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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第2話「探偵社式悪魔祓い」
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「悪魔の棲む屋敷」16

「僕……私から盗んだものを返してもらいましょう。」

「盗んだって、私何も盗んだ覚えない!私悪くないのに、どうして、そんなことするの!?」


貞香は逃げられないと悟り、ヒステリック気味に話す。背中が壁につき、部屋の扉に向かって駆け出す。しかし扉は開かない。混乱して扉を何度も叩くが勿論開くことはない。そんな姿を鼻で笑いながら、好実はさらに距離を詰める。


「かつて、私はある人物との契約の証に渡そうとしたものは盗まれた。誰がどうやって渡したのか知らないがそれはあなたに譲渡された。」

「返す!返すから!」


好実は短剣を構えて振りかぶる。


「無理ですよ。だってそれはあなたの魂にくっついているものなのだから。」


振り下ろされた短剣を見て、貞香は自分の体が急に冷えていく感覚に襲われて、何も考えず横に逃げた。

しかし無傷ではなく左腕には切り傷が肩から肘のあたりまで一直線に伸びていた。

でもまだ息はある。怖いながらも何とか逃げ延びる手を考えようと追撃から必死になって逃げ続ける。


そして転機は訪れた。

扉は派手に音を立てて崩れ、そこから現れた人物。

「うわぁ、気持ち悪い気持ち悪い。何僕の偽物にホイホイついて行っちゃうんですか?馬鹿なんですか?」


それは目の前で襲いかかってきている好実と瓜二つの……いや本物の好実だった。


「こんな程度の低い偽装に引っかかるなんてあなたの目は節穴ですねー!」


おまけに口先の悪さも磨きがかっているように感じた。好実は偽物に対し不快だと表情を隠さず唾を吐きかける。


「あなたも、弱小悪魔風情が僕の姿でなんて事やってるんですか、ペッ!」

「おやおや、口も態度も悪い。一体誰に躾けられたのか親の顔が知りたいくらいですよ、半人間」


好実は偽物と向き合いその場で睨み合った。

同じ顔が二つ。貞香は本物の好実の背後に移動して事態の動向を見守る。逃げ出そうにも逃げ足す隙が無かった。


「よくも僕の姿を真似してくれましたね。」

「その方が都合が良かったもので。」

「お陰様でお馬鹿なお嬢様をここまで引っ張り出してこれた訳ですが、なぜこの小娘なんです?金なんて悪魔に必要ありませんよね?」

「ええ、金なんて要りませんよ。でもあなたも感じているでしょう?悪魔の血が、あの魂に本能的に惹かれていることに。」


好実は足元にある壊れた扉の破片を投げる。

それは一直線に同じ顔に向かって飛んでいくが、案の定避けられる。

「貴方の相手はこちらですよ」


満を持して現れたのは抜き身の太刀を構えた京極だった。

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