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異世界でニートは英雄になる  作者: 相原つばさ
第四章 厄災の神殿
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第六八話 帰還と宴

「「タイガ!!」」


 影との一戦を終えたタイガの下に、ミルミアとレーラが来た。二人は上から覗くようにタイガを見る。


「ミルミア、レーラか。リンナとムナウド様は?」


 タイガは二人を見上げ、そう質問する。その時、タイガの右目はいつも通りの目に戻っていた。


「村長はリンナに任せて、あたい達で来たんだ。それより、終わったのか?」

「――あぁ」


 タイガは短く答えると、その場から飛び、ミルミア達のいる地上に出た。その時、タイガはフラっと体勢を崩し、倒れそうな所をミルミアが支える。


「お疲れ様、タイガ」

「――ホント……」


 ミルミアに支えられたまま、タイガは青い青い空を見上げる。


「疲れたよ…………」


 そう言うと、タイガの意識はフェードアウトしていった。一瞬焦ったミルミアだが、ただ寝ているだけだと分かると近くの木陰にタイガを連れていき、自分の膝の上にタイガの頭を乗せる。レーラはリンナとムナウドを連れてくると言うと、その場を離れた。そこに響き渡るのはタイガの寝息と、小鳥のさえずりだった。

 レーラがリンナとムナウドを連れてくると、リンナにタイガの回復をお願いする。


「余程、疲れたようだな」


 寝ているタイガを見て、ムナウドは呟く。


「こいつは何でも一人でやろうとする奴だからな」


 そんなムナウドの言葉に、レーラは苦笑いして答える。その言葉が合図になったのか、タイガの方から『んん~』という声が聞こえた。そしてタイガが目を開けると固まってしまった。


「おはよう、タイガ」


 ミルミアがそう言うも、タイガは返事をしない。今だ自分の状況が理解出来ていないのだろう。


「どうしたの?」

「あの~ミルミアさん? これはどういう……」


 漸く理解できたのか、顔を赤らめてタイガは言う。そんなタイガにミルミアは優しく微笑み、『頑張ったご褒美』と言って、自身の膝の上で寝ているタイガの頭を撫でる。その行為に、タイガは更に顔を赤くした。


「それで、今何時なんだ?」


 タイガはミルミアの膝から離れると、自身のマグナラを起動させ、時間を見る。


「俺達が神殿に入ったのは八時半。今は一三時。四時間半も中にいたのか」

「あんまり時間を気にしていませんでしたから……」

「そうね。それで? どうするのタイガ。一応、二つの依頼は完遂したわよ」


 ミルミアがそう切り出す。依頼は二つ。神殿の調査と、ムナウドの救出。ムナウドも無事見つかり、依頼は終わったかのように思えた。

 だが、タイガは顎に手を添え、何やら考え事をしていた。


「どうしたんだ? タイガ。村に帰らないのか?」


 そんなタイガに、レーラは聞く。


「お前らは村長と一緒に、先に村に帰ってくれ。俺はまだ気になる事がある」


 タイガがそう言うと、三人は浮かない顔をした。


「なら、ウチ達もここに残るわ」


 ミルミアは一歩前に出て、タイガに申し出る。それでも、タイガは譲らない。


「待て。お前達には村長の無事を知らせてほしいんだ。村の人々は村長の帰りを待っている。ならいち早く村長を村に届けることが最優先だ」

「なら、タイガが言っている事は矛盾な気がするぜ?」


 タイガの言い分に、負けずとレーラが言う。

 タイガはムナウドを村に帰らせるのが優先だと、ミルミア達を村に帰らせる。だが、その本人が気になる事があると言って残る。レーラはお門違いではないか言うのだ。


「今回ばかりは、ウチ達も納得できないわ。タイガ、何が気になっているのか話しなさい」

「そうですね。先程まで闘って、疲れ果てたタイガさんを残しておくことは出来ませんし」

「俺としても、全員で村に帰りたいのだが……」


 女子たちの反論に、まさかのムナウドまで入ってきて、タイガは圧倒的不利になった。

 そしてタイガは観念し、ここに残る理由を話す。


「実はさっき、影が言ってたんだ。俺達はこの神殿の事が他言無用になっているって。解決方法は分からないが、大広間にヒントがあるって言ってたんだ。だから俺は再び神殿に入って、大広間に行く。もしかしたら、答えが出るかもしれない。それに、あそこには気になるものがあったしな」

「なら、なおさら一人にはさせられないわ。崩壊しかけた神殿の中に再び入るなんて、そんな危険な事させる訳ないでしょ」

「だけど……」


 タイガは三人を見るが、三人も一向に譲らない目をタイガに向けている。タイガは何かを悟ったのか、『はぁ』とため息をつき、諦めの目で全員を見る。


「分かったよ。帰るよ。帰れば良いんだろ? 帰れば」


 その言葉に、ミルミア達は笑顔になった。


「ただし、さっきも言ったが、神殿の事は話せない様になってる。絶対に喋るなよ。村長も宜しいですね?」

「勿論だ。君達は俺の命の恩人だからな。それぐらい造作もないよ」


 ムナウドは快諾してくれ、ミルミア達も受け入れてくれた。


「じゃあ帰るか。ガモ村に」


 タイガ達は待たせてある竜車の場所に行き、リンナが操縦席に乗って、後の四人は車に乗る。

 そして竜車は、リンナの合図によって走り出した。


「それでは村長。まずはこちらの話を聞いて貰っても宜しいですか?」


 走行中の車の中で、タイガが話を切り出す。ムナウドはコクリと頷く。


「今から一一日前、貴方は放浪している時、偶然神殿を見つけた。そこで貴方は興味本位で、神殿の中に入った」

「一一日……。もうそんなに経っているのか……」


 ムナウドは意外そうに、そう呟く。


「ですが八日前、貴方は帰って来た。しかも謎の箱を持って帰って。何もない様に思えたが、六日前、貴方の態度が急変した。村人達に強制労働を強いる様になった。そして反逆する者を次々と殺していった」

「ま、待て! 俺はそんな事しないぞ!」


 タイガの言葉に、ムナウドは少し怒鳴り気味でタイガに反抗する。タイガは表情を変えずに、話を続けた。


「えぇ。ですが、これが実際起こった真実です。貴方が気絶している間、貴方の姿をした者が村を壊しかけた。今は一〇〇人程度しかいないようです」

「そ、そんな……」


 絶望の顔色を浮かべ頭を抱えるムナウド。余程ショックなのだろう。今まで大切にしてきた村人達が知らない間に半数近くも減っているのだから。


「つ、妻は平気なのか!? 妻のお腹の中には大切な――」

「奥様なら、息子のロートンさんが安全な場所に身を隠せておいたので、安心ですよ。母子ともに問題ありません」

「よ、よかった……」


 妻と子供の無事を知ったムナウドは少し涙を流した。


「それではお聞かせ願いますか? 神殿で一体、何があったのか」


 タイガが話を切り出し、ムナウドはゆっくりと口を開いた。


「……俺は神殿を見つけた時、お宝が眠っているんじゃないかと思って、中に入ったんだ。だけど中は薄暗くて見え辛かった。外に出ようとした俺だが、見えない壁に阻まれて出られなかった。しょうがないから壁を頼りに、階段を下って行った。そしたら石像が沢山並んでいる部屋に出た。そこだけ異様に明るかったんだ。そして部屋の右側に下る階段があって、また下ったんだ。すると教会のような場所に出て、中央奥にある机の上に一つ箱が置いてあったんだ。俺は興味本位で、その箱を開けた。すると箱から何か出てきて、気付いたら彼女達がいたんだ」

「つまり、気絶していた事に気付いてない、と」

「そうなるな」


 タイガは今のムナウドの話を聞いて、一つ気になる事があった。


「なぁ。俺達があの大広間に行った時、階段なんてあったか?」

「ううん。正面の出口しかなかったわよ」


 そう。タイガ達は訪れた時には無かったのだ。それを不審に思い、再びムナウドに話を聞く。


「村長はその石像がある部屋に行った時、正面に出口みたいなものはありませんでしたか?」

「出口? そんなものは無かったぞ」


 それを聞き、タイガ、ミルミア、レーラはそれぞれ顔を合わせる。


 ――っていう事は、村長の時と俺達の時とではルートが違ったって事か? いや、もしかしたらアイツがルートを変えたのか……


 タイガの言うアイツとは、村長の真似をしていた邪神オーバの事だ。オーバが地上に出る前に何かしらの小細工を仕掛けたのではないかと、タイガは推測する。


 ――何より、実際に入らないと分からない。ミルミア達の目を欺くとしたら、夜だな。


 タイガは夜に村を抜け出し、神殿に一人で向かう事を決意した。


「皆さん、着きましたよ」


 リンナが中にいるタイガ達に声を掛ける。タイガはドアを開けると、外にはロートンを中心に村人が入り口で立っていた。


「お帰りなさいませ、皆様。それで、親父は……」

「それなんですが……」


 タイガはそう言うと、村人の半数が苦虫を嚙み潰したような顔をする。だがその顔は次第に晴れる事となる。


「久しぶりだな、みんな」


 車からヒョコっと顔を出して降りてきたムナウド。村人はそれを信じられないような顔をして、そして一斉にムナウドの下に駆け寄り、生存している事に喜んでいた。中には泣いている人もいた。タイガ達はそれを遠くで微笑ましく見ていた。


「良かったわね」

「あぁ。無事、依頼達成だな」


 すると奥からロートンが来て、涙を流しながらタイガ達に頭を下げる。


「本当に……本当にありがとうございます! 親父を見つけ出してくれて……。なんとお礼を申し上げたら良いのやら……」

「いえ。俺達は頼まれたことをやったまでです。良かったです。村長が無事に帰って来れて」

「はい」


 頭を上げたロートンはちらりとムナウドの方を見る。そこには涙を流している妻と抱き合っている姿が映し出されていた。

 その日の夜、ムナウドの無事生還祝いと、ムナウドを救ってくれた礼として、宴が行われた。沢山の食事が並べられ、ミルミア達は美味しそうに頬張る。タイガはその姿を微笑ましく思った。


 ――三人はよく頑張ってくれたからな。ここで羽を伸ばしても罰は当たらないだろう。


「タイガー! 貴方もこっちに来なさいよー!」


 突然ミルミアに声を掛けられ、ふと我に戻るタイガ。


 ――まぁ、俺も今、この時間を楽しみますか。


 タイガはフッと笑い、ミルミア達の下に行く。そしてタイガ達は夜遅くまで、宴を楽しんだ。

 その日の夜――


「すぅ……すぅ……」


 タイガは寝ているミルミア達を起こさない様に、息をひそめてロートンの家を出る。


「さてと……。じゃあ行きますか」

「何処に?」

「何処って神殿――え?」


 一人で外に出たと思われたタイガだが、聞こえる筈のない声についつい答えてしまった。その声の主を見るべく、ゆっくりと振り返ると、いつの間にか寝間着から任務服に着替えていたミルミア、リンナ、レーラがいた。


「タイガぁ? ウチ達に隠れて、何をしようとしてるのかしら?」

「え、いや、そのぉ……」

「私達に隠れて、変な事でもするんですか?」

「いや、そんな……」

「早く答えた方が身の為だと思うぜ?」

「ちょっ、まっ――」


 女性陣に言い寄られるタイガ。タイガも(あと)退(ずさ)りするが、いつの間にか背後には壁が迫っていて、逃げられなくなっていた。

 結局、女性陣に圧倒されて全てを放すことにしたタイガ。それを聞いたミルミア達は大きなため息をついた。


「全く、何でウチ達に何も言わず行こうとするのよ」

「だって、お前ら昼間反対して――」

「反対はしてませんよ? ()()()行こうとした事に反対したんです。神殿に行くこと自体は反対していません」


 リンナの言葉に、鳩が豆鉄砲喰らったかのような顔をするタイガ。


「調べるんだろ? 大広間。なら一人で行くよりあたい達全員で行った方が早く済むだろ?」


 タイガは頭を掻き、『参ったな』と言って三人を見る。


「分かった。四人で行こう。明日には王宮に帰らないといけないからな」

「そうと決まれば、早速行きましょう。竜車の準備は出来ています」

「用意周到なこって……」


 いつの間にか竜車を持ってきたリンナに少し呆れるタイガ。三人は車の中に入り、リンナは竜車を走らせ、再び神殿へと向かった。


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