原作閑・地該【怨将軍流浪譚・諸国漫遊記
梨園の誓い 後漢末期の怨将軍紀霊と沮授、張紘が交わした義兄弟の契りの故事。当時袁家は善政を布いており、中央との結びつきも強くその隆盛は飛ぶ鳥落とす勢いであった。
けれどそれは袁家領内に限った事であり、袁家以外の領地では土地が荒れ、重税に喘ぎ、子が飢え死に、賊が暴れ、異民族からの略奪に怯えることが常であった。
そのため、世には終末論が広まり、天の御使い様が世の乱れを正し安寧に導く……といういわゆる救世主を求める一種の宗教が成り立っていた(一説には黄巾党の跳梁は張角がそれを自称したからというものもある)
それを認められなかった紀霊は「自分たちの行いは何の意味も無かったのか、天に助けを求めなければならないほどに我らは無力なのか」と嘆いたという。
その荒れていた紀霊を二人が誘って梨園にて開かれた酒宴の最中に行われたのがかの【梨園の誓い】である。
様々な演劇、講談などで人気の一幕であるが、実はその詳細は驚くほど不鮮明である。これは当事者たちの日記以外にそれに触れているものが殆ど無く、その日記も彼らが酔っていた為か支離滅裂な記述が多いためである。
故に梨園の誓いの演劇においては3人の義兄弟の誰が長男かは決めずに対等であることを除いて、一切の制約が無い。
その自由度の高さもまた、この演目が人気の高い理由だと思われる。
原作閑・地該【怨将軍流浪譚・諸国漫遊記パンフレットより