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演目『帝都怪奇物語』  作者: 浪花 夕方
第1話「怪奇探偵社」
10/62

「堕落のもの」9

かなり遅くなりました。


これからもたまに失踪しますが完結までは続けます。


目を覚ました時、お腹の上が苦しかった。


具体的に言えば息苦しく、重たく、生臭い。


目を開けると、口を大きく開けた猫が私の上に乗っていた。


体が薄汚れている白い猫だ。かなりでっぷりとしていて、大きい。野良猫だろうか?目は金色で、暫くお互い見つめあう。


「なんで猫がここに?窓なんて開けたっけ?」


猫は罰が悪そうな顔をしてお腹の上から降りる。


「あ!待て!」


起き上がって猫を追いかけようと寝台から降りると、思いがけないものを見た。


足早に去っていく太った猫は、迷わず部屋の外に出ようと扉の所まで行く。

そしてそのまま突っ込んだ。


扉も開けずにそのまま扉などなかったかの様に、突き抜けたのだ。


再び呆然とし、今度は自分の頬を抓ってみる。

皮膚を引っ張るとじんわりと痛くなる頬。

今見たことは夢ではない。


まだいつも起きる時間ではないけれど、二度寝できるほど眠いわけではないから、そのまま制服に着替えることにした。


朝は冷える。布団を出て、服を着替えると足のつま先から冷えた床の温度が直に体に伝わってくる。

床の温度に頭が冴えてくると、先ほどの猫は一体何なのか、今見たことは見間違いだったのか気になってくる。


部屋を出ると、何か……皿の様なものが落ちて割れた音が聞こえてきた。

慌てて音の出た台所に向かうと、落ちた皿を片付けるお咲がいた。


「何かあったの?」


「貞香様、それが……目を離した隙にいきなりお皿が机から落ちまして……」


机の上には焼き魚の皿が家族分置いてあった様だ。勿論住み込みで働く奉公人の分もある。

そのうちの一つが落ちて割れた。


落ちた場所を見ていると、お咲が片付けていた破片の中に違和感があった。


「そういえばお咲、落ちた魚はもう片付けたの?」


「その、なんともおかしなことに消えてしまったんです」


皿の破片はひっくり返った状態で転がっていた。けれど魚の皿が落ちて割れたなら、その落ちた魚がどこにも見当たらなかったのだ。


机の上は確かに料理で一杯だ。

けど机から落ちるほど危ないところにはなにも置いてない。


「にゃおん」


落ちた衝撃でどこに魚が飛んだのか、机の下や床を見ていると、歳をとった老人のような猫の声が微かに聞こえた。


「ねえお咲、猫の声が聞こえる」


「いえ……私には聞こえませんが」


「ああぉん」


「あ、ほら、今も聞こえてる」


「貞香様?」


顔を見上げると、不審なものを見るようなお咲の目と目があった。


「貞香様、失礼ですが私には猫の声は聞こえません。破片が飛んで散っていますので危ないですからお部屋でお待ちください」

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