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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第1話「怪奇探偵社」
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「堕落のもの」2

私は今、知らない人に追いかけられている。しかも相手は男、手には小刀を持っている。


もちろん、個人的に追いかけられる理由に心当たりはない。


強いて言うなら三門家だろうか。成金華族と呼ばれるだけあって父の敵も相当多い。


「誰か助けて!」


人通りの多い通りを走る私と男。

私との距離は離れているはずなのにすぐ後ろにいるような気がしてならない。


街行く人は私の姿を見て眉をしかめ、後ろを確認すると一様に青くなって逃げていった。


もう脇腹は痛いし、息も絶え絶えだ。

後ろからの恐怖感で涙が出てくるし、正直休憩したい。

それでも足を止めたら、私の命はない。

仮に命はあっても、無事では済まないだろう。


少し振り返ると、男はもうすぐそこまで迫ってきていた。


「お嬢さん、そのままそこの路地裏に入ってまっすぐ走るんだ!」


人々の不満と直後の慌てふためく喧騒の中、男の声が聞こえた。


左手に、家と家の間にある細い路地が見えた。

この路地に入って逃げ切れるというのか。


しかし、迷っている暇はなかった。


私は路地に入って、まっすぐ、さらにスピードを上げて走り抜けた。


その先には1人の女の人が立っている。


「どいて!」


路地の先は何もない空き地だった。

しかも行き止まりで、騙されたと思った。


思わず立ち止まる。その瞬間、足が震えて、乱れた呼吸を整える間も無くその場に立ち尽くした。


顔はこれまでの逃走で真っ赤になって、汗と涙と洟水で酷い顔になっているに違いない。


逃げている間も涙目であったが、更に泣きたくなった。


誰も助けてくれない、私はここで知らない男に殺されるのだ。


「怖かったね、もう大丈夫よ」


入り口にいた、ぶつかりそうになった女の人が、気が付けば目の前にいた。

何が大丈夫なのだろう。


女の人は、木綿の赤と白の格子模様の着物に紫の袴を履いていた。到底あの男に敵うとは思えない。


私は呼吸を整えるのに必死だった。その人は、私の背中をさすっていた。


「早く、逃げないと、あの男、が、来ちゃう!」


決して広くない空き地の入り口を見ると、男がもうすぐそこまで迫っていた。

私を追い詰め余裕があるのか、歩いているようだった。


「大丈夫。あいつの相手はこちらでするから。」


男のすぐ後ろから、片手で握れる太さの金属パイプを持った、また別の人が現れた。


身長は高く、黒いマント、紺の縞の着物の下にブラウスを着た袴姿の男性のようだ。


男はそのままパイプを振りかぶり、男の後頭部に殴りつける。


一発入ると、前を歩いていた男は邪魔されたことに気付いたのか、振り返る。


その隙に二発目、三発目と、男の小刀を持っていた手を殴り武器を弾き飛ばした。


武器を拾おうとした男は体勢を崩し、無防備になった所を、後ろの男は蹴り飛ばした。


男はそのまま倒れて動かない。


男が倒れた事で、後ろに立っていた男の顔が見えた。


黒髪に眼鏡、その下の眼光は鋭く、鼻の横に縦に並んだ二つの黒子が特徴的な人だ。

まだ年も三年の兵役を終えたばかりのように見える。

足元はブーツで、どこぞの文士のようにも見える。


彼は蹴り飛ばした男の落とした小刀を拾い、着ていたマントにくるんで脇に抱えた。


「もう大丈夫だ。」


私は、思わずへたり込んだ。


「こ、怖かった……」

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