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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第1話「怪奇探偵社」
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「堕落のもの」6

今回の事件は、とある倒産した会社のビルの一室から、撤退作業を終わらせた後の一晩のうちに『不審な痕跡』が見つかり、そのビルの管理者が軍警に通報した事が発端である。


軍警の形ばかりの捜査の後、軍上層部の判断でこの探偵社に持ち込まれた。


軍警も形式的な捜査とはいえ、とある一人の人間が怪しいという事までは突き止める事ができていた。


今回の事件の容疑者、安齋(あんざい) (むつみ)。その現場のビルに全く関係もないのに誰もいない夜の間、ビルに入って行く姿を目撃されていた。


おそらくは彼が犯人であろう。


普通に過ごしていれば妖魔召喚の方法なんて知らずに生きられる筈なのだが、どこで知ったのか。


それはさておき、問題は妖魔を呼び出して何を叶えたか、何を叶えようとしているか、である。


持ち込まれた何枚かの写真を参照して見るに、召喚を行なった場所は、今は警察も管理人も来ない無人となり、家具も床敷きもカーテンも全て持ち去られたただの部屋。


白のタイルが並んだ床はよく見ると薄っすらと暗い赤で描かれた円形の模様が残っている。

大きさは精々マンホールの蓋程度で、そこまで大規模ではない。


そしてその周りには、小動物……鼠や蛙に犬や猫といったものの屍が、無残にも解体された状態で、捨てられたようにばらばらに散らばっていた。


呼び出すものの階級によって違うが、基本的な召喚に必要なものは、


一つ、正しい手順で描かれた召喚陣(シジル)

一つ、妖魔を呼び出すのに必要な生贄。

一つ、妖魔を従わせるための代償。


妖魔を召喚する事自体は大した労力も知恵も必要ない。(細かい条件はあるが。)

妖魔契約は自分の身の破滅と引き換えに望まぬ形で願いを叶える。


写真に写っているものを見る限り、階級も能力も大したことのない妖魔であろう。


しかし妖魔は妖怪であり魔物、大した事がなくとも、それは一般市民の手には余る程の危険があるのは間違いない。


兎に角、多少強引ではあるが、安齋の家に乗り込むか、安齋を尾行して妖魔召喚の証拠を探るしかないだろう。


そう考えていたら、この場に唯一の電話が鳴った。

社長の席にある、最新式の黒電話である。


京極さんが電話に出て、一言二言話し受話器を置く。

その表情は暗く、眉間に皺が寄っている。


「安齋他数人が銀行に現れ、金庫の金を強奪し、逃走したらしい。」


「銀行強盗?妖魔契約した割にやる事は小物ですね。」


好実君はそう言って馬鹿にしたように笑い、外に出る準備を始める。

この憎まれ口はいつものことなのでもう誰も何も言わない。


「我々は軍警と強盗犯の検挙の手伝いに行く。安齋を逮捕した後は妖魔契約について聞き出す。」


「了解です」

「はい」


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