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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第3話「正義のみかた」
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幕間・暗号解読

「殆ど読めない」


そう言って警部補は眉をしかめた。

閲覧した部分に所々読めないようにわざわざ文字化けさせてある箇所が何ヵ所もある。殆どの部分は読み取れず、何が何だかよくわからない部分が急にでてきたのだ。しかも、その次のページは墨で塗り潰したようにべったりと黒く浸食していて、文字化けすら見せる気がないらしい。


「恐らく、相手も時間稼ぎしているのでしょう。このくらいの文字化けならある程度はまた変換可能です。」

「よっぽど見られたくないものを隠しているのかね。」

「見られたら困るもの、あるいは自分の正体がワタクシたちにとって判るものということです。」


「文字化けした部分を抽出しろ。変換して炙り出せ。」


遠隔の機械が文字化けした部分を写しとり、そのデータを鑑識のコンピュータに送る。後は自動解析されて出てくるのを待つのみだ。

そして、そこまで時間の経たないうちに解読は終了した。

出てきた診断結果は所々読めないがなんとか言葉として拾い上げることが可能な部分は散見していた。


『繧、繝ェ繝、=めAッFチA

蜈・隹キ =允E调L

谺。縺ョ譌・譖懈律 =欁Bぃ?旁E曜日

縺薙?蝣エ謇?縺ォ縺願。後″縺ェ縺輔> =こ??場??にお行きなさい

莉悶?莠コ縺ォ縺ッ隕九∴縺ェ縺?b縺ョ縺瑚ヲ九∴縺ヲ縺?k縺ョ縺ァ縺励g縺?シ =他??人には見えな????のが見えて????のでしょ???

蟶晞?蟶梧悍縺ョ螟ゥ菴ソ謨吩シ =帝??希望ぃ?夃D佃\教?V』


「やはり人名の部分は一筋縄では行きませんね。」

「世界線同一化現象も進んでいる。早く決着を着けなければならないってのに。」


世界線同一化現象の進行が進めば進むほどどんどん世界線(物語)は崩壊していく。

最初に平行する分岐の世界線が複数重なり、設定や世界観に矛盾が生じる。

まだ小さな綻びならリカバリーは可能で、対処も簡単だ。


次にシステムの認識能力の低下。

今のところではドッペルゲンガーが最たる例だ。

重なった世界線の同一人物と遭遇すると、どちらか一方しか残らない。

どちらも同一人物だから、同一人物が二人いるのはおかしいと判断され、より正しい歴史に近い方を残して消去される。

システムは基本的に世界線の安定のために辻褄を合わせようとする。

しかし消したものも同一人物だから、一度消えてしまった人物が残っていると判断され残った方もそのうち消去してしまうというシステムの誤認識の暴走だ。

最終的にはその矛盾にシステムも対応できなくなり、崩壊してしまう。辻褄合わせで世界線その物を破壊してしまうのだ。


こうなってしまった以上は崩壊前に物語を終わらせるしかない。

しかし、現時点での語り手は物語を終わらせないようにしている。外部からの干渉を受け付けず、ただ自分の都合のいいように動いている。

おもむろに劇場主は本に向かって語りかけた。


「いい加減、あなたの目的を教えてくれてもいいんじゃないですかねえ?語り手さん。またはこう呼べば良いですか?四宮(しのみや)エトさん。」


それまで静かに、淡々と語り続けていた話は止まる。

凍りつく空気の中で、機械だけが規則正しく動いていた。

どれくらいの間が空いたか、無言が続くなかで語り手は話し出した。


「気付かれましたか。」

「ただの当てずっぽうですよ。登場していないネームドで、今回協力した人物以外のなかで、物語への影響がそこそこあるくせに名前すら全くでてきていないのはあなたくらいですから。」


四宮エト。彼は主要登場人物(ネームド)の中ではある意味最も主人公に近しい。本来の主人公である四宮トシの実の弟にあたり、そしてなにより現時点主人公の三門貞香の結婚相手だ。これ以上ないほどの縁を持ちながら、未だに影も形も見せなかった。


「これ以上はいくら都合よく物語をすすめても、崩壊していくだけですよ。早く物語を終わらせた方がいい。あなたもその物語の登場人物である以上は崩壊した物語ごと消滅するんですよ?」

「それでも構いません。消えることに未練はありませんから。ただ、ただ。私は約束を果たしたい。それさえ叶えればこの世界ごと心中してもいい。」

「だから、その約束を叶える前に世界ごと消えると言っているんです、いい加減話を聞け。」

「あの人は、この本を私に渡したときに言っていました。『お互い様』だと。」

「ナルホド。超越者は、一人ではないと。」


今のところ現れたイレギュラーは五つ。

産まれる前に死んだ主人公、主人公の要素をもった義理の妹、与える悪魔、そして主人公の体をもった何者か、なぜか途中から語り手になった四宮エト。

この大きなイレギュラーを全部悪魔がやったと思うのは考えにくい。

まだ内部に何かいて、隠れて裏で手引きしている。

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