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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第2話「探偵社式悪魔祓い」
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「悪魔の棲む屋敷」8

家に戻ってから鞄をひっくり返して確認したけれど、何度見てもあの悲願倶楽部にあった短剣に間違いなさそうだった。

いったいいつから仕組まれていたのか分からない。だけど考えても結論は出なさそうで、誰にも見つからないようにもう使わない布でくるんで鍵のついた引き出しに隠す。


「どうしたものかな」


明日の午後はあの助教授の居る数学がある。

今は少しでも出くわす可能性を無くしたい。

あったら何されるかわからない、というのもある。


「そもそもどうしてこんなことになったんだろう」


そもそも選ばれる基準は“人を殺めても叶えたい願いがあるかどうか”だった。

僕には願いのために人を殺す度胸なんてない。きっとなにかの間違いだと思う。


引き出しの中をもう一度のぞいてみる。

今まで貰った手紙の束の上に布の塊。

少し気になって布の下に隠れていた一番上の封筒に手を伸ばす。


その手紙は二年程前に貰ったもので、手紙のやり取りは以前から続いていた。

この手紙もちょっとした出来事が綴られていたのだが、僕の気になった部分は手紙の最後、追伸部分にあった。


『若シ何カ他人ニ相談デキナイヨウナ不可思議ナ事ガアレバ遠慮セズ我ガ探偵社ニ来ルベシ。』


そこには以前開業したらしい探偵社の住所が書かれていた。



「それを見てここに相談しに来た、という事ですか。」


「ええ。昨日もこっそりここに来るつもりだったんですが、家から上手く抜け出せなくて。そうしている間に貞香が危ない目にあっていて。帝都は治安が良い方だと思っていたんですがどうしてこうも上手くいかないんでしょうね。」


「貴方はどうしたいんですか。違法性の高い倶楽部を取り締まるなら警察に相談するべきだと思いますが。」


「警察には話せませんよ。あまりにも事件と呼ぶには荒唐無稽な話です。泣き寝入りするのが目に見えている。」


作太郎は鞄からもう一つ包みを取り出す。

今度はそれなりの厚みのある茶封筒だ。

それを机の上に置き、頭を下げた。


「僕の貯金です。これで『悲願倶楽部』を終わらせてください。例え悪魔に願ってでも叶えたい願いがあったとしても、それを理由に人が人を殺してはいけない。」


尚も頭を下げている作太郎を見て、京極はこの依頼の難しさを理解しつつ、受ける覚悟を決めた。


「頭を上げてください。この依頼、承りました。」


作太郎は京極の言葉に体勢を整える。

その顔は極度の緊張で顔は真っ赤に染まっていたが、ほんの少しの安堵が見えた。

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