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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第1話「怪奇探偵社」
6/62

「堕落のもの」5

今回からしばらくは三門ではなく降神視点の話です。

ちよっとだけ時系列が前後します

帝都の比較的新しい地区に出来た、ビル群の一角。


五階建ての、蔦の張った赤煉瓦の、周りのビルに埋もれてしまいそうな地味な……特徴と呼べる特徴はそれくらいしか無い簡素な商業ビル、その三階に事務所のある『開木探偵社』。


この探偵社はいつだって客と呼べる客は来たところを見ないが、それでもテナント料をぽんと払える程度には稼ぎがある。

仮に依頼があっても請ける仕事はかなり選び、身辺調査や探し物代行はまず引き受けない。


そんな実情の掴めない変わり者集団だと周りからは思われている。

変わり者集団である事は事実ではあるが。


ビルの一階は仲の良い姉弟がひっそりと営業しているバーで、二階は空き部屋、三階は探偵社の事務所で、四階から上は社員の詰所になっている。


その四階の詰所で降神美緒(わたし)は目を覚ました。

どうやら資料を読み終わってそのままソファで眠ってしまったようだ。


「……面倒な事になりましたね」


顔を洗い、詰所においてある予備の服に着替えて、下の階に降りる。その手には昨日渡された資料があった。


来客用のソファと机の向こうには社員の事務机がある。


一番奥にあるのが出張中の社長の机、その前に縦に三つ、それが二列分向かい合って設置してある。その六つの机のうち社長席から見て右側、一番前が京極さんの席、その向かい側がわたしの席だ。


その京極さんの席には、その席の主人である茶色のスーツ姿の京極さんがいて、隣にはいつも黒の詰襟学生服姿の好実(このみ)君がいた。


「おはようございます、京極さん、好実君。」


「おはよう、降神。」

「おはようございます、降神さん。」


形ばかりの気の無い挨拶をした、表情の浮かばない好実君は、ちらりとこちらにその赤い瞳を向けただけで、京極さんとの会話に戻ってしまった。


赤い瞳。好実君は、ただの人ではない。

勿論学生でもなければ、文字通りの意味で人ではない。


彼は『半魔』と呼ばれる、特殊な生まれの人物だ。


『半魔』とは、魔物の力を持った人間のことを指す。

より具体的に言えば、人ならざる者と人間の子供だ。


魔物の力を持つ者は、その力が強ければ強いほど、身体的特徴に現れやすい。


瞳の色が赤や黄色などに変色したり、髪の色が退色したり。

場合によっては肉体も変形したりする。


そして、人ならざる者である能力を取り扱うことができる。


血の濃さ、才能、受け継いだ魔の力によって違うが、大概純正な魔物より劣るが何かしらの能力を持っている。


それ故に良くない者に狙われたり、人間からも、魔物からも爪弾きにされる。


彼の事を話すと長くなるのでここらで割愛するが、それなりに苦労した人生を送っているようだ。


わたしは席について、手に持っていた資料を読み返す。




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