表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第一章 異世界転移
8/77

第七話 宿泊と外食

「どうしてこうなった……」


 タイガは頭を抱えていた。


「女の子と同部屋ってどんなギャルゲーだよ……」

「あの、やっぱり私と一緒の部屋なんて嫌でしたよね……」

「いや、違うんだ! 俺は全然嫌じゃないよ!」


 何故こうなったのか。全ては三〇分前に遡る――。


 カリンの案内によって、宿屋『ペガック』に着いたタイガ。店の名前に苦笑いしながら中に入り、フロントに行った。


「あの、男一人で一泊したいんですけど」

「申し訳ございません。本日は予約がいっぱいでして……」


 タイガはフロントの人に声を掛け、空き部屋があるか確認するが、部屋に空きがないため泊まれそうになかった。カリンに事情を話し、この宿屋を出ようとする。

 カリンが爆弾発言をする前までは……


「でしたら、私の部屋ダブルなので、彼をそこに泊めてもよろしいですか?」


 突然カリンがそんなことを言い出し、タイガは外に出ようとした足を止め、フロントに戻った。


「あ、あのカリンさん? 何を仰てるのでしょうか?」


 あまりもの出来事にタイガは敬語になってしまった。


「あ、また『さん』付けした! 罰として、私と一泊! 良いですね?」

「いや、でも……」

「いや、ですか?」

「喜んで泊まらせて頂きます!」


 タイガはカリンの涙目+上目使いに完敗し、カリンの申し出を受け入れてしまった。

 フロントの人もそれで承諾し、タイガはチェックインを済ませ、二人は同じ部屋に泊まることになり、冒頭に戻る。

 因みに、支払いは全てカリン宛になった。タイガは断ったが――


「タイガは命の恩人ですから」


 と言って話を聞いてくれなかった。タイガとしては宿泊費が浮くのは願ったり叶ったりだが、流石に女の子に払わせるのは男としてどうかと思う。


「なぁ、ホントに良いのか?」

「しつこい男は嫌われますよ? タイガ。私が良いって言ったら良いんです!」

「分かった。じゃあ代わりと言ったらなんだが、何か飯でも奢らせてくれ。じゃないと俺の気が収まらん」


 どうしても彼女に何かしたいタイガは、ダメ下でご飯を提案する。それでもカリンは眉間にしわを寄せ、タイガを見る。


「良いんじゃない? カリンちゃん。タイガがここまで言っているんだからお言葉に甘えようよ」

「……はぁ。分かりました。それで手を打ちます。これで良いですか?」

「おう!」


 タイガは笑顔で、右手でサムズアップし、ペルの言葉で、少々不満ながらもタイガの言葉に甘えたカリン。少し休養を取った後に行くことになった。


 一〇分後、二人は支度して宿屋を出た。タイガは如月中のジャージ、カリンは白いワンピースに胸元に彼女の髪と同じ色のリボンがついていて、フレームが青のメガネを掛けていた。


 タイガはそのメガネを見た時、一つ疑問に思った。


 ――あれ? さっきあんなメガネしてたか?


 先程まで掛けていなかったため、とても不思議に思った。最初はコンタクトでもしているのかと思った。だが、タイガはカリンがコンタクトを外した行動は見ていないし、それに関係する物も見当たらないとタイガは周りを見た。もしかしたら、洗面所で外したのかと思い、カリンが準備中にトイレに行くふりをして洗面所を見に行った。洗面所でもコンタクトケースなるものは見当たらなかった。


 ――じゃあ、あのメガネは伊達メガネということになる。でも何で伊達メガネをする? お洒落か?


 タイガの疑問は膨らむばかりであった。


「タイガ~! 準備出来ましたよ~!」

「お~う! 今行く~」


 タイガは考えることを止めたわけではないが、今はご飯を楽しまないといけないと思いながら、カリンと二人で部屋を出た。


 人や獣人が賑わう大通り。時間は分からないがだいぶ日が暮れてきた。タイガとカリンは繁華街らしき場所を歩き、店を探す。


「トカゲ料理『アジル』、オオカミ料理『ガオン』……(ろく)な店無いな……」


 御飯処らしき所を見て回るが、どれも独特な雰囲気のお店だった。


「どれもこの街の郷土料理ですよ? それを知らないなんてタイガは今まで何を食べてきたんですか?」

「なかなか棘のあるお言葉で……」


 カリンの少しきつい言葉を貰ったタイガは、どういう料理を言おうか迷っていた。


 ――日本の郷土料理ってなんだ……あ。


「そうだな。郷土料理って言えるか分からないけど、『肉ジャガ』だな」

「ニクジャガ、ですか?」


 初めて聞く単語にカリンは首を傾げる。このドルメサ王国には無い様だ。


「あぁ。肉ジャガはお袋の味代表だな」

「オフクロ……? タイガ、私の知らない言葉を知っているなんて、凄いですね!!」


 ――え? お袋も分かんないの?


 この世界には存在しない言葉なのか、それとも、ただカリンが知らないだけなのか。聞こうとはしたが――


「タイガ! ここにしましょう!」


 と言われ、結局聞けなかった。


 カリンが見つけた店『ジャギー』。中に入ると、何となく雰囲気が日本に似ていた。店員に席に案内され、座ると机の上に広がっているメニュー表を見る。写真は張っていなくて、文字だけのメニュー表だ。


 ――『バータジャギー』に『照りマコジャギー』か。ジャギーばっかだな。


 タイガはメニュー表を見ながら考えていた。もしかしてここは、『ジャギー』専門店なのではないかと。すると、カリンは『竜ジャギー』を注文した。タイガも真似して竜ジャギーを注文するが、来たのは日本でお馴染みの――


「これ、あれだよな……」


 肉ジャガだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ