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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第3話「正義のみかた」
42/62

「破邪の太刀」幽霊の祟りを信ずるか

お久しぶりです。

累計1500PV達成しました。いつも御覧いただきありがとうございます。

進行は牛歩の歩みですがよろしくお願いいたします。

 広大な帝都の交通機関は蒸気機関車、山手線、タクシー、車、人力車に路面電車、バス等ある。一律一円で帝都の至るところを走る円タクは勿論、帝都を一週する環状の山手線は帝都市民なら知らぬものはない。鉄道は私鉄国鉄あるが鉄道事業から撤退した資本家により私鉄の幾つかは廃線となり、その一部は国によって買収されたが、4割以上は線路の撤退工事を待つばかりとなっていた。

  その廃線路の上にしばしば幽霊が現れるという。幽霊は三鷹駅の近く、それも住宅街の中、廃路線となった線路の上に昼夜問わず現れるらしい。


 電話の主は始終切羽詰まった様子で話し、声が震えていた。


『助けてください、僕は呪われたかも知れないんです。』


 ■


「幽霊に見つめられたら祟られて死ぬ……か。」

 探偵社に潜入して暫く経つが、そのほとんどが妖魔と呼ばれるものや悪魔とされる存在であった。幽霊疑惑があった事件もあったが、結局はそれも妖魔の仕業だったからか、話が本当なら今までありそうで無かった事件になる。


「なにも通らない筈の廃路線の踏切の遮断機が降りると髪の長い女の幽霊が出て、幽霊に見つめられたら一週間以内に溺死する。」


 好実は電話で聞いた概要のメモを斜め読みしていた顔をあげる。

「幽霊なんてお伽噺上の存在ですよ。どうせ今回も悪魔とか麻薬中毒者の集団幻覚とか、そんなオチです。それにしても、神社の元巫女(降神さん)はどうしたんですか?あの人一応本職でしょう?この場に居ないのが不思議なんですけど。早くお祓いなりなんなりすればいいじゃないですか。」

 降神の席は空席だ。置き手紙を残しているわけでもない。上階で寝過ごしているわけでもないのなら、連絡が無い限り消息は不明だ。経歴や資質から鑑みて一番この件に適しているだけに間が悪い。

「まだ来ていないとなると私にも分からない。」

「どうするんです?あの人を待ってたら何時になるかわかりませんよ?」


 今まで黙って話を聞いていた銀がおずおずと手を挙げた。

「じゃあ、僕が代わりにその依頼人さんに会って様子を見てみましょうか。」

「一応聞いておきますが、幽霊や呪いの類いと妖魔に関する区別や対処法はあるんですか?」

「僕は普通の人間でした。今も特別な力はありません。ですが、それらに対処できる人材を使役することはできます。」


 銀がインバネスの下から取り出したのは朱で書かれた札で、その札に彼は静かに唇を寄せた。そのままフッと息を吹きかけると札は床に落ち、一つの影がするすると伸び、やがて一つの質量を持ったヒトガタに変わっていた。


「お呼びデスか?」

  札から出てきた影にやがて色が現れる。茶色の背広を着た体格の大きな男。目立つのは体格だけではない、その男は肌が白く染め上がっていた。鼻筋は高く、少し小さな目は青く、大きな口許はゆるゆると微笑みを浮かべていた。帽子の下の髪は赤茶けていて、くるくると毛先は丸まっていた。

 好実は手近にあったハサミを男に構え、いつでも攻撃できるように距離をとる。


「オヤオヤ、随分なご挨拶ですネエ?」


 男は好実を見て、少しおかしな発音で答える。その間も微笑みを崩さず、悠々と好実に近付いた。好実は目線を外すことなく後ろに下がるが、ここは部屋の中、すぐに壁に背がつく。


「出会い頭にヒトに武器を構えるのは失礼ヒツレイ、デス。」

「そもそもあんたは人ですらない妖魔だろ。まともに話せない癖に!」


 男は自分に向いたハサミの先を掴んで、そのまま下にねじ曲げた。ハサミは柔らかい粘土のようにそのまま変形した。

 振り返ったその顔は自信に満ち溢れて輝いているように見える。


「改めまシテ、律子銀『藤原家(ふじわらけ)四鬼衆(よんきしゅう)』所属、藤原(ふじわらの)伊呂波(いろは)と申しマス!」

「伊呂波は3代目銀律子の頃に服従させた鬼で式神として働いています。まだ幽霊が信じられていた時代からいろいろな物を見てきているので、幽霊の祟りも確かめられます。」

「律子は特に人使いの荒い4代目が在任期間600年弱と一際長かったですからネエ。散々連れ回された分、様々な事に対処出来マス!」

「じゃあ、僕は留守番してるんで。京極さんがそいつらと会いに行ってくださいね。」


好実は不機嫌を隠しもせず、上の階に行ってしまった。恐らく突然現れたこの二人が気にくわないのだろう。

好実の態度を咎めるわけでもなく銀は自嘲気味に微笑んでいた。

次回は三門サイドに入ります。



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