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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第2話「探偵社式悪魔祓い」
30/62

「悪魔の棲む屋敷」15

家から抜け出して夜道を歩く二人。

不思議なことに外には誰もいない。人だけではなく妖魔と呼ばれるものも含めてそこには誰もいないのだ。

「誰もいない……」

「この辺りで妖魔狩りが根刮ぎ殺し回ったようで、妖魔の類は一時的に何処かに隠れているようですね」

「妖魔狩りって?」

「妖魔を退治する組織の一つの形態です。政府からの任務で動く祓屋、宗教で動く妖魔狩り、そしてどこにも属さない金の為に動く賞金稼ぎ。」

好実が先導して道を歩く。そのすぐ後ろを貞香はおっかなびっくりついて来ていた。

好実は余計なお喋りはしたくなさそうに、淡々と質問に答える。等間隔に生える電灯の光の一つが遠くで消えかけていた。


「どこに行くの?もしかして、作太郎お兄様の相談と関係ある?」

「僕の家ですよ。あなたのお兄さんに関しては、今はノーコメントです。」

「特に用がないなら、私の家でもいいんじゃないの?」

「ダメです。あなたの家だと余計な物が多過ぎる。それにどう転んでもすぐに終わりますよ。」


沈黙が流れる。

好実は歩くスピードを少し早め、真後ろをゆっくりと歩く貞香の片手を取った。


「いきなりどうしたの!?」

「誰かに尾行されています。そこの角を曲がったら走りますよ。振り返らず、足を動かすことに集中して下さい。」


角を曲がってからはお互い何もいえずに走る。追跡者も後ろから負けじと走ってくる音が聞こえてくることに貞香はうんざりした。

また、誰かにこうして追いかけられるのか。

まだ前回から二週間も経っていないというのに。唯一の救いは近くに顔見知りがいることだけだ。やがて二人は一軒家の裏口に飛び込み、鍵をかける。


貞香は震える膝を抱えるようにその場に座り込む。好実はその場から動かず、扉の向こうに聞き耳しながら様子を伺っているようだった。やがて足音が聞こえなくなり、好実と貞香は屋敷の中を移動する。暗い廊下は何もなく、貞香は好実に引っ張られながら歩いていた。通り過ぎる部屋はどれも使われている様子が無い。もちろん他の探偵社の人間もいるはずがない。


「さっきのは、どうして追いかけてきたの?」

「それが彼らの仕事だからですよ、本来ならすぐに攻撃されていたでしょう。」

「大丈夫、だよね?京極さんもいるんだよね?」

「ここにはいません。でもすぐに来ますよ。」


連れてこられたのは大きな一室。しかしそこに家具と呼べる家具は無い。

ただ、真っ暗な部屋の床に青白い光の円が反射しているのみだ。この異様な光景に貞香は硬直した。ここが彼の家ではないことも、潔く理解した。


「説明してもらえる?一体何が起きようとしているの?」

「さすがにそこまでバカじゃありませんでしたか。」


好実はゆっくりと貞香の前に移動する。その手には見慣れた短剣があった。かつて貞香を襲った人物が持っていた凶器。それと全く同じものが。貞香は目を逸らさずに一歩一歩後ろに下がる。当然目の前の好実も逃げただけ距離を詰めてくる。


「僕……いえ、私から盗んだものを返してもらいましょう。」

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