「悪魔の棲む屋敷」14
ひさびさに(準)主人公の出番になりました。
真夜中に貞香を起こしたのは金縛りだった。
目が覚めたとき、体が自由に動かせず、息も出来ないくらい全身に圧迫感があった。
まるで何者かにのしかかられているように。
背中からは冷や汗が出ているのかなんだか寒い。
どうしようもなくじっと見た天井には髪の長い女の生首が埋まっていた。勿論、人間にそんな真似できるわけもなく。
「妖怪」
貞香はそう口に出したが動かない体では発言できるはずもなく、ただ息が漏れるだけ。
見上げた先の生首はニタニタと下品に笑っていた。
「何がおかしいの、何で笑っているの。……何で私なの」
上手く息ができなくなって苦しい。
貰ったお守りは制服に忍ばせてしまったから手元にはない。
このまま死んでしまうのか。死ぬのは嫌だ。心の中で生首を睨みつける。
「だから言ったでしょう。怪異なんて、」
窓の外から聞こえてくるのはつい最近聞いた男の子の声。
黒い髪に赤い目の不思議な男の子。
彼は窓を外側から開けて部屋の中に侵入した。
「無視すればいいんです。認識しなければいい。良く見なさい、あれはただの木目です。」
車の中で言われたことを思い出す。
見えなくていいものは見ない。
そうだ、生首なんて天井にあるわけない。
おばけなんて、いないんだ。
自然と息が落ち着く。
落ち着いて良く見れば。
「なんだ、ただの木目じゃないか」
そこには女の生首なんてなく、ただの木目の並びが顔のように見えただけだった。
体ももう動かせる。
ゆっくりと体を起こし、窓からの侵入者の方を見る。
「ところで、ここは2階だけどどうやって入ってきたの。」
「それは企業秘密です」
好実くんは赤い目を瞬かせ窓枠に手をかける。
「こんな真夜中に何の用事で来たの?」
「貴女の護衛です。何か起きたと思って急いで来てみればこの様。貴女、やはり目を離したら危ないんでついてきて貰っていいですか?下で待ってるんで。」
言い終わるや否や、好実は窓の外に飛び降りた。
「私が行くことは確定なんだ……。」
貞香は急いですでに用意してある制服に着替えて、家族を起こさないようにそっと廊下を歩いて外に出た。