表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第1話「怪奇探偵社」
8/62

「堕落のもの」7

三門(みかど)貞香(さだか)の名前が捜査線上に現れたのは、銀行強盗が起きて二日目、安齋達強盗犯の一人が自首という形で軍警に捕まってからであった。


安齋(あいつ)は、ここ先日で急に堕落しちまった。自分の為だけに動いてやがる。銀行強盗に巻き込んだ上、奪った金を全部持って行っちまった。他の奴らは知らねえ。最後にあいつは自分の顔を見た奴を秘密裏に殺すかすると言っていた。」


犯行当時は全員覆面を被っていた。逃走する際、途中でそれを脱いだのだが、その決定的瞬間を通りすがりの女子学生二人組に見られたようだ。


「富裕層が通う甘利中央女子学習院のセーラーだった。恐らくすぐ殺さず、誘拐して身代金の請求をするなりして人買いに売り飛ばすか、金を受け取って殺すかするだろう。」


その後、すれ違いざま一瞬だけ見たと言う顔の人相書きを頼りに甘利中央女子学習院に入りこみ、噂話を頼りにその二人組が三門貞香と藤原ハナエである事を突き止めたのだった。


それからは三門・藤原両家に出来るだけ家から出ないようにと注意勧告の手紙を書いたのだが、悪戯だと判断されたのか二人とも翌日も学校に来ているのには好実君と驚きを通り越して呆れてしまった。


校門の前が見える、少し離れた位置の駐車スペースに停めた社用車の中でわたし達は道行く人、霜櫻女子学習院に入る人を眺める。安齋たちが三門・藤原の二人を狙ってやってくるかもしれないからだ。


「人の親切をなんだと思っているんでしょう、これだから上流階級の連中は嫌いなんだ。」

「まあ、上流階級も色々あるんでしょう。それより今日も学校内の警備と藤原さんの護衛よろしくね。」

「……今日は女装して入りませんからね」


それだけ言うと好実君は車の外に出て、彼の言う『子分たち』に指示を出していた。

道行く人は、彼に不思議な目を向けていたが、そのまま微笑ましい顔で通り過ぎていく。単なる子供の遊びだと思っているのだろう。


……本当は少し女装を期待していたとは言えない。


それから時間が過ぎ、昼が来て、そろそろ日も落ちてくる頃、事件は起きた。


変装した京極さんと何回か監視の交代をしながら、授業の終わりの鐘の音を聞いた。


「最初に出るのは三門か。車に乗るようだ」

「あれは三門家の車ですね。追いかけましょう。」


京極さんも車に乗り、そのまま三門の車を追いかける。車は三門家に向かわず、そのまま下町方面まで進んでいく。


前を走る三門家の車に困惑していた時に、後ろから猛スピードで通り越して行く車があった。それは三門の車に横をぶつけ、そのまま二台は停まろうとする。


「やられた!この先に一旦停めてくれ、私は三門を護衛する。降神、この先の三つ目の角の路地の空き地なら人目もつきにくい。そこで合流する。」


指示通り、わたしは停まった二台を通り越して、その先の路上の端で停めた。

京極さんが走って現場に向かい、わたしは空き地で待機しておく。


そして、そこにやって来たのは、泣きながら逃げて来た三門貞香ちゃんだった。


あと一話で今日の投稿は終わります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ