらしい。
それに、一ヶ月ちょいでやる人は居るかもしれないが、歩は多分そんな事は出来ないヘタレだから、当分は無いだろう。
「そうだ。歩君に電話しよっと!」
先程行ったばかりなのに七海は歩に電話をした。
「ん。なに?」
「えへへ。歩の声聞きたかったの!」
「そっか~」
それからどうでも良いことを喋り電話を切ると。
「うぅぅぅ! 歩君に会いたいーーー!!」
部屋で寝転がりながら腕を上げそう叫ぶ七海。
「歩君~ 歩君~」
歩と叫び部屋をゴロゴロっと転がりまくり、お母さんに「うるさいよ! 毎日歩君、歩君って!」っと怒られ、七海は大人しくなり。
(あの可愛い歩に早く会いたいな~)
「うぅぅ。歩君………………。はぁ、私ってほんっと歩にぞっこんなのかな。うふふ! えへへ! ぐへへ!」
ちょっと気持ち悪く笑う七海は何処か嬉しそうだ。